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toiroフリーランス編集部です。

「生成AI、便利だけど情報漏洩が心配…」「クライアントのソースコードを入力しても大丈夫?」

ITフリーランスとして活動するなかで、ChatGPTをはじめとする生成AIの活用はもはや無視できない業務効率化ツールとなっています。しかしその一方で、使い方を誤ると重大な情報漏洩につながるリスクを孕んでいることも事実です。

特に、クライアントの機密情報やソースコードを扱うフリーランスエンジニアにとって、このリスクは自身のキャリアを揺るがしかねない深刻な問題です。

このコラムでは、生成AIの活用を検討している、またはすでに利用しているITフリーランスエンジニアのあなたが、情報漏洩リスクを正しく理解し、安全に活用するための具体的な知識と対策を徹底的に解説します。

実際に起きた情報漏洩の実例から、具体的なリスク、そして明日から実践できる対策までを網羅的にご紹介。最後まで読めば、生成AIの利便性を享受しつつ、フリーランスとしてもっとも重要な「信頼」を守り抜くためのたしかな指針を得られるはずです。

生成AIと情報漏洩リスクの基本理解

生成AI、特にChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、私たちの働き方を劇的に変える可能性を秘めています。しかし、その強力な能力の裏側には、情報漏洩という無視できないリスクが存在します。まずは、その基本から理解を深めていきましょう。

生成AIの仕組みと入力データの扱われ方

生成AIがなぜあれほど自然な文章を生成できるのか、その心臓部にあるのが「大規模言語モデル(LLM)」です。LLMは、インターネット上の膨大なテキストデータを学習し、単語や文のつながりのパターンを統計的に把握しています。

ユーザーがプロンプト(指示文)を入力すると、AIはその文脈を理解し、学習したデータのなかからもっとも「次に来る確率が高い」と判断した単語を繋ぎあわせて、回答を生成します。

ここで重要なのが、「入力したデータがどう扱われるか」という点です。多くの生成AIサービス、特にクラウドベースで提供されるSaaS型サービスでは、ユーザーが入力したデータはサービス提供者のサーバーに送信されます。そして、そのデータはAIの回答生成に利用されるだけでなく、AIモデルのさらなる学習(再学習)のために利用される可能性があるのです。

例えば、ChatGPTを提供するOpenAI社の利用規約には、ユーザーがAPI経由ではなく、コンシューマー向けサービス(無料版やChatGPT Plusなど)で入力したデータは、AIの改善のために利用される可能性があると明記されています。

ちなみに、 生成AIは人間のように出来事を「記憶」するわけではありません。入力されたデータを、モデルがもつ膨大な統計的パターンの中に「反映」させる、というイメージが近いです。しかし、その結果として、入力された機密情報が、別のユーザーへの回答のなかに断片的に現れてしまう可能性はゼロではないのです。

なぜ情報漏洩の懸念が生まれるのか

生成AIにおける情報漏洩の懸念は、主に以下の3つのポイントから生じます。

・AIモデルへの学習データとしての取り込み

入力した機密情報(個人情報、ソースコード、企業の内部情報など)がAIの学習データとして利用された場合、その情報がモデルの一部となってしまいます。将来、他のユーザーが関連する質問をした際に、意図せずその情報が出力されてしまうリスクがあります。

・サービス提供者によるデータアクセス

クラウドサービスである以上、サービス提供者の従業員がデータにアクセスできる可能性は否定できません。悪意のある内部関係者や、不適切な管理体制によって情報が漏洩するリスクが考えられます。

・サイバー攻撃やバグによる流出

生成AIサービス自体がサイバー攻撃の標的になったり、システム上のバグが存在したりした場合、サーバーに保存されているデータが外部に流出する可能性があります。過去には実際に、他のユーザーのチャット履歴が見えてしまうというバグも発生しています。

これらの懸念点は、フリーランスエンジニアがクライアントから預かる「信頼」というもっとも重要な資産を、一瞬で失いかねない危険性をはらんでいます。

フリーランスエンジニアに起こり得るリスク

情報漏洩のイメージ

では、具体的にITフリーランスの業務において、どのような情報漏洩リスクが潜んでいるのでしょうか。ここでは、特に注意すべき3つのシナリオを掘り下げていきます。

顧客情報やソースコードの外部流出

フリーランスエンジニアが最も警戒すべきは、クライアントから預かった機密情報の流出です。

例えば、以下のようなケースが考えられます。

エラーコードのデバッグ

開発中のソースコードで発生したエラーを解決するため、エラーメッセージと該当部分のソースコードをそのままChatGPTに貼り付けて解決策を質問する。

仕様書の要約

クライアントから受けとった機密情報を含む長文の仕様書を、要約や構成案作成のために生成AIに入力する。

顧客データの整形

マーケティング施策のために預かった顧客リスト(氏名、メールアドレスなどを含む)のデータ整形を依頼する。

これらの行為は、一見すると非常に効率的な業務ハックに思えるかもしれません。しかし、もし入力したソースコードに未公開の独自アルゴリズムや、セキュリティ上の脆弱性に関する情報が含まれていたらどうでしょうか。あるいは、顧客リストがAIの学習データにとりこまれ、断片的にでも外部に漏れたとしたら?

NDA(秘密保持契約)違反に問われることはもちろん、クライアントからの信頼を失い、業界内での評判も失墜しかねません。フリーランスにとって、これはキャリアの断絶を意味するほどの重大なインシデントです。

SaaS型サービス利用による予期せぬ二次利用

多くのフリーランスが手軽に利用できる生成AIは、Webブラウザ経由でアクセスするSaaS(Software as a Service)型が主流です。この手軽さの裏には、「自分が入力したデータが、知らないうちに二次利用されるかもしれない」というリスクが潜んでいます。

前述の通り、多くのSaaS型生成AIサービスでは、入力データをサービス改善やAIの再学習に利用する権利を留保しています。利用規約の細かい文字を読まずに「同意する」をクリックしてしまっているケースも多いのではないでしょうか。

「まさか自分が入れたデータがそのまま使われることはないだろう」と考えるのは危険です。

AIの学習プロセスは非常に複雑であり、入力データがどのように加工され、モデルに反映されるかを正確に予測することは困難です。たとえ匿名化処理が施されるとしても、情報の断片から元の文脈が推測されてしまう可能性は常に残ります。

オープンモデルとクローズドモデルの違いと安全性

生成AIのモデルは、大きく「オープンモデル」と「クローズドモデル」に大別できます。この違いを理解することは、リスク管理において非常に重要です。

クローズドモデル(プロプライエタリモデル)

概要:OpenAI社のGPTシリーズやGoogle社のGeminiなど、特定の企業が開発・管理しているモデル。モデルの構造や学習データの詳細は公開されていません。

利用形態:主にAPIやSaaSとして提供される。

メリット:高性能で、つねに最新の状態にアップデートされる。インフラ管理の手間が不要。

リスク:入力データが開発企業のサーバーに送信され、管理下に置かれる。データの扱いは企業のポリシーに依存するため、情報漏洩リスクの懸念がつきまとう。

オープンモデル(オープンソースモデル)

概要:Meta社のLlamaシリーズや、Mistral AI社のモデルなど、モデルの構造(アーキテクチャ)や重み(パラメータ)が公開されており、誰でも自由にダウンロードして利用できるモデル。

利用形態:自社のサーバーやローカルPCなど、任意の環境(オンプレミス)に構築して利用する。

メリット:入力データを外部サーバーに送信する必要がないため、情報漏洩リスクを極めて低く抑えられる。特定のタスクにあわせてカスタマイズ(ファインチューニング)しやすい。

リスク:高性能なモデルを動かすにはハイスペックなマシンが必要。環境構築や運用管理に専門的な知識とコストがかかる。

フリーランスエンジニアが機密情報を扱う場合、理想的なのはオープンモデルを自身の管理下にある環境で利用することです。これにより、データが外部に出るリスクを根本から断ち切ることができます。

ただし、そのための技術力やコストを考慮すると、まずはクローズドモデルの「オプトアウト申請」(データを学習に利用させない設定)などを活用しつつ、入力する情報の内容を厳格に管理することが現実的な第一歩となるでしょう。

実際に起きた生成AI情報漏洩の事例

理論上のリスクだけでなく、実際に世界でどのようなインシデントが発生しているのかを知ることは、危機感をもち、具体的な対策を講じるうえで非常に重要です。ここでは、公に報じられた代表的な事例をいくつかご紹介します。

サムスン電子:ChatGPTに社内機密を入力し情報流出

生成AIの情報漏洩リスクが世界的に知られるきっかけとなった象徴的な事例です。

2023年3月、韓国のサムスン電子の半導体部門で、従業員が社内の機密情報をChatGPTに入力してしまったインシデントが複数回発生しました。

  • ケース1:機密情報であるソースコードのデバッグを依頼。
  • ケース2:設備の不具合を修正するために、エラーコードを含むソースコードを入力。
  • ケース3:会議の内容を議事録として要約させるため、音声データをテキスト化したものを入力。

これらの行為により、サムスン電子が開発中であった半導体関連の機密情報や、社内の会議内容がOpenAI社のサーバーに送信され、AIの学習データとして吸収されてしまった可能性があります。事態を重く見た同社は、社内での生成AI利用を暫定的に禁止し、独自のAI開発へと舵を切ることになりました。

この事例は、従業員一人ひとりの安易な利用が、いかに企業全体にとって致命的なリスクになり得るかを浮き彫りにしました。

大手電子製品メーカーでのソースコード・会議内容流出

サムスンの事例と同様のインシデントは、日本の大手企業でも報告されています。具体的な企業名は公表されていませんが、複数のメディアが報じたところによると、大手電子製品メーカーの従業員が、社外秘のソースコードや会議の議事録をChatGPTに入力していたことが発覚しました。

これもまた、業務効率化を求めるあまり、情報セキュリティへの意識が薄れてしまった典型的な例といえます。特に、リモートワークが普及し、個々の従業員のPC利用状況を会社が完全に把握することが難しくなっている現代において、同様のリスクはあらゆる企業に潜んでいると考えられます。

ChatGPTのシステムバグによるチャット履歴や個人情報誤表示

ユーザーの入力ミスだけでなく、サービス提供者側の問題で情報が流出するケースもあります。

2023年3月、ChatGPTにおいて、一部のユーザーに他人のチャット履歴のタイトルが表示されてしまうという重大なバグが発生しました。さらに調査を進めた結果、アクティブユーザーの約1.2%について、氏名、メールアドレス、住所、クレジットカード番号の下4桁といった個人情報が意図せず表示されてしまった可能性があることも判明しました。

原因は、オープンソースのライブラリ「Redis」のバグに起因するものとされています。このインシデントにより、OpenAIは一時的にサービスを停止する事態に追い込まれました。

この事例は、たとえユーザーが正しくサービスを利用していても、プラットフォーム側に脆弱性があれば情報は漏洩し得るという、クラウドサービスが本質的に抱えるリスクを示しています。

マルウェア感染による生成AIアカウント情報のダークウェブ流出

サイバーセキュリティ企業「Group-IB」の調査によると、2022年6月から2023年5月までの1年間で、情報窃取型のマルウェアによって盗まれたChatGPTのアカウント情報が、10万件以上もダークウェブ上で取引されていたことが明らかになりました。

これは生成AI自体からの直接的な情報漏洩ではありませんが、マルウェアに感染したPCでChatGPTを利用していた場合、アカウントの認証情報(ログインIDやパスワード)が盗まれ、第三者にチャット履歴を全て閲覧されてしまうリスクがあることを示しています。チャット履歴に機密情報に関するやり取りが含まれていれば、それが間接的な情報漏洩につながります。

Amazon社社内データの流出懸念と社内規制強化

世界的な大企業であるAmazonも、生成AIの利用には非常に慎重な姿勢を示しています。同社の弁護士は、社内Slackを通じて従業員に対し、「ChatGPTにAmazonの機密情報を入力しないように」と警告しました。

この警告の背景には、ChatGPTが生成した回答の中に、Amazon社内のデータに酷似したものが発見されたという事例があったと報じられています。これは、すでに入力された社内データがAIに学習され、回答として出力された可能性を示唆しています。

この事態を受け、Amazonは独自の社内向け生成AI「Bedrock」の開発と利用を推進し、外部サービスへの情報流出リスクを管理する方針を明確にしています。

これらの事例から学べる教訓は明らかです。「自分だけは大丈夫」「これくらいなら問題ないだろう」という安易な判断が、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があるということを、全てのITフリーランスは肝に銘じる必要があります。

ITフリーランスが取るべき対策

リスクを理解したうえで、では具体的にどのような対策を講じればよいのでしょうか。ここでは、ITフリーランスが今日から実践できる、そしてクライアントとの信頼関係を構築する上で不可欠な4つの対策を解説します。

機密情報を入力しない運用ルールの徹底

もっとも基本的かつもっとも重要な対策は、「機密情報を一切入力しない」というルールの徹底です。これは自分自身に課す絶対的なルールとしなければなりません。

  • クライアントのソースコード
  • 個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)
  • NDA対象の情報(未公開の製品情報、経営戦略など)
  • 認証情報(ID、パスワード、APIキーなど)
  • 社内会議の議事録や、それに準ずる機密性の高い会話

これらの情報を扱う際は、生成AIを頼るのではなく、従来通りの方法で、自身の管理下にあるセキュアな環境で作業を行うべきです。

もし、生成AIの力を借りたい場合は、情報を抽象化・匿名化する工夫が必要です。

例1(ソースコード)

NGupdate_user_profileという関数全体をそのまま貼り付け、customer_idpayment_infoといった具体的な変数名が含まれたコードを入力する。

OK:アルゴリズムのロジックだけを抜き出し、変数名をvar_a, data_bのように一般的な名称に置き換えて、「このループ処理をより効率化する方法は?」といった形で質問する。

例2(仕様書)

NG:「新製品『Project Phoenix』の販売戦略に関する以下の議事録を要約して」と、固有名詞を含む文章を丸ごと入力する。

OK:「あるIT製品のマーケティング戦略について、ターゲット層、価格設定、プロモーションの観点から要点をまとめて」と、一般化・抽象化した形で指示を出す。

この一手間を惜しまないことが、あなた自身とクライアントを守る生命線となります。

安全性の高い自前環境・オンプレ型AI利用の検討

より高度なセキュリティを求めるのであれば、オープンソースのLLMを自身の管理下にある環境(ローカルPCや契約サーバー)に構築するという選択肢があります。これが「オンプレミス型(オンプレ型)」の利用方法です。

この方法の最大のメリットは、入力データが外部のサーバーに送信されることが一切ないため、情報漏洩のリスクを限りなくゼロに近づけられる点です。

具体的なツール

Ollama:Llama 3やMistralなどのオープンソースLLMを、比較的簡単にローカル環境で実行できるようにするツール。

LM Studio:GUIベースでさまざまなオープンソースLLMを検索・ダウンロード・実行できるアプリケーション。

GPT4All:ローカルで動作することを前提に開発された、プライバシー重視のチャットAI。

これらの環境を構築するには、ある程度のハイスペックなマシン(特にVRAM容量の大きいGPU)や、Dockerなどのコンテナ技術に関する知識が必要になる場合があります。しかし、クライアントの極めて機密性の高い情報を扱うプロジェクトなどでは、こうした自前のAI環境を構築・提案できること自体が、エンジニアとしての高い付加価値と信頼性につながるでしょう。

NDAを踏まえた生成AI利用ルールの明文化

クライアントと業務委託契約を結ぶ際、多くの場合NDA(秘密保持契約)も同時に締結します。このNDAの内容を再確認し、生成AIの利用が契約に抵触しないかを明確にすることが重要です。

可能であれば、契約交渉の段階で、生成AIの利用についてクライアントと合意形成を図るのが理想的です。

確認・交渉のポイント

  • 「第三者への情報開示」の定義に、SaaS型AIサービスへの入力が含まれるか。
  • どの範囲の業務であれば、生成AIの利用が許容されるか(例:一般的な技術情報の調査はOK、ソースコードの入力はNGなど)。
  • 利用するAIサービス(ChatGPT、Claudeなど)や、利用方法(API経由でのオプトアウト設定利用など)を特定し、クライアントの許可を得る。

これらの内容を覚書や契約書の特記事項として明文化しておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。フリーランスは、自身の業務プロセスを透明化し、積極的にクライアントの懸念を払拭する姿勢を見せることが、長期的な信頼関係の構築に繋がります。

低リスクな業務からの段階的導入

「リスクがあるから一切使わない」と考えるのは、生成AIがもたらす生産性向上の機会を逃すことになり、得策とはいえません。重要なのは、リスクとメリットのバランスを取り、安全な領域から活用をはじめることです。

ステップ1:情報収集・壁打ち

  • プログラミング言語の一般的な仕様に関する質問
  • アルゴリズムのアイデア出し(具体的なコードは含めない)
  • ブログ記事や技術文書の構成案作成
  • 英文メールの添削(機密情報を含まないもの)

ステップ2:定型業務の効率化

  • 公開されているライブラリの利用方法の学習
  • テストコードのパターン生成(固有のロジックを含まない汎用的なもの)
  • ドキュメントの誤字脱字チェック

ステップ3:限定的な機密情報の取り扱い(要・細心の注意)

  • API経由でのオプトアウト設定を有効にしたうえで、抽象化したコードスニペットのデバッグを依頼する。
  • オンプレミス環境を構築し、そのなかで機密情報を扱う。

このように、公開情報や自身の知識整理といった、万が一漏洩しても損害が極めて小さい業務からスモールスタートし、徐々にAIとの付きあい方に慣れていくことが賢明なアプローチです。

これからの生成AIと安全な付き合い方

生成AIと人間がうまく付き合っていくイメージ

生成AIの技術は日進月歩で進化しており、そのリスクや規制のあり方もつねに変化しています。フリーランスとしてこの先も活躍しつづけるためには、変化に追従し、つねに最適な付きあい方を模索していく必要があります。

リスクとメリットのバランスを見極める

生成AIは、正しく使えば開発速度の向上、アイデアの壁打ち、情報収集の効率化など、計り知れないメリットをもたらします。一方で、これまで述べてきたように情報漏洩のリスクは常に存在します。

重要なのは、「ゼロか百か」で考えるのではなく、業務の性質ごとにリスクとメリットを天秤にかけ、利用の可否や方法を判断することです。

✔ 高リスク・低メリット:クライアントの核心的なビジネスロジックを含むソースコードのデバッグ → 利用すべきでない

✔ 低リスク・高メリット:新しいプログラミング言語の学習、一般的なコードの書き方に関する質問 → 積極的に利用すべき

中リスク・高メリット:業務で利用するが機密性は高くないデータの整形 → オプトアウト設定やAPI利用を前提に、慎重に検討

この判断軸を自分の中にもつことが、プロフェッショナルとしてのリスク管理能力の証となります。

最新の規制・技術動向を逐次キャッチアップ

生成AIをとり巻く環境は、法規制、技術、そして社会の認識の全ての面で急速に変化しています。

法規制

EUのAI法(AI Act)に代表されるように、世界各国でAIの利用に関する法整備が進んでいます。日本の個人情報保護法との関連性など、フリーランスとして活動するうえで準拠すべき法律の動向にはつねに注意を払う必要があります。

技術動向

OpenAIやGoogleなどの主要プレイヤーは、セキュリティとプライバシー保護を強化したビジネス向けプラン(ChatGPT Enterpriseなど)を次々と発表しています。また、データをローカルで処理する技術や、漏洩リスクを低減する新たな仕組み(例:差分プライバシー、連合学習など)も研究されています。

サービス利用規約の変更

利用しているAIサービスの利用規約やプライバシーポリシーは、定期的に改定されます。特に、データのとり扱いに関する項目は、変更がないかつねにチェックする習慣をつけましょう。

IT系のニュースサイト、専門家のブログ、公式ドキュメントなどを定期的に巡回し、知識をアップデートしつづけることが、未来のリスクから身を守る最善の策です。

便利さと守秘義務の両立をどう実現するか

最終的に、フリーランスエンジニアは「生成AIの圧倒的な便利さ」「クライアントに対する鉄壁の守秘義務」という、ときに相反する要求を両立させなければなりません。

その答えは、「テクノロジーへの深い理解」「高度な倫理観」にあります。

✔ AIをブラックボックスとして使わない

なぜ情報が漏洩する可能性があるのか、その技術的な背景(学習データの扱い、クラウドの仕組みなど)を理解する。

✔ つねに最悪の事態を想定する

「この情報がもし漏れたらどうなるか?」を自問自答する癖をつける。

✔ クライアントとの対話を重視する

自身のAI利用ポリシーを明確に伝え、クライアントの理解と合意を得る。

生成AIは、もはや単なる「便利なツール」ではありません。それは、フリーランスエンジニアの専門性、倫理観、そしてリスク管理能力を映し出す「鏡」のような存在です。この新しいテクノロジーを賢く、そして安全に使いこなすこと。それこそが、これからの時代に求められるITフリーランスの姿といえるでしょう。

よく使われる用語集

用語説明
大規模言語モデル(LLM)大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、人間のように自然な文章を生成・理解するAIモデル。ChatGPTのGPT-4などが代表例。
プロンプト生成AIに対してユーザーが入力する指示や質問のこと。「プロンプトエンジニアリング」は、望ましい出力を得るためにプロンプトを工夫する技術。
学習データAIがパターンを学ぶために使用される元となるデータ。Webサイト、書籍、論文など、膨大なテキストデータが含まれる。
再学習(トレーニング)ユーザーからの新たな入力データを元に、AIモデルの性能をさらに向上させること。多くのSaaS型AIでは、入力データが再学習に使われる可能性がある。
SaaSインターネット経由で提供されるソフトウェアサービス。Webブラウザから利用できるChatGPTなどが典型例。
オンプレミスソフトウェアやシステムを、自社や自身の管理下にあるサーバー・PC内に設置して運用する形態。クラウドの対義語。
オプトアウトサービス提供者に対して、自身のデータの利用を拒否する意思表示をすること。ChatGPTでは設定画面から入力データをAIの学習に利用させないように申請できる。
APIソフトウェアやプログラムの機能を外部から利用するためのインターフェース。ChatGPTのAPI経由での利用は、デフォルトでデータが学習に使われない仕様になっている。
秘密保持契約(NDA)取引を通じて知った相手方の秘密情報を、第三者に開示したり、目的外に利用したりしないことを約束する契約。
クローズドモデル開発元企業が知的財産権を保持し、モデルの詳細を公開していないAIモデル。GPT-4やGeminiなど。
オープンモデルモデルの構造や重み(パラメータ)が公開され、誰でも自由に利用・改変できるAIモデル。Meta社のLlamaシリーズなど。

よくある質問(Q&A)

Q1: ChatGPTの「オプトアウト」設定をすれば、情報漏洩リスクは完全になくなりますか?

いいえ、完全にはなくなりません。オプトアウトはAIの学習データ化を防ぐ最も重要な対策ですが、システムバグやサイバー攻撃による流出リスクは残ります。必須の対策ですが、過信は禁物です。

Q2: ソースコードのデバッグに生成AIを使いたい場合、どうすれば安全ですか?

もっとも安全なのは、ローカル環境(オンプレミス)でオープンソースのAIを動かすことです。クラウドサービスを使う場合は、コードの変数名などを一般化して「抽象化」し、一部分だけを入力してください。ソースコードの丸ごと入力は絶対に避けましょう。

Q3: フリーランスとして、クライアントに生成AIの利用についてどう説明すればよいですか?

透明性が重要です。「どの業務に、どのAIを、どんな安全対策で使うか」を具体的に説明しましょう。「機密情報は入力しない」「NDAを遵守する」といった基本方針を明確に伝えることで、クライアントの信頼を得られます。

Q4: API経由でChatGPTを利用すれば、SaaS版より安全ですか?

はい、一般的にAPI経由の方が安全です。入力データがAIの学習に利用されないためです。ただし、データは不正利用監視のために一時的に保存され、サービス自体への攻撃リスクは残ります。機密情報の扱いは引きつづき慎重に行ってください。

Q5: 月額料金を払う有料版(ChatGPT Plusなど)なら、無料版よりセキュリティは高いですか?

いいえ、個人向けの有料版(Plusなど)は無料版と情報漏洩の基本リスクは同じで、オプトアウト設定が別途必要です。より高いセキュリティを求めるなら、入力データが学習に使われない法人向けプラン(Team、Enterpriseなど)を検討すべきです。

Q6: 日本国内の企業が提供している生成AIサービスなら安全ですか?

一概に「国産だから安全」とはいえません。重要なのは国籍ではなく、入力データを学習に使うか、データはどこに保管されるかといった「データポリシー」です。利用規約をしっかり確認することが不可欠です。

Q7: 生成AIに入力した情報を削除してもらうことはできますか?

いいえ、一度AIの学習データにとりこまれた情報を後から削除するのは、技術的にほぼ不可能です。だからこそ、入力する前に「その情報が漏れても問題ないか」を慎重に判断する必要があります。

Q8: 画像生成AIにも情報漏洩のリスクはありますか?

はい、あります。アップロードした画像に含まれる個人情報や機密デザイン、そして製品名などを含むプロンプト(指示文)自体が漏洩するリスクがあります。また、生成物が意図せず著作権を侵害する可能性にも注意が必要です。

Q9: クライアントから生成AIの利用を禁止された場合、どうすべきですか?

必ずクライアントの指示に従ってください。契約違反は信頼を失うことに直結します。もし利用したい場合は、安全な利用方法を具体的に提示して再交渉する道もありますが、最終決定はクライアントに従うべきです。

Q10: 今後、フリーランスエンジニアは生成AIとどう向き合っていくべきですか?

「懐疑的な楽観主義者」であることが重要です。生産性向上の可能性に期待しつつも、情報漏洩などのリスクはつねに冷静に分析し、対策を講じる姿勢が求められます。AIを賢く、責任をもって使いこなす能力が、今後の価値を決めます。

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