フリーランスとして独立・開業する人が年々増えています。

一方、独立してもなかなか生計を立てるまでは時間がかかるものです。そんな中で注目されているのが失業保険。

この記事では失業保険や、そのほか利用可能な制度に関して、その条件や手順を説明していきます。

失業保険の受給方法、フリーランスへの転身に際して利用できる制度に関して解説

近年、企業を退職し、フリーランスとして独立・開業する人が増えています。ただし、すぐにフリーランスとして生計を立てられるとは限りません。

そんな時のための国の保障制度が失業保険ですが、制度が複雑という声も。また、正しく手続きをしないと不正受給となってしまうケースもあります。

この記事では失業保険を利用する方法、そして利用可能な制度に関して、フリーランスへの転身を検討している方向けに解説していきます。


失業保険と失業手当の受給資格とは

今勤めている会社を退職して、フリーランスとして独立開業し、軌道にのるまでは貯金と失業保険でしのいでいくという方は多いのではないでしょうか。

実際、普通に働いていれば失業保険には出くわしません。つまり、会社を退職しない限り失業保険とは縁がないのです。

そのため、そもそも失業保険とは何かについての理解は人ぞれぞれまばらになりがちです。最悪の場合、誤った理解のまま退職してしまうということも。

ここでは「失業保険とは何か」を含めてその「受給の資格」について説明していきます。正しく理解した上で、新しい人生の第一歩を踏み出しましょう。


失業保険と失業手当の定義

実は、2019年時点の日本において、失業保険という社会保障自体は存在しません。では失業保険とは一体何なのでしょうか。

正確に記述すれば、失業保険は雇用保険の保障内容の中の生活支援制度です。そして、支援として貰えるのが失業手当(基本手当)です。

その支援は、退職した従業員の次の就職先が決まるまでの一定期間内に限られています。その受給条件については以下で見ていきます。


失業保険の受給条件とは

失業保険には「保険に加入していること」、「退職すること」そして「求職活動をしていること」が前提であり必須条件です。

まず、雇用保険の加入に関して、ある一定期間の加入実態が必要です。そしてこの期間は退職の仕方によって変わってきます。

この退職の仕方とは、具体的にいうと会社都合での退職と自己都合での退職です。また退職の仕方は失業手当の受給フローにも影響を及ぼします。

さらに、受給条件として求職活動をしていることを証明する必要があります。これらに関しては次節で説明していきます。


失業保険の基本的な受給ルール

失業保険は一定期間の雇用保険の加入期間を経過した人が対象になります。そして受給には「退職」と「求職活動」が必要です。

まず「退職」については「会社都合」と「自己都合」とで必要な保険の加入期間、受け取れる金額と期間、そして手続きが変わってきます。

「求職活動」に関してはあくまで自己申告です。ただし、仮に求職活動を行わずに手当を貰った場合は不正受給と判定され、ペナルティーが発生します。

この求職活動の証明と不正受給については後ほど詳しく説明していきますが、虚偽報告は決してしてはいけません


会社都合退職の場合

会社都合の退職とは2パターンあり、1つ目はリストラや倒産したパターン、そして2つ目が契約期間満了で解雇となったパターンです。

この場合、退職日より前の1年間に通算6ヶ月間の雇用保険への加入実績が必須。そして受け取れる金額は加入期間中の1ヶ月分の給与と同額です。

この金額がハローワークへ離職票を提出した1週間後に振り込まれます。そしてその受け取れる期間は、保険の加入期間に応じて90〜240日までの期間内です。


自己都合退職の場合

自身の事由によって退職した場合、保険加入実績が2年間のうち、通算で12ヶ月間必要です。フリーランスになる方はこれに当てはまります。

ただし自己都合退職の場合のフローは若干面倒です。なぜなら、申請から受給までの期間が約4ヶ月、そして指定のフローの遂行が必要です

また、受給金額は保険加入期間中に受け取っていた給与の5〜8割の金額です。ただし金額は日額6,000〜8,000円の範囲内に限られます。

例えば保険加入時の給与の8割の金額を日割りにした場合の金額が9,000円となった場合、上記範囲内の上限額である日額8,000円が支給されます。


求職活動中の証明

失業手当を受給するにあたり、一定期間内に一定回数の就労意欲があること、求職活動をしていることの証明と届出、そしてその認定が必要になります。

細かなフローは後述しますが、どのようなものが求職活動に認定されるのか。それは地域ごとのハローワークに一任され統一されていない現状です。

ただし、共通して認められるケースとしては以下のものがあります。

  • 「求人へ応募した」
  • 「再就職に向けて資格取得のために受験した」
  • 「再就職セミナー等への参加」
  • 「ハローワークへの相談」

ここで認定されなければその分受給までの期間が伸びてしまうので、実績の獲得が重要です。


フリーランスと失業保険|フリーランスが失業保険を受け取ることは可能か

企業から退職してフリーランスとして活動している人にとって、失業保険を適用して、生活が軌道に乗るまで給付を受けることができるのかは重要な関心事です。

では退職後にフリーランスとして働いている状態、もしくは働く準備をしている状態は「失業状態」となるのでしょうか


制度上、受給自体は可能

今一度失業保険の適用条件をおさらいしてみましょう。なお、内容は自己都合での退職を想定しています。

  • ハローワークに離職票を提出し失業状態であることを届け出る
  • 保険加入実績が2年間のうち、通算で12ヶ月間必要
  • 求職活動をしていることの証明と届出を4ヶ月間行う

上記条件を満たしつつフリーランスとして働くのは制度の理念上はNGです。まずフリーランスとして働いている状態は失業状態とはいえません。

ところが実態は若干の余地があります。失業保険としてNGなのは「就労していること」です。

つまり「就労しているとはいえないほどの時間」であれば認可される可能性があります

ここは各自治体のハローワークに問い合わせる必要がありますが、一般的に「就労している」と見なされる条件は雇用保険の加入条件を参照すると良いでしょう。

それによると「1週間あたりの労働時間が20時間以上」「31日以上の雇用が見込まれる」場合には就労していると見なされます

そのため受給要件を満たすためにはここに抵触しないように活動することが必要です。では、自己都合退職後の受給申請のフローを具体的に説明します。


申請〜待機期間

企業を退職後、離職票をハローワークに提出すると失業者と認知されます。その後7日間は待機期間と呼ばれ、この期間は働いてはいけません

ただし、働いたからといって受給の権利が喪失する訳ではなく、その分延長されます。


給付制限中

待機期間の後、3ヶ月間の「給付制限中」という期間です。この期間はまだ失業手当がもらえる訳ではありません

ただし、無給状態となるので、制限内であれば働くこと自体は禁止されていません。制度のせいで生活が立ち行かないのは本末転倒だからです。

制限とは、前述の週20時間以下、かつ31日以上の長期の雇用状態にならない仕事です。つまりフリーランスとしての活動は可能といえます。

また、求職活動を行なっていることを認めてもらうのが必要です。そのためにハローワークへ通算4回「失業認定申告書」を提出します。

まず雇用保険受給説明会に参加しましょう。このことを失業認定報告書に書いて提出し、これが1回目の申告書提出となります。

その後4週間(28日間)ごとに提出し、それぞれ失業認定が必要です。合計で4回の失業認定を経て、失業手当の給付が始まります。


受給中

給付制限期間3ヶ月の間、週20時間以下、かつ長期雇用状態でないようにフリーランスとして活動しつつ、失業認定をクリアすれば給付開始です。

しかし、給付が開始されたのち、前述の「就労している」と見なされる条件にさらに1日4時間以下の制限が加わります

ただし、この制限を超えたとしても、権利を喪失しません。その分給付が遅れるだけで、例えば3日間超過なら、給付が3日遅れるということです。


失業期間中はフリーランスとして働けるのか

前述のとおり、失業期間中にフリーランスとして就労することは可能です。その代わりに、かなり限定的な活動となります。

限定的な活動であるので、受注できる案件も限られてくるでしょう。そんなときに注意してほしいのが不正受給に陥ってしまうことです。


不正受給とは

不正受給に陥る理由としては、大きく2つあります。いずれも失業手当の原則である失業状態・求職活動中から外れるものです。

まず1つ目は求職活動についての虚偽報告です。そして2つ目が基準を超えた就労をしている状況での受給

前者は求職活動に関して、嘘の報告をしている場合です。実際は求職活動をしていないのに、失業認定を受け、手当を受給している状態のことです。

後者は「就労状態」と見なされるような状態であるにも関わらず、失業手当を受給している状態を指します。つまり制限を超えた労働です。

フリーランスとして活躍しようと、一生懸命な人ほど後者には気をつけて欲しいです。


不正受給のペナルティーとは

不正受給と判定された場合、速やかにペナルティーが課せられます。ペナルティー内容は罰則金がほとんどです。

失業手当の不正受給に課せられる罰則金は、不正に受け取った失業手当の3倍の金額です。これを納付しなければなりません。

また、故意に行なったなど内容が悪質だった場合、詐欺罪として刑事告訴されることもあります。就労制限に関しては細心の注意が必要です。


フリーランスとして本格稼働する日取りが決まったら速やかな受給停止を

では、制限内の就労では受注できないような案件が飛び込んできたらどうしたらいいのか。その場合は、ハローワークで受給停止を申請しましょう。

なぜかというと、当然不正受給とならないようにリスクヘッジをするためです。不正受給の罰則金は高額になりやすいので、お忘れなく。


フリーランスが失業保険を受け取るときのポイントのまとめ

  • 待機期間中は働かない
  • 給付制限期間中は週20時間以下、長期雇用ではない働き方
  • 給付中は給付制限期間中の制限にさらに1日4時間以下が追加される。
  • 本格稼働する日取りが決まった場合は受給停止の申請をしましょう。

ここまで見てきたように、この条件さえクリアすればフリーランスでありながら失業保険の適応を受け、失業手当を受給することが可能です。

ただし、かなり労働時間として制限されます。本格的にフリーランスとして長期的に生計を立てていこうとする時に大きな妨げになるでしょう。

つまり、フリーランスとして活躍する時には失業保険は大きな足枷になることもあります。そのためずっと頼ることは現実的ではないです。

もしフリーランスとして独立し、開業することを検討しているのであれば再就職手当を検討しましょう。


再就職手当も検討しましょう

フリーランスとして独立する人が受けることができる雇用保険の支援は失業手当だけではありません。雇用保険の支援には再就職手当もあります。

長期的にフリーランスとして働くことと、失業保険の受給と制限がミスマッチであるならば、開業をして再就職手当を受給する方が得策です。

まず再就職手当とは、文字通り失業期間中に再就職を果たすと受け取れる給付金です。つまり早めの再就職を促すためのシステムです。

そしてこの対象として自営業も含まれています。そのためフリーランスになり個人事業主として活躍する場合は、最適な制度といえます。


再就職手当の受給方法

では、再就職手当の受給方法とはどのようなものなのでしょうか。具体的には以下のことについて解説していきます。

  • 失業保険の受給プロセスと並行して行えるのか
  • 受給金額はいくらになるのか
  • フリーランスとして特別に気にかけることはあるか

しっかり失業手当のフローとの位置付けを理解することが肝要。そうすることで、「貰えるものはきっちりもらう」ことが可能なのです。


受給フロー

受給フローは途中まで失業保険の受給フローと同じです。そのフローにプラスアルファすることで再就職手当が受け取れます。

大切なのはストーリーです。

会社を退職し、失業状態になったが、待機期間後に就職活動をしているうちに開業をこころざすようになった

このストーリーをフローに落とし込んでいくことで、手順のミスも減ってきます。1つずつ手帳に日付とセットで工程を書いてもいいです。

まず、離職票をハローワークへ提出し、雇用保険受給説明会にも参加しましょう。この説明会で再就職手当に関しても説明があります。

また、初回の認定日にもしっかり出席しましょう。ここで失業認定申告書を提出することで失業者であり求職活動をしていると認可されます。

続いて、税務署で開業届を出します。そしてその開業届の控えをハローワークに持参しましょう。

「自営業として開業したので再就職手当の受給を申請したい」と伝えてください。その後ハローワークの審査を経て、再就職手当が振り込まれます。


受給金額はどのくらいか

再就職手当を受給するにあたって、重要なポイントは失業手当の残額の2/3以上を残しておくことです。そうでないと手当は支給されません。

また、受給金額は残額に応じた規定の割合にその合計金額を掛け合わせた金額です。


再就職手当と開業日

再就職手当を受給するにあたって、フリーランスの方が注意すべきものは「開業日」です。

開業日は「開業届を提出した日」になりますが、この開業日が待機期間中では受給のフローから外れて資格を喪失してしまいます

なぜなら、前述したストーリーのなかの「失業状態」にあてはまらなくなるからです。開業届は待機期間後に提出するようにしましょう


失業保険と再就職手当は確定申告の必要があるか

フリーランスになると普段は会社がやっている様々な税務処理を自分でやる必要があります。その代表例が確定申告です。

では、受給した失業手当や再就職手当は確定申告の対象になるのでしょうか。結論としてはどちらも非課税なので、確定申告の対象になりません


まとめ

会社を退職後に独立しフリーランスとして開業を希望している方にとって、失業手当を受給することは可能です。

ただし、本腰を入れてフリーランスとして活躍するならば、失業保険に頼りきるよりは開業届を出して再就職手当を受け取る方が良いでしょう。

再就職手当ならいくら働いても大丈夫なので、それだけいい仕事のチャンスも多くなります。長期的に考えた上で、再就職手当も検討してみて下さい。


そのほか、体が資本であるフリーランスにとって非常に重要な保険として、健康保険があります。

フリーランスが加入できる健康保険やその節約方法については以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひこちらも併せてご参照ください。

フリーランスが加入できる健康保険とは?健康保険の種類と保険料の節約方法について詳しく紹介