フリーランス・個人事業主として仕事をする上で、やらなければならないことの一つが「銀行口座選び」です。

事業を始めたばかりのときは個人の口座のみで管理を行っていたとしても、クライアントとの取引が増えてきたら銀行口座の見直しを検討しましょう。

銀行口座を事業用と個人用に分けることでメリットも多くなります。

今回は、フリーランス(個人事業主)の銀行口座の選び方や口座を使い分ける方法などについてご紹介します。

はじめに

フリーランスを含む個人事業主は、会社員と違って日常のお金の管理や経理業務も自分でこなさなければなりません。

そのため、なるべく分かりやすく手間をかけずに済む方法を選んでいく必要があります。

現代はネット銀行を始め、便利な機能やサービスがとても充実しています。

自分に合った方法を選んでメリットを上手く利用するようにしましょう。


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事業用とプライベート用で銀行口座を分ける理由

事業用とプライベート用に銀行口座を分けることによって、公私の混同を防ぐことができます。

あくまでも、プライベート用の銀行口座は自分が生活していくためのお金を管理する口座であり、一方で事業用の銀行口座は仕事のためのお金を管理する口座であるため、それぞれの口座の目的が異なっています。

その他にも、以下のようなメリットがあります。


会計管理がしやすくなる

個人事業主として開業届を出して確定申告で青色申告をする場合には、「複式簿記」が必要になります。

複式簿記では、事業に関する取引を明確に記して仕訳することが必要です。

そのため、事業用の銀行口座を作っておくことで取引の際のお金が分かりやすくなるメリットがあります。

特に個人事業主として控除額が大きい青色申告をするようであれば、プライベート用の口座と分けて事業用銀行口座を開設することをおすすめします。


税務調査への対応がスムーズになる

フリーランス・個人事業主として事業を行っている場合は、自分で会計や税務を管理する必要があるため、税務調査を受ける可能性が高くなります。

もし税務調査の対象となったときに、私用の入出金が含まれていると、事業用の入出金が本当に事業用であることの証拠の提示が必要になってきます。

こうした余計な手間がかからないようにするためにも、きっちりとプライベート用と事業用の銀行口座を分けておくことでスムーズに対応することができます。


財務状況の把握が容易になる

事業用の銀行口座とプライベート用の銀行口座を分けるメリットの一つとして、事業の財務状況の把握が容易になるという点も挙げられます。

銀行口座を事業用とプライベート用とで別々に分けることで、事業に関する入出金などのお金の流れが明確になり、事業収支を把握しやすくなります。

その結果として、事業の資金繰りの調整などが行いやすくなり、資金不足に陥るリスクを軽減することにもつながります。

一方で事業用の口座とプライベート用の口座を一緒にしてしまうと、事業に関する入出金が見えにくくなり、都度どちらの入出金かの区別が必要となります。

結果として、正しい財務状況の把握がしにくくなり、財務上のリスクを抱えたまま事業を運営する形となってしまいます。

事業が立ち上がったばかりで、事業に関する入出金が多くない時期は口座を分ける必要性は低いかもしれませんが、中長期的に一定規模での事業運営を行う場合は、早めに事業用とプライベート用の銀行口座を分けることを検討した方が良いでしょう。


確定申告が簡単になる

フリーランスにとって、毎年の確定申告はとても大変で負担の大きいものです。

しかし、事業用とプライベート用で銀行口座を分けて、普段から事業用の銀行口座の管理をしておくことでスムーズに申告することができます。

さらに、銀行口座と連携できるクラウド上の会計システムを導入していれば、確定申告の際にかかる会計業務を大幅に削減することができます。


個人事業主として独立するなら屋号名をつける

屋号とは事業の名前のことで、法人であれば会社名にあたります。

屋号を付けることは義務ではないものの、様々なメリットがあります。

通常は開業届を税務署に提出する際に屋号を付けますが、規模が小さく個人名で事業を行っている場合は屋号を付ける必要がない場合もあります。

しかし、個人事業主として独立してしっかりと事業を行っていくのであれば基本的には屋号名を付けた方がベターでしょう。


屋号名で口座開設するメリット

口座に屋号名をつけることで、個人名で事業用の口座を作るよりもメリットがあります。

対外的な信頼度の向上や、プライベートと口座をしっかり分けることでお金の管理がしやすくなるなど、フリーランス・個人事業主が課題に感じやすいことの解決を期待できます。

屋号名をつけた口座開設の主なメリットは、以下のようになります。


本名を出すことなく仕事ができる

屋号名があることで、仕事での取引の際に自分の本名を出す必要がなくなります。

個人名は個人情報にあたるため、本名を提示することに抵抗がある場合にも屋号名を取得することがメリットになります。


信頼度が高くなる

取引先などに振込を依頼する際に、個人名のみよりも屋号名のある口座で合った方が、一般的に社会的に信用されやすくなります。

また、屋号名があることで相手にしっかりと事業に取り組んでいる印象を与えます。


口座を事業用とプライベート用に分けることができる

屋号名があると「屋号名+氏名」という形で屋号名が入った口座を作ることができ、事業用と個人のプライベート用に口座を分けて管理しやすくなります。

なお屋号名のみでの口座が作れるのは「ゆうちょ銀行」だけで、口座が「普通」ではなく「当座」扱いとなり、通常の口座とは違った形となるため注意が必要です。


屋号名で口座開設する方法

屋号名を取得し、メリットを理解した上で口座開設することを決めた場合には口座開設のために以下の手続きが必要です。


口座開設するための条件

銀行によってはネット上で簡単に口座開設ができますが、屋号名のある口座を開設する場合は、多くが「窓口での手続き」となります。

またどの銀行でも開設できる訳ではなく、銀行によっては自宅や事業所の近くでないと開設できないこともあるため注意が必要です。


口座開設の手順

口座を開設するために必要なものについては、銀行によって異なる場合がありますので事前にホームページなどで確認しておくようにしましょう。

通常、口座開設に必要なものは以下の通りとなります。

  • 本人確認書類
  • 印鑑
  • 屋号を確認できるもの(納税証明書や確定申告控えなど)
  • 開業届出書(原本またはコピー)

開設する銀行によっては、「法人」もしくは「個人」でしか口座開設できない場合があります。

「屋号名の確認書類の内容」や「開業届出書が原本なのかコピーでも良いのか」などについても、事前に確認して準備するようにしましょう。


銀行の種類

銀行には種類があり、大きく分けて3種類あります。

それぞれの銀行で特徴が違っているので、メリットとデメリットについて自分が必要としていることを考えて選ぶようにしましょう。


メガバンク

みずほ銀行や三井住友銀行など知名度も高く、個人で口座を利用している人も多いのがメガバンクです。

その知名度から、相手に信頼を与えることができるため取引にも安心感を与えることができます。

また利用者も多く、全国どこにでもATMや支店があるためとても利用しやすいこともメリットとなります。


信用金庫

信用金庫は、主に個人事業主や中小企業との取引を中心としている銀行です。

そのため、フリーランスで事業を行っている場合も口座開設がしやすくなります。

しかし、口座開設には信用金庫の近くに住んでいる、もしくは事業を行っている必要があります。

将来的に融資を受けることを考えている場合には、取引を続けることによって信頼度が高まり融資を受けやすくなります。


ネット銀行

近年、利便性や手数料の安さからネット銀行の利用者も増加しており種類も大幅に増えました。

また、口座開設もネット上ですぐにできて必要な書類も少なくて済むため手間がかかりません。

しかし、メガバンクや信用金庫と比べると社会的な信用性には欠けるため、取引相手によってはネットバンクでの取引を不可としている場合もあります。


メガバンクのデメリット

大手のメガバンクでは、そのほとんどで屋号名のある口座を開設することができます。

その信頼度の高さやクライアントとの取引の面でメリットがある一方で、メガバンクでの口座開設を選ぶ場合にデメリットがあることも理解しておかなければなりません。

メガバンクでの口座開設は審査が厳しく、何度も審査に落ちることもあります。

特に法人の場合は厳しい審査が行われる傾向にありますが、個人事業主やフリーランスなどで事業を始めたばかりの場合は事業に対する信用性が不十分と見なされ、審査に通らない場合があることも考えておく必要があります。

その際は、メガバンクでの開設を諦めて信用金庫もしくはネット銀行での開設を検討するようにしましょう。


フリーランスの銀行口座にネット銀行をおすすめする理由

フリーランスの銀行口座としてネット銀行を利用することにはさまざまな利点がありますが、最大のメリットは以下の2点となります。

ネット銀行にも複数の種類がありますが、ほとんどの銀行に共通しているメリットです。


振込手数料が他の銀行と比べて安い

ネット銀行は振込やATMの利用手数料が無料となる銀行も多く、手数料の節約となる点がメリットといえます。

利用頻度や預け入れ金額などに応じて利用手数料が無料になる回数などは変わってきますが、通常の利用でも他の銀行と比べると手数料が安い傾向にあります。

手数料無料の条件としては、「指定のATM利用で手数料無料」や「同じネット銀行同士の場合手数料無料」などを指定している場合が多く見られます。

また預け入れ金額によって「月あたり何回か取引手数料無料」といった特典なども用意されていることがネット銀行を利用するメリットとして挙げられます。


ネット管理できる

ネット銀行には紙媒体の通帳がなく、全てネット上での取引となるため、取引の状況から振込まで全てをネットで管理できるようになります。

そのため、どこにいても取引状況が参照でき、また振込もすぐにできるので、用事があるたびに銀行に行って手続きをする手間がありません。

時間がなくて銀行に行けない時や、外出先で取引状況を確認したい時などその都度対応できるので、場所を選ばず仕事を行うフリーランスにとって特に利便性が高くなります。

ネット銀行を選ばない理由が特になければ、まずはネット銀行で銀行口座を開設しておくことをおすすめします。


フリーランスにおすすめの銀行口座

銀行口座を開設することに決めても種類が豊富で、どの銀行口座を選べばよいのか分かりづらいものです。

そこで、ネット銀行を含めて利便性などを比較し、フリーランスにおすすめの銀行口座をまとめてご紹介します。


ゆうちょ銀行

フリーランスや個人事業主でも開設しやすい唯一のメガバンクであるゆうちょ銀行の口座は、一度は検討してみる価値があります。

ゆうちょ銀行の特徴は以下の通りです。

  • 屋号名のみで口座が作れる
  • 郵便局ATMで入出金手数料無料
  • ゆうちょダイレクトの利用で月5回まで振込手数料無料
  • ATMで硬貨が利用できる

メガバンクでの口座開設が審査で難しい場合でも、ゆうちょ銀行であれば信用度も高いため「事業用のメインバンク」におすすめです。

また、ネット銀行のATMでは紙幣のみの取り扱いとなっているため千円単位となりますが、ゆうちょ銀行は硬貨の入金ができるのも便利な点です。

なお、ゆうちょ銀行では屋号のみで口座が作ることが可能ですが「普通口座」ではなく「振替口座」での取り扱いとなります。

振替口座では通帳が発行されず、定期的に送付されてくる明細書で入出金の確認を行うようになるため注意が必要です。

送付される明細書ではすぐに確認できない点がデメリットですが、ゆうちょダイレクトを利用するとネット上ですぐに入出金の確認ができます。


PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)

PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)は、ネット銀行の中でも特に法人・個人事業主向けのサービスが充実しています。

PayPay銀行の特徴は以下の通りです。

  • 屋号名付きの口座が作れる
  • 無料でデビットカードが発行される
  • 税金や公共料金支払いにペイジーが利用できる
  • 海外送金が手軽に行える
  • 起業したてでも借入可能な個人事業主向けビジネスローンを提供
  • 30,000円以上の提携ATM入出金手数料が無料

PayPay銀行は、ジャパンネット銀行時代からネット銀行の中で特に知名度が高く、ほとんどのコンビニATMで取引の対応をしています。

そのため、入出金に困ることはない点で利便性が高いネット銀行です。

また、万が一の不正利用による損失があった場合の対応もあり、500万円までは補償してもらうことができます。

その他のポイントとして、海外送金のPayForexがPayPay銀行口座から利用でき、海外送金を手軽に行えることから海外の事業者との取引にもおすすめです。

さらに、起業したてでも借入可能な、最大1,000万円の個人事業主向けのビジネスローンも提供しています。

新たにフリーランス・個人事業主として独立・起業される方には特におすすめのネット銀行の一つです。


楽天銀行

クレジットカードユーザーが大幅に増えている楽天が運営する楽天銀行も、様々なサービスと連携することができます。

楽天銀行の特徴は以下の通りです。

  • 屋号名付きの口座が作れる
  • 楽天銀行宛の振込手数料が何度でも無料
  • 月最大で7回までATM取引の手数料が無料
  • 月最大で3回まで他行宛の振込手数料が無料
  • 利用することで楽天スーパーポイントが貯まる

楽天銀行も、知名度とともにとても人気のあるネット銀行です。

各種手数料を無料にするチャンスが多く、利用するほどお得になります。

ベーシックからスーパーVIPまでのランクが月の取引回数と貯蓄額で毎月判定され、ランクによって手数料が無料となる回数が変わってきます。

また、楽天スーパーポイントが利用するごとに貯まり、楽天市場などのお買い物に利用することが出来ることも楽天銀行のお得な点です。


GMOあおぞらネット銀行

GMOあおぞらネット銀行は、フリーランスの方にとって、個人事業主口座として便利なサービスを提供しているネット銀行です。

GMOあおぞらネット銀行の個人事業主口座の特徴は以下の通りです。

  • 来店不要で口座開設が可能
  • 「屋号+個人名」「個人名+屋号」で口座を開設可能
  • 個人事業主口座なら振り込み手数料が格安
  • 個人事業主口座では2つのバーチャル口座を利用可能
  • ネットバンキングが24時間365日利用可能
  • 国内・海外の加盟店で使えるデビットカードを口座開設時に無料で発行
  • 家計簿アプリ、会計ソフトなど、API連携サービスも提供

GMOあおぞらネット銀行は来店不要で口座開設が可能なので、店舗に行く時間がないフリーランスや個人事業主の方でも手軽に口座を開設できます。

さらに、屋号名付きの口座を開設可能なので、口座に屋号を含めたいフリーランス・個人事業主の方にはおすすめです。

また、個人事業主口座での格安な振込手数料(GMOあおぞらネット銀行宛ての場合は無料、他行宛ては一律145円)や、国内外で使用できるデビットカードを口座開設時に無料で取得できるといったメリットもあります。

特にバーチャル口座は非常に便利で、口座ごとに事業用やプライベート用など、目的に合わせて一つの名義内の口座で分けて管理できる「つかいわけ口座」と、注文や取引先ごとに振込専用の口座を割り当てることが可能な「振込入金口座」の2つのバーチャル口座を利用可能です。

家計簿アプリや会計ソフトなどとのAPI連携サービスも提供されているため、弥生株式会社やfreee株式会社、株式会社マネーフォワードなどの会計ソフトとも連携できるのも大きなポイントです。


住信SBIネット銀行

住信SBIネット銀行も、フリーランス・個人事業主の方にとって利便性の高い、法人向けのサービスを提供しているネット銀行です。

住信SBIネット銀行の法人口座の特徴は以下の通りです。

  • 来店不要で口座開設が可能
  • 格安な振り込み手数料
  • 24時間365日利用可能
  • 助成金・補助金支援サービスが利用可能
  • 決算書不要のオンライン融資など、個人事業主に心強いサービスを提供
  • 電子決済等代行業者とのAPI連携にも対応

住信SBIネット銀行も、来店不要で口座開設が可能です。忙しいフリーランスや個人事業主の方でも手軽に口座を開設できるのは大きな利点の一つでしょう。

法人口座では振込手数料が格安で、住信SBIネット銀行宛ての場合は無料、他行宛ては一律145円(税込)で振込が可能です。

また、株式会社ライトアップとの提携を通じた法人向けの助成金・補助金の活用支援や、決算書不要のオンライン融資など、設立直後の個人事業主に心強いサービスを提供しています。
融資サービスdaytaでは、借り入れ条件を満たせば書類や面談不要で融資を受けることができ、最大3000万円の融資を最短当日中に借り入れ可能です。

特にバーチャル口座は非常に便利で、口座ごとに事業用やプライベート用など、目的に合わせて一つの名義内の口座で分けて管理できる「つかいわけ口座」と、注文や取引先ごとに振込専用の口座を割り当てることが可能な「振込入金口座」の2つのバーチャル口座を利用可能です。

株式会社マネーフォワードなどの電子決済等代行業者とのAPI連携にも対応しています。


まとめ

こちらの記事では、フリーランス向けの銀行口座について解説しました。

銀行口座を個人用と業務用に分けることで、両者が混在せずに管理できるためその利点も大きいものです。

ご紹介した銀行以外にも種類もサービスも様々ありますので、比較検討してみることが大事になります。

フリーランスという仕事を考慮した上で、自分のライフスタイルに合わせてなるべく利便性が高い銀行を選びましょう。