システムアーキテクト試験の概要と合格率・難易度を徹底解説!資格を取得するメリットと将来性は?学習期間と学習方法も紹介
情報システム開発における「上流工程」
情報システム開発は、幾つもの「工程」を経てリリース(完成)します。
要件定義や外部設計・内部設計、プログラミングやテストを行ってようやく完成させられるということです。
その工程は主に情報システムの設計面などを担当する「上流工程」と、実際にプログラミングなどを行い形にしていく「下流工程」に分けられます。
業種でいえば、システムエンジニアなどが「上流工程」を担当し、プログラマーなどが「下流工程」を担当しているといえるでしょう。
システムエンジニアが取得を目指したい国家資格の1つ「システムアーキテクト試験」
今回注目するのは、上流工程を担当するシステムエンジニアなどが取得を目指したいIT系国家資格「システムアーキテクト試験」です。
IT系国家資格の中でもトップレベルのレベル4に区分され「高度情報処理技術者試験」にカテゴライズされています。
そんなシステムアーキテクト試験の基本的な情報や、試験の流れといった概要をはじめとし、難易度や合格率にまで注目。
勉強のときに注意しておきたいポイントについても解説いたします。
また、システムアーキテクト試験を取得することによって得られるメリットや将来性についてもチェックしていきましょう。
システムアーキテクト試験の概要
そもそも、システムアーキテクト試験はシステム開発の上流工程を担当するエンジニアが対象とされている試験です。
特に要件定義・外部設計・システムテスト辺りについての知識や理解が問われます。
試験の形式
それでは実際に、システムアーキテクト試験の概要を確認します。
まず頭に入れておきたいのが「午前・午後」でそれぞれ2つずつ試験が行われるということです。
午前I・午前IIで四択の選択問題が、午後Iは記述式、午後IIでは論述式…つまり論文課題が出題されます。
組み込みシステムついても出題される
基本的には情報システムの問題が出題されますが、午後Iは4問中1問、午後IIは3問中1問が「組み込みシステム」に関する問題が出題される傾向にあるようです。
午後Iは2問、午後IIは1問を選択して解答(記述・論述)をするという選択式問題。
そのため、仮に傾向通り出題されれば組み込みシステムが苦手という方はそれらを避け、解かずに試験に臨むことも可能です。
逆に組み込みシステムが得意という方はそこで点数を稼げるかもしれません。
午前I・午前II試験について
また、午前I試験は全ての高度情報処理技術者試験で共通の問題となっており、システムアーキテクト独自の問題が出題されるのは午前IIとなります。
午前試験はそれほど難易度は高くないといわれているので勉強さえしていれば不安に思う必要はないでしょう。
また午前Iは免除制度もあるため、他の高度情報資格所持者が「免除があるから」との理由で受ける場合も考えられるかもしれません。
システムアーキテクト試験の難易度は?
受験をしようか悩んでいる方にとって迷いどころになってくるのが「難易度」でしょう。
どの資格試験や検定試験であろうと、やはりその試験の難易度というのは必要となる勉強量・時間とも関わってくる部分なので、気になるのは当然です。
実はそれほど難易度が高くない
実は、システムアーキテクト試験の難易度はそこまで高くないといわれています。
というのも、システムアーキテクト試験独自の問題が出題される午前II、午後I試験の内容は応用情報技術者試験の内容とレベル的に大差がないとされているからです。
そのため応用情報技術者試験を取得済み、あるいは内容が十分に理解できているという方であれば、午後I試験までは十分に合格点に達せる可能性があります。
午後II試験・論文という壁
ただし、そこで立ちはだかってくるのが「午後II試験」です。
論文を書かなければならず、その内容もあくまで実務経験を基にしたものでなければなりません。
単純な知識量や問題解答能力だけでなく、国語力・文章力も問われてきます。
やはり比較的難易度が低いとはいえ簡単に合格できるような試験ではないことが分かるでしょう。
また、午後I試験も記述式の問題となっているため国語力・文章力は合格に必要不可欠な要素だといえます。
システムアーキテクト試験の合格率は13%前後!
システムアーキテクト試験の難易度はそれほど高くないとお伝えしました。
しかし、合格率というデータを見るとやはり「簡単な試験ではない」ということが分かります。
システムアーキテクト試験の合格率は13%前後。
IT系国家資格の中でも低い方だといえる数字です。
最難関の一角といわれるITストラテジストやプロジェクトマネージャの合格率は14〜15%程度となっています。
そのため、合格率というデータだけで見るとシステムアーキテクト試験は最難関試験以下の数字を叩き出している国家試験だということになるでしょう。
とはいえ、それら最難関試験よりも間口が広く「論文が出題される高度情報処理技術者試験の中で最初に受ける試験」ともいわれているのがシステムアーキテクト試験です。
そのため比較的敷居が低いともいえ、チャレンジしやすい資格ゆえに合格率が低いのかもしれないという推測もできます。
決して合格率が低いからといって恐れるようなことはせず立ち向かっていきましょう。
午後I・午後IIで出題される記述・論述問題への対策法
実際に試験を受験しようと思い立ってもどうしても気になってしまうのは午後試験です。
選択問題ではなく記述・論述課題が出題されるため、しっかりと知識を付けて臨まなければ白紙のままという最悪のケースも想定されるでしょう。
続いては午後I・午後II試験それぞれへの対策法を簡単に解説します。
午後I試験の記述問題は図表を見る
システムアーキテクト試験の午後I試験が持つ特徴ともいえるのが、図表の多さ。
もし図表がある問題を選択した際には、まずは問題文などの前に「図表」に目を通してみましょう。
そうすれば、全体像などを把握できる場合もあるかもしれません。
図表が書かれているということは、大抵はその図表に「意味がある」ということになります。
問題文に目を通すのも重要ですが、先に図表をチェックしてみるのも選択肢の1つです。
午前I試験の勉強は問題と解説を読むのも大切
午前I試験の特徴として挙げられるのが「問題文の長さ」です。
解く際のみならず、復習する際にもどうしても読み飛ばしがちですが、勉強する際にはよく読みましょう。
問題文と解説両方をじっくりと読むことでも、間違いなく試験対策になります。
電車内など「問題をじっくり解ける環境ではないが読むことならできる」状況があるかもしれません。
そういった際に午後I試験の対策・勉強を行う場合は、ぜひ問題文と解説をじっくりと読んでみてください。
午後II試験の論文のために行うべきこと
最大の難関といえるのは、やはり午後II試験の論述形式の問題です。
いわゆる論文を書かなければならず、文字数でいえばおよそ2,400〜3,000文字という文量になります。
これは400字詰めの原稿用紙でいえば6枚〜7枚半であり、結構な文字数だということがイメージできるのではないでしょうか。
しかも2時間(120分)の試験時間で論文を完成させるという明確なタイムリミットも設定されているため、ゆっくり書くわけにもいかず焦りが生まれてきます。
ある意味精神的にも戦わなければいけないのが午後II試験だということです。
論文のネタを文章に落とし込むよう練習する
とはいえ、そこまで恐れる必要はありません。
実務経験がある方の場合はお持ちの経験をアウトプットして、文章に落とし込む練習をしておきましょう。
システム開発プロジェクトに携わった経歴を書くなどして練習できます。
実務経験は論文のネタとしても使えるため、経験をしていない他の受験者がネタを探す必要があるのに対して明確なメリットになり得るでしょう。
逆に実務経験がない方の場合は論文のネタを探しておく必要があります。
普段からインターネットで探してみたり、過去問を参考にしてみるなど様々な方法で論文ネタをサーチしておきましょう。
そういったもので得た知識を元に「文章に上手く落とし込む」ような練習もできるかもしれません。
また、論文を書く際には「なぜその対応が必要なのか」を明確にするために「ユーザー側」についてもしっかり説明することを意識しましょう。
おすすめの学習法と学習期間の目安
午後試験について対策方法をお伝えしてきましたが、午前試験はどうすれば良いのでしょうか。
午前試験は過去問を解いて対策する
午前試験の学習法は非常にシンプルです。
ひたすらに過去問を解きましょう。
高度情報処理技術者試験の午前試験は過去問が流用され、全く同じ問題が出題されることが少なくありません。
そのため、過去問を何度も繰り返し解いていれば問題を見ただけで正答が分かるようになります。
もちろん新しい問題も出題されますが、過去問を自力で解けるのであれば新しい問題にも十分対処できるでしょう。
午前試験は「とにかく過去問を解く」という学習方法がおすすめです。
システムアーキテクト試験の学習期間の目安
また、システムアーキテクト試験に対する学習期間の目安ですが、これは人それぞれです。
実務経験が豊富で特別力を入れて勉強が必要ないという方もいらっしゃるでしょう。
逆に、一切実務経験がなくても受験する方もいらっしゃるかもしれません。
そのため、明確な学習期間の目安というものは存在しないことになります。
勉強にかけた時間が数十時間で合格できる方もいれば、100時間以上かかる方も少なくありません。
とはいえ、様々な合格経験談などを見てみると「短い人は50時間程度」で、そうでない方は「100〜200時間程度」のようです。
まずは過去問を1度解いてみるなどして、自分にどれくらい知識量が足りないかを分析してみてください。
そうすることで、具体的に自分に必要となってくる学習期間・勉強時間を明確に設定できるでしょう。
システムアーキテクト試験を取得するメリットは上流工程の知識を証明できること
さて、ここまでシステムアーキテクト試験の概要や学習方法などを解説してきました。
ここからは「取得することでどういうメリットがあるのか」という観点からシステムアーキテクト試験に注目していきます。
上流工程に関する知識の証明になる
システムアーキテクト試験は既に記事中でお伝えした通り、上流工程に関する知識が問われる試験です。
特に要件定義や外部設計といった部分が問われます。
つまり、システムアーキテクト試験を取得すれば上流工程に関する知識をはっきりと証明できるということになります。
システムエンジニアなど上流工程に携わるエンジニアとして確かな証明となるでしょう。
エンジニアとして自分の価値を高くできる
転職活動やフリーランス案件探しの際に、自分の持つ知識やスキルを「システムアーキテクト試験」という国家資格が証明してくれます。
エンジニアとしての価値を高めることに繋げられるでしょう。
システムアーキテクト試験によって得られる自分の将来性は?
エンジニアとしての価値を高められれば、当然転職・フリーランスの仕事を探しやすく、獲得しやすくなります。
上流工程についてしっかりとした知識を有していることの証明ができ、業界内での評価も高くなるでしょう。
後のキャリアアップに繋がる可能性も考えられます。
常に人材不足といわれるIT業界。
その中で価値の高いエンジニアになれる可能性のあるシステムアーキテクト試験を取得できれば、自分の将来を明るくすることにも繋がるかもしれません。
資格複数取得を目指していく
今回の記事では「システムアーキテクト試験」に注目して、様々な観点から解説してきました。
システムアーキテクト試験は、IT業界・システム開発における上流工程を担当するシステムエンジニアなどが取得を目指したい資格だということが分かります。
国家資格で難易度もそれなりに高いシステムアーキテクト試験のような資格を取得すると、それだけで満足してしまう方が少なくありません。
しかし、仮にシステムアーキテクト試験に合格しても満足しないようにしましょう。
むしろ更にモチベーションを高め、他の資格取得を目指すようにするべきです。
他の高度情報処理技術者試験にカテゴライズされるIT系国家資格はもちろん、ベンダー資格などでより具体的に自分のスキルを証明できるかもしれません。
そうすれば、更に自分のエンジニアとしての価値を高められ、キャリアアップを目指していけます。
ぜひ高いモチベーションを持ち、エンジニアとして魅力のある人材になれるよう努力を続けていってください。