住所などと表現されるIPアドレス

インターネットに接続されている機器に割り当てられる「IPアドレス」。

グローバルIPアドレスやプライベートIPアドレスなどありますが、認識としては「機器を判別するための番号」という捉え方で問題ないでしょう。

よく通信機器の「住所や電話番号のようなもの」と表現されることがあります。

通信相手を間違わないために活用されていることからも、その表現は適切といえるでしょう。

IPアドレスがあるから、適切な相手や端末とやり取りができ、インターネットを利用できているといえます。


IPアドレスが「枯渇する」という問題

しかし、このIPアドレス。

実は、以前から「近い将来に足りなくなる」といわれていました。


IPv4アドレスの枯渇

従来利用されていたIPアドレスは「IPv4アドレス」でした。

このIPv4アドレスは、32ビットで構成されるため一意のアドレスがおよそ42億個作成できます。

しかし、近年のインターネットの爆発的な普及などによって、あっという間にIPv4アドレスの在庫が減少し始めてしまいました。

そして、2019年11月25日には、欧州地域で割り当てられる新規割り当て用のIPv4アドレスを使い切ったと発表されています。

まさに、IPv4アドレスが「枯渇」しており、近い将来一意のアドレスを完全に「使い切ってしまう」ことは想像に難くないでしょう。


枯渇問題を解決すべく登場したIPv6アドレス

さて、既にIPv4アドレスの枯渇問題は無視できないレベルであることが分かりました。

IPアドレス枯渇問題を解決するために開発されたといっても過言ではないものが、今回の記事で注目する「IPv6アドレス」です。

IPv4アドレスが32ビット幅であるのに対し、IPv6アドレスは128ビット幅で構成されています。

そのため、IPv4アドレスで使用できる一意のアドレスが約42億個だったのに対し、IPv6アドレスはなんと約340澗個使用可能。

その差は歴然です。

IPv4アドレスは世界の人口(約70億人)に対して、全員に1個ずつすら割り当てられません。

一方、IPv6アドレスは仮に1兆個割り当ててもまだまだ余裕があります。

まさに、IPアドレス(IPv4)枯渇問題を解決すべく登場した救世主といえるでしょう。


IPv6アドレスに注目

さて、今回の記事ではそんなIPv6アドレスについて注目していきます。

一口に「IPv6アドレス」といっても、実は幾つか種類があることをご存知でしょうか。

今回の記事でIPv6アドレスの種類や表記方法をチェックしつつ、確認の仕方、設定についてまで解説していきます。

将来、IPv4アドレスに代わって間違いなく「主流」になることが予想されるIPv6について、今のうちから理解を深めておきましょう。


IPv6アドレスの種類

それでは早速、IPv6アドレスの「種類」についてチェックしていきましょう。

実はIPv6アドレスには3種類が存在します。

  • ユニキャストアドレス
  • エニーキャストアドレス
  • マルチキャストアドレス
1つずつ解説を進めていくので、簡単にチェックしてみましょう。


ユニキャストアドレス

ユニキャストアドレスは、一対一の通信で用いられるアドレスであり、単一のインターフェースの識別子です。

ネットワーク内にある特定の通信機器を示すアドレスともいえるでしょう。

このアドレスを用いて、実際に通信などを行う上で「1つのインターフェース」を特定します。


エニーキャストアドレス

エニーキャストアドレスは、インターフェースの集合の識別子です。

複数のインターフェースに割り当てられます。

グループ宛の通信であるものの、通常はそのアドレスを持つ「最も近く」にある機器のインターフェースに配送されます。

グループにある1つのインターフェースにパケットが到達すると、それ以上は配送されないということです。

ちなみに、この「エニーキャストアドレス」はIPv4アドレスにはありません。


マルチキャストアドレス

マルチキャストアドレスは、エニーキャスト同様インターフェースの集合の識別子です。

エニーキャストアドレスでは1つの機器のインターフェースのみに配送という形でした。

それに対してマルチキャストアドレスはそのアドレスを持つ全てのインターフェースに配送されます。

1対グループの通信で利用されます。


ブロードキャストアドレスは存在しない

IPv6アドレスの種類は「ユニキャストアドレス」、「エニーキャストアドレス」、「マルチキャストアドレス」でした。

さて、IPv4アドレスで存在していたブロードキャストアドレスですが、今確認した通りIPv6アドレスには存在していません。

マルチキャストアドレスの一部を同様の用途に割り振っており、ブロードキャストアドレスとして代用しています。


IPv6アドレスの表記法をチェック

IPv4アドレスは「192.168.11.1」のように、人間の目から見ても割と判別・理解しやすいものでした。

では、IPv6アドレスはどのように表記するのでしょうか。


IPv6アドレスは「.」を使わない

IPv4アドレスでは、先ほど示した例の通り「.(ピリオド)」で32ビットを8ビットごとに区切り、10進数で表記していました。

しかし、IPv6アドレスでは「.」は用いません。


16ビットごとに「:」で区切る

IPv6アドレスは、16ビットごとに「:(コロン)」で区切ります。

そして、10進数ではなく16進数で表記しなければなりません。

例えば「2001:0db8:1234:5678:90ab:cdef:0000:0000」といった具合です。


0を省略できる

さて、IPv6アドレスでは「0」を省略できるケースがあります。

「:」で区切られている部分の中身がすべて「0」だった場合「::」と省略可能です。

先ほどの例でいえば「2001:0db8:1234:5678:90ab:cdef::0000」といった具合になります。

この「::」という省略記法の注意点としては、全てが「0」の部分が2箇所以上ある場合、省略できるのは1箇所のみということです。

どこを省略したのかが分からなくなってしまうためにそう定められています。


ブロック先頭の「0」を省略する

また、ブロック先頭の「0」を省略することも可能です。

「2001:0db8:1234:5678:90ab:cdef:0000:0000」の2つ目「0db8」を「db8」といったように省略して表記することができます。

省略できる部分を上手く省略して表記することで、一見複雑に見えるIPv6アドレスを少しは分かりやすくできるでしょう。


IPv6アドレスの確認方法

では、実際にIPv6アドレスを確認してみましょう。

WindowsとMac、それぞれの手順を紹介します。


WindowsでIPv6を確認する

まずWindows 10を例にして確認していきます。

まず、画面左下にあるWindowsボタンをクリックし「設定」を開きましょう。

設定内にある「ネットワークとインターネット」を選択します。

画面内に「アダプターのオプションを変更する」という項目が表示されているので、クリックしてください。

すると、様々なアダプターが表示されます。

Wi-Fiで接続されている方やイーサネット(有線LAN)で接続されている方などはインターネット接続している適切なアダプターを右クリックしてください。

そして「プロパティ」を選択します。

「この接続は次の項目を使用します」という部分をスクロールしていくと「インターネットプロトコルバージョン6(TCP/IPv6)」というものがあります。

この項目にチェックが入っていればOKです。

また、現在利用しているIPv6アドレスを確認したい場合は先ほどのアダプターが表示されている画面で再度右クリックをしましょう。

「状態」という項目があるので、そちらを選択します。

「全般」タブの「詳細(E)…」をクリックすると、「ネットワーク接続の詳細」画面が開きます。

この中に「IPv6アドレス」や「IPv6 デフォルト ゲートウェイ」が表示されているので、確認しましょう。

もしくは、「コマンドプロンプト」を起動してください。

コマンドプロンプト上で「ipconfig」と打ち込み、Enterキーを押しコマンドを実行します。

様々な情報が一挙に表示されますが、その中に「IPv6アドレス」という項目があるはずです。

そちらをご確認ください。


MacでIPv6を確認する

続いてはMacです。

DockやLaunchpadから「システム環境設定」を開いてください。

「ネットワーク」を選択します。

EthernetやWi-Fiといった、IPv6を使用したいサービスを選択し、ウィンドウ右下の「詳細…」をクリックします。

「TCP/IP」をクリックすると、「IPv6の設定」という項目が表示されるのでポップアップメニューを開きましょう。

通常は「自動」になっていますので、確認できたらOKです。


IPv6で接続しているかを確認する方法

実際にインターネットに接続する際にIPv6を利用しているかどうかを簡単に判別できるWebサイトがあります。

あなたの IPv6 接続性をテストしましょう。

上記リンクから、現在IPv6を利用しているかどうかを簡単にチェックすることが可能です。

気になる方はぜひ試してみてください。


IPv6アドレスの設定を手動で行う

さて、IPv6アドレスの確認方法は先ほどお伝えしましたが、実際に設定する場合はどうするのでしょうか。

続いては設定方法を解説いたします。


WindowsでIPv6アドレスの設定をする

先ほど同様、ネットワークとインターネットから適切なアダプターを選択し、プロパティを開いてください。

「インターネットプロトコルバージョン6(TCP/IPv6)」を見つけ、選択した状態で「プロパティ」ボタンをクリックします。

するとIPv6アドレスおよびDNSサーバのアドレスを「自動で設定」するか「手動」つまり「次のIPv6アドレスを使う」、「次のDNSサーバのアドレスを使う」かを選択できます。

自動でよい場合はどちらも「自動」を選択、手動で任意の値を利用したい場合は「次のIPv6(DNSサーバ)アドレスを使う」を選択しましょう。

IPv6アドレスに加えてサブネット プレフィックス長、デフォルト ゲートウェイも入力しなければなりません。

DNSサーバの場合はプライマリDNSとセカンダリDNSを入力します。


MacでIPv6アドレスの設定をする

Macも先ほど同様、DockおよびLaunchpadからシステム環境設定、ネットワークから適切なサービスを選び、詳細を開きます。

「TCP/IP」から、「IPv6の設定」という項目から「手入力」を選びましょう。

実際のIPv6アドレス、ルーターアドレス(ゲートウェイアドレス)、プレフィックス長を入力してください。

入力が完了したら「OK」をクリックして、画面を閉じます。


IPv6アドレスが当たり前の時代が到来する

さて、現代社会においてIPアドレスといえば「IPv4」が当たり前という固定観念があります。

しかし、その時代は過ぎ去りつつあるというのが事実です。

IPv4アドレスは枯渇しつつあり、既に在庫がない状態ですらあります。

そのため、近い将来に間違いなく「IPv6アドレス」が一般的な「IPアドレス」になるであろうことは想像に難しくありません。

いずれ「IPアドレスといえばIPv6が当たり前」になる時代が到来するでしょう。

その頃にはIPv4アドレスは過去の遺物となり、存在すら知らないユーザがいてもおかしくはありません。


ネットワークに携わるエンジニアにとって必須知識になる

つまり、今後ネットワークエンジニアにとって「IPv6アドレス」に関する知識は必要不可欠であることが分かります。

まだ認知度が高いとはいえないIPv6アドレス。

128ビット、そして16進数で表現するということから複雑に見えるため、敬遠してしまう方もいるかもしれません。

しかし、だからこそ今はIPv6に関する理解を深め盤石な知識の基盤を築くチャンスとも捉えられるかもしれません。

ネットワークエンジニアを志している方は、これを機にIPv6アドレスについて更に深く学習してみてはいかがでしょうか。