フリーランスと雇用保険・失業保険について徹底解説!
働き方が多様化する近年において、フリーランスや個人事業主として働く方がますます増えています。
しかし、フリーランスや個人事業主になると、保険や税金をはじめ、会社員とは扱いや適用されるルールなどが変わるものが多くあります。
そのなかでも、雇用保険・失業保険に対して気になる方が多いのではないでしょうか。
特に、会社員からフリーランスになるにあたって、「退職後に失業保険を受け取ることができるのかどうか」は多くの方にとって大きな関心事でしょう。
そこで本記事では、フリーランスは雇用保険への加入ができるのか、失業保険の受給はできるのかといったことをはじめ、フリーランスと雇用保険・失業保険について徹底的に解説します。
雇用保険とは
まずは、雇用保険とはどういったものなのか、厚生労働省の説明などをもとに簡単にご紹介します。
雇用保険とは、労働者の生活や雇用の安定、就職促進などを目的に、雇用に関するさまざまな支援をする制度のことです。
具体的な支援としては、労働者がなんらかの理由で離職や失業した場合などに給付される失業等給付(基本手当)や、再就職のための援助などが含まれます。
参照:雇用保険制度|厚生労働省
なお、後ほどあらためて詳しくご説明しますが、雇用保険はあくまでも雇用の安定や就職促進などを目的とした制度のため、非雇用者ではなく、また失業者や求職者に当たらないフリーランスは、原則として雇用保険に加入することができません。
雇用保険と失業保険の違いは?
雇用保険は「失業保険」と呼ばれることもありますが、実は両者の意味に違いはありません。
1975年に施行された雇用保険法の以前は失業保険法によって手当が給付されていたため、「失業保険」という名称はその名残と考えられます。
したがって、正確には「雇用保険」になりますが、「失業保険」という名称も現在でも広く使われています。
雇用保険の加入条件
雇用保険は、1名でも従業員がいればすべての事業所が加入する義務があります。
適用される事業にも制限はありません。
フリーランス本人は原則として雇用保険に加入できませんが、フリーランスとして独立後、以下の条件に該当する従業員を1名でも雇用した場合には、その従業員を対象に雇用保険に加入が必要となります。
- 1週間当たり20時間以上働いていること(休憩時間を除く)
- 31日以上雇用される可能性があること
- 学生ではないこと(一部例外あり)
したがって、もし従業員を雇用する場合には、雇用保険の対象となるかを必ず確認するようにしましょう。
なお、雇用保険の支払いは、雇用者と従業員の両者がそれぞれ分担する形で支払います。
雇用保険のメリット
雇用保険に加入するメリットとしては、大きく以下の2点があります。
- 失業等給付(基本手当)がもらえる
- 教育訓練給付金がもらえる
いずれも給付金がもらえるといったメリットですが、それぞれどういった内容で、どの程度の金額を受給できるのでしょうか。
失業等給付(基本手当)
失業等給付では、会社を退職する日までの6カ月間の賃金を一日当たりに換算した金額の50~80%が、再就職するまでの日数分もらえます。
この金額には、ボーナスや各種手当は含まれません。
一日当たりに換算した金額を基本手当日額といい、基本手当日額が低い人ほど給付率が高くなります。
基本手当日額の目安は、月額20万円なら13.5万円程度、30万円なら16.5万円程度となります。
また基本手当日額には、下限額と上限額が定められているので注意しましょう。
令和5年8月1日より、以下のように基本手当日額が変更となっています。
基本手当日額の下限額
全年齢:2,196円
基本手当日額の上限額
29歳以下:6,945円
30~44歳:7,715円
45~59歳:8,490円
60~64歳:7,294円
※年齢は離職時の年齢
教育訓練給付金
教育訓練給付金とは、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的に、労働者の能力開発やキャリア形成を支援するために支給される給付金です。
具体的には、労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されます。
フリーランスは雇用保険に加入できる?
ここまで雇用保険についてご紹介をしてきましたが、上でも述べたように、フリーランスは原則として雇用保険に加入することができません。
雇用保険は「雇用されている方」を保護するための制度であり、自分で事業を行っているフリーランスはその対象とならないためです。
また、フリーランスの方と同居する親族等も原則として雇用保険に加入することができません。
ただし、フリーランスの方と同居する親族が他の企業に雇用されている場合は、勤務先の企業の雇用保険に加入することが可能です。
あるいは、フリーランスである自分から、同居する親族に業務を委託している場合をはじめ、実態としてフリーランスの自身と同居する親族とが雇用関係にあると認められる場合など、一定の条件を満たせば加入できることもあります。
フリーランス本人が雇用保険に加入できるケースはある?
しかしながら、フリーランス本人が雇用保険に加入できるケースもあります。
どんなケースかというと、フリーランス本人の事業とは別に、他の企業に雇用されている場合などは、勤務先の企業の雇用保険に加入することが可能です。
つまり、他の企業に雇用されていて、かつ上でもご紹介した以下の雇用保険の加入条件を満たしていれば、フリーランスでも雇用保険に加入できるということです。
- 1週間当たり20時間以上働いていること(休憩時間を除く)
- 31日以上雇用される可能性があること
- 学生ではないこと(一部例外あり)
ただし、フリーランスとして働きながら、同時に雇用されている企業で週20時間以上働くというのは簡単ではありません。
そのため、フリーランスとして働きながら雇用保険に加入するのは、現実的にはかなり難しいということを認識しておくようにしましょう。
会社を退職後に独立してフリーランスになる場合、失業等給付はもらえる?
会社を退職後にフリーランスとなる場合、こちらも原則として失業等給付を受給することができません。
なぜかというと、失業等給付とは、労働者が失業した場合及び雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、必要な給付を行うとともに、その生活及び雇用の安定を図るための給付であるためです。
会社を退職後にフリーランスとして働く場合は、上の失業等給付の目的に合致しないため、基本的には受給ができないということになります。
失業等給付を受給できるケースもある
しかし、会社員として企業に勤めていて、その後フリーランスになるために退職した場合でも、一定の条件を満たすことで失業等給付を受給できるケースもあります。
具体的な条件は以下のとおりです。
- フリーランスになる前の2年間で12カ月以上被保険者であること
- 離職票を出して求職を申し込み、待機期間が終わってから事業を始めること
- 失業等給付の給付制限を受けてから、1ヵ月以上後に事業を始めること
雇用保険における待機期間について、離職票を出して求職を申し込んだ日から7日間が待機期間となります。
待機中に開業届を出すと失業等給付の受給資格がなくなるため、失業等給付を受給したい場合は、待機期間後に事業を始めるように注意しましょう。
また、会社を自己都合で退職した場合は失業等給付の受給手続日から原則として7日経過した日の翌日から2か月間失業等給付を受給できない期間があり、これを「給付制限」といいます。
失業等給付を受け取るためには、給付制限を受けてから1ヵ月以上後に事業を始める必要があるため、こちらも注意が必要です。
雇用保険の代わりとなるフリーランス向けの制度や補償
このように、フリーランスでは原則として雇用保険に加入をすることができず、また失業等給付も同様に原則受け取ることができません。
一部の条件を満たした場合のみ加入・受取が可能ですが、そのケースは限られます。
しかしながら、フリーランスには雇用保険の代用となるような制度や補償がいくつかありますので、こちらでご紹介します。
まず、フリーランス向けの主な制度としては、小規模企業共済があります。
小規模企業共済は小規模事業主が退職金を受け取ることができることを目的にした制度で、独立行政法人中小企業整備機構が運営しています。
月々の掛け金は1千円から7万円の間で、500円単位で自由に決めることが可能です。
確定申告での所得控除ができ、不意の資金不足には低利で貸し付けも受けられます。
また、銀行を通じて申し込むことも可能です。
そのほか、フリーランスには労災保険もありませんが、その代用として以下のような保証があります。
詳しくは各サイトをご覧頂ければと思いますが、小規模企業共済とあわせて利用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
こちらの記事では、フリーランスと雇用保険・失業保険をテーマに、フリーランスは雇用保険への加入や失業保険の受給ができるのかどうか、またそれらの条件などについて詳しく解説しました。
フリーランスは原則として雇用保険に加入できませんが、フリーランスと並行して他の企業に雇用されて週20時間以上働いている場合など、一定の条件を満たすことで加入が可能となります。
また、同様にフリーランスは失業等給付も原則として受給できませんが、「フリーランスになる前の2年間で12カ月以上被保険者であること」や待機期間・給付制限に関する条件を満たした場合には受給も可能です。
しかしながら基本的にフリーランスとして雇用保険への加入・失業等給付の受給の難易度は高いため、それらの代わりとなるフリーランス向けの制度や補償の活用を検討してみるのがおすすめです。
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