会社を辞めてフリーランスデビューする際に必要となってくるのが、退職の手続きです。

フリーランスとして活動していく場合に、退職はきちんと行っておかないと後々困ることにもなります。

退職関連の書類は種類が多く、「離職証明書」「離職票」など様々です。さらに税金や保険などの手続きも自分で行っていかなければなりません。

これらの書類について解説するとともに、退職前に知っておくべきことに関しても言及していきます。


退職手続きで重要な書類は3つある

会社員が退職する際に重要となる書類は3つあり、「離職証明書」・「離職票」・「退職証明書」がそれに該当します。

これらはどれも名称が似ていて紛らわしいかもしれませんが、それぞれ違いや使い道をしっかりと押さえておきましょう。

ここの理解が曖昧なままだと、退職するまでの手続き・退職した後の措置で大きな失敗をしてしまうおそれもあります。

手続きで不備があると担当者にも迷惑がかかってしまうので、前もっての予習が肝心です。


離職証明書とは何か

雇用保険に関する書類である

離職証明書は、「雇用保険被保険者離職証明書」の略称です。

後述する退職証明書と名前がかなり似ていますが、その意味は全く異なるものであることが分かるでしょう。双方を混同しないように注意が必要です。


企業がハローワークに提出するもの

実はこの離職証明書は、退職者本人が必要とすることはさほどありません。というのも、企業がハローワークに提出するための書類だからです。

「離職票」を企業が発行するためには、ハローワークに離職証明書を提出しておかなければなりません。

退職者にとって重要なのは、むしろこの後説明する離職票の方でしょう。


離職票とは何か

失業給付を受けるために必要な書類

離職票とは、退職者が雇用保険の失業給付を受ける際に必要となる書類です。

これを申請することによって、決して少なくない額の給付を受けられるため、必要であればぜひ申請するべきでしょう。

給付日数が残っていたとしても、手続きの遅滞によって失業保険が途中で打ち切られてしまう可能性があるため、遅れないように気をつけて下さい。


離職票の内容

離職票には、退職理由・過去半年の間の給料・出社日などが記入されています。

この情報を元にして、ハローワークが失業給付を与えるかどうかを決定するということです。

会社を退職した場合で給付を希望する人は、迅速にこの離職票をハローワークに提出しなければなりません。


退職証明書とは何か

「退職した」ことを証明する書類

離職証明書・離職票と非常に紛らわしいですが、別の書類です。

この退職証明書は、「会社を退職したという事実を証明するための書類」です。

退職する人が退職証明書の発行を要求した場合、企業は速やかにそれに応じる必要があります。

上述した離職票が公文書であるのに対し、この退職証明書は私文書です。フォーマットも企業によってバラバラで、決まった形は存在していません。


転職先で提出を求められることも

フリーランスとして活動するなら別ですが、別の会社に転職した場合に退職証明書の提出を求められることがあります。

前職の企業から退職証明書を受け取ったら、きちんと保管しておくのが好ましいでしょう。

数年後にどこかの会社に転職する可能性がゼロとも言い切れません。


3つの書類の違いを整理

改めて整理しておきましょう。

「離職証明書」は企業がハローワークに提出しなければならない書類であり、離職票を発行してもらうために必要となります。

「離職票」は、退職者が失業給付を申請するために必要な書類であり、公文書です。

「退職証明書」は退職という事実を証明するための書類であり、私文書です。決まったフォーマットはありません。


必要な書類のことは頭に入れておく

「離職証明書」「離職票」「退職証明書」の3つは名称がとても似ており、紛らわしいといえます。

退職後の給付受け取り手続きや転職活動でこれらの書類を使う機会があるため、書類の管理は大切です。

それぞれの書類がどういった状況で必要になるのか、正確に把握しておきましょう。


離職証明書の書き方・提出について

記入するのは事業主

離職証明書は退職者が失業給付の申請を行えるようにするための書類であり、事業主が作成しなければなりません。

退職者側が作成方法を知る必要はありませんが、手続きで戸惑わないようにするためにも流れは押さえておきましょう。


事業者がハローワークで書類を申請する

離職証明書の原本は、はA3サイズの複写式となっており、Web上でフォーマットをダウンロードすることができません。

そのため、ハローワークを直接訪れて原本を入手・記入することになります。

なお、事業主は「e-Gov」による電子申請で離職証明書を入手することもできます。


離職票の請求がない場合は必要ない

「離職証明書は退職者が離職票を受け取るために必要」と先ほど述べました。

もし退職者の転職先が既に決まっているなら、失業給付の対象になりません。そのため離職証明書は必要ではないといえます。

必要がない場合はその旨を会社に伝えておくようにしましょう。


会社を退職したら健康保険を切り替える

ここからは、会社を退職した後にやっておくべきことについて説明します。


健康保険の手続き

まずは健康保険についてです。健康保険への加入は国民の義務なので、手続きは抜かりなく行っておく必要があります。

転職する場合は転職先の健康保険に入れば良いですが、フリーランスになる場合はそうはいきません。

基本的に方法は2つあり、「任意継続被保険者になる」「市町村の国民健康保険に入る」のどちらかです。

「任意継続被保険者」は前の会社の健康保険にそのまま入るというものですが、適用するには条件が設けられています。

もし任意継続のための条件を満たしていないのであれば、市町村の国民健康保険に加入しましょう。


任意継続だと保険料は2倍になる

前の会社の健康保険に引き続き加入していく場合、保険料に注意が必要です。

会社員時代は保険料が労使折半でしたが、退職後はそれが行われないため実質2倍の額を負担することになってしまいます。

市町村の国民健康保険と比較検討して、良いと思う方を選択するようにして下さい。

国民健康保険の場合、役場で手続きするとそのまますぐ保険証を発行してくれることが多いです。


国民健康保険への切り替えは退職から14日以内

会社の健康保険から国民健康保険へ切り替える場合、その手続きは退職14日以内に行う必要があります。

もし健康保険に未加入の状態が続いてしまうと、病院での診察・治療代は全額自己負担です。

会社の健康保険を脱退した翌日から国民健康保険への加入義務が生じるため、手続きは迅速に済ませるようにして下さい。


年金の切り替えもしておく

厚生年金から国民年金へ

会社へ就職すると自動的に厚生年金へ加入することになるので、細かい手続きは必要ないかもしれません。

しかし逆に退職した場合は、年金切り替えの手続きを行う必要があります。

健康保険と同じく、公的年金への加入も国民の義務です。忘れずに切り替えをしておきましょう。


年金切り替えは退職してから14日以内

国民健康保険の場合と同じく、退職後の国民年金切り替えは14日以内に行う必要があります。

時間的余裕があまりないため、退職したらすぐに役所へ行って手続きを始めるのがベストです。


失業保険の申請

失業給付の受給を希望する場合も、迅速に手続きを行なっておきましょう。

健康保険・国民年金の切り替えも行わないといけないためやることは多いですが、後回しにするよりはすぐにやっておくべきです。


離職理由と失業給付について

会社都合退職と自己都合退職

離職理由は、「会社都合」と「自己都合」の2つに大別されます。失業給付を申請する際に、離職理由がどちらであるかによって詳細が異なってきます。

会社都合退職でわかりやすい例としては、会社の倒産・解雇が挙げられるでしょう。

自己都合退職だと、退職者それぞれに理由があると考えられます。一般的に「一身上の都合で退職」と記入する場合、自己都合退職ということになります。


会社都合は「特定受給資格者」となる

会社都合で退職した場合、失業給付手続きの際に「特定受給資格者」として扱われます。

被保険者だった期間が長いほど・そして年齢が高いほど給付を受けられる日数は多くなっており、手厚い保障を受けられます。


自己都合は「一般の離職者」となる

一方で自己都合退職の場合、失業給付手続きの際には「一般の離職者」として扱われます。

自己都合でも失業給付を受けることはできますが、会社都合の場合と比べて給付日数が大きく減少しているのが特徴です。

会社都合と異なり、自己都合は好きなタイミング・自由に会社を退職したことになるので、待遇で差が出てしまうのは仕方ないといえるでしょう。


離職票はどれくらいの期間で届くのか

失業給付の手続きで欠かせない離職票ですが、退職してすぐに貰えるというわけではありません。

会社とハローワークの間で調整が行われているため、退職してから手元に来るまで1週間以上は掛かると見たほうが良いでしょう。

大抵は2週間以内で届きますが、繁忙期だと手続きが遅れてしまうことも考えられます。

もし2週間待っても離職票が届かない場合は会社及びハローワークに問合せをしましょう。


離職票の再発行方法

離職票はとても重要な書類ですが、アクシデントで紛失してしまうということも考えられます。その場合に備え、離職票の再発行方法を知っておきましょう。


ハローワークで再発行の手続きをする

離職票を紛失した際の再発行の手続きは「前職の会社の住所を管轄しているハローワーク」で行うのがベストです。

離職票の管理を行っているのは前会社の住所を管轄しているハローワークであるため、間違えないようにしましょう。


ハローワークでの再発行は申請書類が必要

離職票の再発行をハローワークで頼む際、「申請書類」と「離職票再交付申請書」が必要です。

再交付申請書はハローワークの窓口で受け取れるほか、Webページでダウンロード・プリントアウトすることもできます。


前職の会社に発行依頼することもできる

ハローワークに行かずとも、前職会社の人事担当に問い合わせることで離職票の再発行を依頼することもできます。

「会社に頼むのが嫌」という場合は無理にそうする必要はありませんが、ハローワークを訪れる手間が省けるのは便利であるといえます。

しかし、会社での離職票再発行は退職後4年間に限られている点に気をつけて下さい。

企業は離職票を退職してから4年間保管するよう義務付けられています。4年を越えた場合は会社での再発行はできません。

ハローワークであればいつでも離職票の再発行が可能です。

前職の会社が倒産していたり、何年も前に在籍していたという場合はハローワークで申請しましょう。


ハローワークに提出した離職票は返却されるのか?

離職票は失業給付以外の手続き(保険・年金など)でも使用することがあるため、返却してもらうと安心です。

基本的には、離職票の原本かコピーが返却されることになっています。

もしハローワークで手続きを行った後で返却されなかったら、その場で返却して欲しい旨を伝えておきましょう。


離職票の代用となる書類について

「健康保険などの手続きで離職票の提出が求められたが、ハローワークから返却されていない」…という場合はどうすればいいのでしょうか。

その場合は退職日が分かる別の書類でも代用できることがあります。例としては、退職証明書・雇用保険受給資格証などです。

もちろん離職票が手元にあるのが好ましいのですが、代用物としてこれらの書類が使えるということも知っておくと便利です。


離職証明書・離職票については正確な理解を

退職関連の書類はとても大切です。書類をきちんと用意できなかったり手続きが大きく遅れてしまうと、給付が受け取れなくなる恐れもあります。

実際に退職する前に、「退職にあたっての手続きは何をすればいいのか」を正確に把握しておくべきです。

フリーランスになると、税金や保険関連の手続きを全て自分で済ませていかなければなりません。

会社に在籍していれば企業がやってくれていたので不慣れなこともあるとは思いますが、少しずつトライしていきましょう。