失業給付の条件や受給期間・計算方法を徹底解説!フリーランスも失業給付の対象になる?フリーランスが知っておくべき制度も紹介
助けになる失業給付
会社を退職し、転職活動を行う際に受給が可能となる失業保険。
いくら貯金をしていたとしても、いつ終わるかも分からない転職活動を無収入の状態で継続するのは精神的に参ってしまいます。
職を失えば基本的に収入はなくなりますが、活動中に給付を受けられる失業保険は本当に心強い味方といえるでしょう。
この失業保険による給付は、一般的に「失業給付」や「失業手当」と呼ばれています。
しかし、正しくは「求職者給付」です。
予備知識程度に頭に留めておくといいかもしれません。
給付条件などの知識が浸透していない
とはいえ保険である以上、当然「職を失えば無条件で給付を受けられる」わけではありません。
いくつかの明確な条件や、失業後の状況によって可否が存在しています。
また、この給付の「受給額」も人それぞれで異なります。
今回こちらの記事では、浸透しているとはいえない「失業保険の給付金をもらう条件」や「受給額の計算方法」などについて徹底解説していきます。
フリーランスと失業保険
昨今、フリーランスとして活躍している人が増えています。
IT業界においてはプログラマーやWebエンジニアなど職種問わず、フリーランスのエンジニアを募集する案件も数多く見られます。
「会社を辞めて独立・フリーランスになりたい!」という志を持っている方も多いでしょう。
とはいえフリーランスになるためには会社を辞める必要があり、一時的とはいえ「無職」になります。
そこで気になるのが「失業給付金」。
フリーランスも失業給付の対象になるのかどうかという点は、非常に重要なポイントだといえるでしょう。
こちらの記事では、フリーランスを目指す方にとって気になる点も併せて解説いたします。
失業給付金を受ける3つの条件
まずは条件面に注目しましょう。
受給資格は以下の通りです。
- 雇用保険に加入している
- 保険加入期間が退職前の2年間で12ヶ月以上
- 失業していること
最後の「失業していること」という条件は単純に「職を失っていればいい」というわけではなく、働く能力・意志はあるものの就職できない状態(転職活動中など)でなければなりません。
すぐに就職できない場合なども給付を受けられないため、「働く意志」を行動で示す必要があります。
ただし、リストラなど会社都合で退職を余儀なくされた場合は少し条件が異なります。
リストラなどによる会社都合での退職の場合
リストラや解雇などによって、会社都合で退職した場合「特定受給資格者」というカテゴリーに該当します。
失業給付を受けるの基本的な条件は「雇用保険の加入期間が2年間で12ヶ月以上」とありました。
しかし会社都合での退職の場合は「退職前の1年間に6ヶ月以上加入」していた期間があればOKです。
理由はあれど、会社によって半ば強制的に職を失っているわけですから、より被保険者にとって優しく緩和された条件になっていることが分かるでしょう。
自己都合でも「特定理由離職者」に認定される可能性
仮に自己都合の退職だったとしても、結婚や出産、怪我等々「正当な理由」と認められるケースもあります。
その場合は「特定理由離職者」というカテゴリーに該当し、会社都合による退職の場合と同じく雇用保険に「退職前の1年間に6ヶ月以上加入」していれば失業給付を受けることが可能です。
こちらは上記の理由は一例であり、非常に幅広い理由が「正当な理由」として認められています。
自分で決めつけずにまずはハローワークなどに相談してみましょう。
雇用保険が必須
失業給付金を受給するためには「雇用保険」に必ず加入している必要があります。
加入期間についても退職前の2年間で12ヶ月以上(1ヶ月=11日以上働いた月)という条件を満たしている必要があります。
どちらにせよ失業給付金を受給するためには「雇用保険」に加入している必要があるということです。
給付を受けられないケース
先ほど少しだけ触れた「すぐに就職できないケース」ですが、例として以下も当てはまります。
これらは基本的に失業給付金を受けられないケースとあるので注意が必要です。
- 怪我や病気などが原因ですぐに就職できない
- 妊娠・出産・育児が忙しいため就職ができない
- 結婚などで家事に専念する(しばらく就職しない)
一例ですが、どれも「すぐには働けない」パターンだということが分かるかと思います。
基本的に「働く意志や能力があるのか」ということが大きなポイントだということです。
雇用保険の加入条件は3つ
失業給付を受けるために必須な条件である「雇用保険」への加入。
この保険に加入するには3つの条件が定められています。
- 勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがある
- 契約上の所定労働時間が週20時間以上である
- 学生ではないこと(通信、夜間、定時制を除く)
これらを満たすことで、雇用保険への加入が可能になります。
とはいえ、就職をした方の大半は知らぬ間や気付かずに加入しているケースが多いでしょう。
給与明細等の「雇用保険」という記載の有無などで判断できるかもしれません。
また、学生の場合内定先企業で卒業前から他の従業員同様に業務に携わり働いているケースもあるでしょう。
そのような場合は雇用保険の加入対象者として認められるケースもあります。
会社都合か自己都合かによって受給額や受給期間が違う
先ほど、失業給付金は受給条件が退職の理由によって異なることをお伝えしました。
受給条件同様、実際に受給する「金額」も退職理由によって異なってきます。
今度は受給額についてチェックしていきましょう。
会社都合退職の場合は最大で330日
まず、基本的な受給額である「会社都合退職」の場合を確認します。
ちなみに自己都合退職であっても「特定理由離職者」として認められた場合は会社都合の場合と同じ条件で失業給付を受け取ることができます。
まず失業給付の「給付開始日」ですが、ハローワークへ申請をした後に7日間の待機期間がありますが、これを過ぎれば失業給付の受給が可能です。
給付期間は90日〜330日間、そして最大支給額は約220万円。
最大で約11ヶ月の間給付を受けることができ、安心して転職活動・職探しに取り組める制度です。
また、更に国民健康保険税も最大で2年間軽減となります。
自己都合の場合は半分以下
対して、自己都合退職の場合は「給付制限」が設定されています。
これは、退職してから「3ヶ月間」は給付を受けられないというもの。
3ヶ月後に会社都合の際と同様にハローワークへ申請をし、7日間の待機期間を経て、はじめて給付を受給可能です。
そのため、仮に最短で諸々の手続きを済ませたとしても「3ヶ月と7日間」は失業給付を受けられません。
そして、給付期間も90日〜150日と半分以下の短い期間に設定され、最大支給額は約118万円とこちらも低く定められています。
また、会社都合で退職した場合は国民健康保険税も軽減されましたが、自己都合退職の場合は軽減されないので注意してください。
失業給付支給額の計算方法
失業給付において気になるのは、実際に貰える金額がどれくらいなのかという点。
続いては気になる失業給付の支給額の計算方法を解説します。
少し複雑な計算ではありますが、手順さえ間違わなければ金額を計算することは十分可能です。
支給額を計算するには、以下のステップが必要となります。
- 退職前6ヶ月間の給料総額を調べる
- 1日あたりの賃金日額を求める(1で求めた金額 ÷ 180)
- 年齢と2で計算した賃金日額に基づいて「基本手当日額」を求める
この3ステップで支給額を求めることが可能です。
基本手当日額の求め方
先ほどの3ステップの中で最もややこしいのが3で求める「基本手当日額」の計算となります。
細かく条件が分かれてくるので混乱してしまいがち。
年齢は4つの区分に分かれており、それぞれ上限額が定められています。
- 30歳未満(上限額:6,815円)
- 30〜44歳(上限額:7,570円)
- 45〜59歳(上限額:8,335円)
- 60〜64歳(上限額:7,150円)
それぞれの区分で支給上限額が定められています。
また、賃金日額と年齢によっても微妙に計算方法や基本手当の上限額が異なってくるのも特徴です。
それぞれのパターンにおける計算式を紹介いたします。
給付額が80%の場合の基本手当日額計算式
賃金日額を計算した結果「2,500円~5,010円未満」だった場合、年齢に関わらず給付額が80%となります。
この場合はシンプルに80%を求めればOKなので、仮に賃金日額が3,000円だった場合は「3000 × 0.8 = 2,400」。
つまり、基本手当日額が2,400円であることが求められます。
給付額が80〜50%の場合の基本手当日額計算式
支給額の計算において、ややこしくなってくるのが給付額が賃金日額の80〜50%となるケースです。
年齢区分が1〜3のいずれかで、賃金日額が「5,010円~12,330円以下」の場合が該当します。
少し複雑ですが「0.8×賃金日額-0.3×{(賃金日額-5,010)÷7,320}×賃金日額」に賃金日額を当てはめるだけで支給額を求められます。
賃金日額の部分に自身の賃金日額を当てはめて計算してみてください。
求められた答えが「基本手当日額」となります。
給付額が80〜45%の場合の基本手当日額計算式
年齢区分が4で、賃金日額が「5,010円~11,090円以下」の方は基本手当日額が「80〜45%」となります。
この場合は2つの計算結果を見比べ「低い」方が基本手当日額となります。
- 0.8×賃金日額-0.35×{(賃金日額-5,010)÷6,080}×賃金日額
- (0.05×賃金日額)+4,436
上記2つを両方とも計算したうえで、低い結果が「基本手当日額」として設定されます。
給付額が50%の場合の基本手当日額計算式
そして、基本手当日額が50%となる場合は以下の条件に該当する方となります。
- 30歳未満で賃金日額が「12,330円~13,630円以下」
- 30〜44歳で賃金日額が「12,330円~15,140円以下」
- 45〜59歳で賃金日額が「12,330円~16,670円以下」
この場合は賃金日額の50%が基本手当日額、つまり半額になるということですね。
また、上記の額以上となった場合は先ほど触れた年齢区分ごとの「上限額」となります。
仮に30歳未満で賃金日額が13,700円だった場合は、50%は「6,850」ですが、基本手当日額となるのは上限額の「6,815円」です。
ご注意ください。
給付額が45%の場合の基本手当日額計算式
そして、60〜64歳の方で賃金日額が「11,090円~15,890円以下」の場合は「45%」となります。
他の年齢層の方々とパーセンテージが微妙に異なっているので注意が必要です。
フリーランスと失業給付
さて、ここまで失業給付…つまり失業保険に注目してきました。
この「失業保険」の対象は「失業していて働く意志がある」者のため、会社から独立してフリーランスになろうとしている人が対象に含まれるのかどうか疑問に思われている方も多いかもしれません。
開業届を出したら「失業していない」状態と判断される
まず大事な点として既に「開業届」を出している場合。
この場合は失業給付の対象には含まれません。
既に「失業している」状態ではないと判断できるからです。
開業届をまだ出していなければ…
では「開業届をまだ出していない」状態の場合はどうなるでしょうか。
その場合は当然失業した状態となります。
そのため、就職・転職活動をすれば、失業給付がもらえる可能性もあるでしょう。
フリーランスは原則受給不可
しかし、フリーランスになることを決意(開業届を出す)して準備に専念した時点で「就職する意志はない」と判断されて受給資格を失うケースもあるようです。
つまり、フリーランスは原則として「失業給付を受けられない」ということになるでしょう。
フリーランスが知っておくべき制度
失業給付を基本的には受け取れないフリーランスという立場ですが「再就職手当」であれば受け取ることが可能です。
これは退職後にできるだけ早く再就職を促進するために存在している制度。
フリーランスの方が「失業給付」を受給することはできませんが「再就職手当」であれば受給することができます。
知らずに開業届を出してしまった場合と比較すると大きなアドバンテージとなりますので、ご注意ください。
知識が無ければ損をする
今回は失業給付について、受給額の計算式やフリーランスの方が受給対象と認められるのか否かについて解説してきました。
先ほど触れた通りフリーランスは失業給付の対象ではありませんが「再就職手当」であれば給付を受けられるケースがあります。
こういった知識を持っていなければ、不正に失業給付を受給してしまったり、再就職手当の対象に含まれるのに受給をせずに開業届を提出してしまうでしょう。
「知識」というのは人生を豊かにする上で必要不可欠であることがよく分かります。
フリーランスを目指す方も、そうでない方も「失業給付」や「再就職手当」など貰えるものは逃さないよう、しっかりと頭に入れて人生を楽しんでいきましょう。