Chainerとは?Chainerでできることを徹底解説!KerasやTensorFlowとの違いは?チュートリアルも紹介
深層学習(ディープラーニング)向けフレームワーク・Chainer。
Chainerは世界中から熱い視線を注がれているAI(人工知能)を作ることができるフレームワークです。
今回は、Chainerの知識を深めることができる記事をお届けします。
- Chainerについて詳しくなりたい
- Chainerを活用するメリットは?
- メリットだけでなく注意点も知っておきたい
- KerasやTensorFlowとの相違点は?
- Chainerのインストール方法
- Chainerの開始方法や使用方法を知りたい
上記に当てはまる人向けの内容となっています。
Chainerに関心を持っている人はぜひご一読ください。
Chainerとは
Chainerとは2015年6月に公開された、日本発の深層学習向けフレームワークです。
ベースはPython。ニューラルネットワークの学習や計算をおこなう時に使えます。
名称
「チェイナー」と読みます。
開発元
日本企業Preferred Networks(PFN)が中心となって開発しています。
Preferred Networksは深層学習(ディープラーニング)技術の研究や開発をおこなっている企業です。
料金
Chainerはオープンソースで提供されているため、0円(無料)で使用可能です。
対応しているOS
Windows、macOS、LinuxなどのOSに対応しています。
ライセンス
MITライセンスです。
プログラミング言語
先に述べたとおり、Pythonで動きます。
ニューラルネットワークについて
Chainerはニューラルネットワークの学習などに使えるChainer。
ニューラルネットワークとは一体どんなものなのか、簡単に説明します。
ニューラルネットワークは、ニューロン(生物の脳神経を構成している細胞)―人間の脳の仕組みからアイデアを得て作られたものです。
ニューロンと神経回路網を数式的に表現し、脳機能が持つ特性をコンピューター上で表したもののことをいいます。
深層学習について
深層学習とは、英語で「Deep Learning(ディープラーニング)」といいます。
ニューラルネットワークを三層以上重なった「多層ニューラルネットワーク」を使っておこなう機械学習を発展させたものの1つです。
Chainerの機能
この項目では、Chainerが備えている機能についてご覧ください。
ネットワークを構築する
Chainerは複雑なネットワークを構築するだけのフレームワークではありません。
単純(シンプル)なネットワークもスムーズに構築することができます。
Chainer以外の深層学習フレームワークを使ってシンプルなネットワークを作ろうとすると、スペックが高すぎて使いづらいことも。
Chainerはシンプルなネットワークを構築する場合でも柔軟に対応することが可能です。
ニューラルネットワークを構築する
ニューラルネットワークの構築ができます。
「畳み込みニューラルネットワーク」「リカレントニューラルネットワーク」「フィードフォワードニューラルネットワーク」などに対応可能。
拡張機能
Chainerには多くの拡張機能が用意されています。
- 化学や生物分野のChainer Chemistry
- 画像認識のChainerCV(コンピュータービジョン)
- 強化学習のChainer RL(Reinforcement Learning)
このような拡張機能を使い、各分野の実装を実現します。
Chainerの特徴
この項目では、Chainerの特徴についてご紹介します。
高い性能と柔軟性を持っている
Chainerは高スペックを持ったフレームワークです。
企業でAI(人工知能)開発をおこなう時に活かせる機能も内包しています。
また、作成したモデルの編集を柔軟におこなうことができます。
直感的に使える
人間の心理として「高性能=難易度が高い」と思いがちですが、Chainerはこの限りではありません。
Chainerは「Function(関数)」と「Variable(データ)」の要素だけを定義しており、コード記述がとても直感的。
高い機能を誇るにも関わらず、初心者でも扱いやすいツールです。
デバッグが簡単にできる
Chainerは「Define by Run」という実行方式です。
この実行方式は、計算を実行したと同時に計算グラフも定義されます。
そうでない実行方式(Define and Run)の場合、計算グラフを定義したあとに計算を実行する必要が生じます。
しかし、ChainerのようにDefine by Runの実行方式だと、再度構築するのがとてもラクです(データ構造に変更を加える時など)。
デバッグも簡単におこなえます。
Chainerのメリット
ここではChainerの持つメリットを確認しましょう。
シンプルな記述
Chainerの魅力は何といっても、シンプルなPythonの記述でニュートラルネットワークの構築ができること。
複雑なコード記述をおこなわなくても良いのでAI(人工知能)開発を始めたばかりの人にもおすすめです。
インストールの容易さ
Chainerは依存するライブラリが少ないです。
そのため、パソコンへのインストールが簡単にできます。
安心の日本語対応
開発元が日本企業であるため、公式の日本語ユーザーグループがあります。
英語が苦手な人でも安心です。
Chainerのデメリット
計算スピード
Pythonをインタプリタで動作させているため、場合によっては計算スピードが落ちることも。
利用人口が少なめ
直感的で使いやすいフレームワークなのですが、使用しているユーザー数は少なめです。
そのため、不明点が出て来た時に困ってしまう可能性があります。
後方互換性がなくなるアップデート
以前は、後方互換性がなくなるがなくなるアップデートがおこなわれることがありました。
そのため、必要性がないならすぐに最新バージョンへアップデートしなくても良いという見解の口コミも見受けられます。
ですが、現時点(2020年3月)にはそのデメリットは存在しません。
何故なら、Chainerのメジャーアップデートは今後おこなわれないことが決定したからです。
詳しくは「Chainerの今後」をご覧ください。
ChainerとKerasの違い
ここではChainerと同じ深層学習のフレームワークの1つであるKerasとの比較をおこないます。
柔軟な記述
Kerasに比べてChainerは記述の柔軟度が高いです。
Kerasがおこなえない記述もChainerならおこなうことができます。
簡単な実装
どちらも簡単に実装できる点は同じですが、コード記述の簡単さからいうとKerasに軍配があがります。
利用者
利用している人の数的にはKerasがChainerを圧倒します。
デバッグのしやすさ
Chainerはデバッグのしやすさが特徴です。
深層学習への理解
Kerasはコード記述がChainerよりも簡単です。
しかし、コードから処理内容を読み取ることができないため深層学習のことを勉強したい人には向いていません。
ChainerとTensorFlowの違い
Kerasとの違いについて学んだところで、次はTensorFlowとの違いについてです。
言語の違い
ChainerはPython、TensorFlowはC++上で実装するフレームワークです。
ユーザー数
Googleがプロダクトを生み出す時に使用している―…。
そのことから、TensorFlowのユーザー数はとても多くなりました。現時点では世界で最も利用者が多い深層学習のフレームワークです。
実行方式
Chainerの実行方式が「Define by Run」であることは先に述べました。
対するTensorFlowの実行方式は「Define and Run」です。
この実行方式はどんな計算をおこなう時でも変わりません。
たとえ、シンプルな計算(単純なたしざんなど)だったとしてもです。
そのため、使いやすさはChainerが上といえるでしょう。
Chainerの導入
最初に説明しましたが、Chainerはオープンソースであるため無料で使用することが可能です。
ここまで記事を読んでみて「使ってみたいな」と思った人は、今から解説する導入方法を読んで、実際にChainerをインストールしてみましょう。
条件を確認する
Chainerをインストールできるかどうかは、前提条件をクリアしているかによって違ってきます。
その条件とは以下です。
- Python 2.7.6以降、3.4.3以降、3.5.1以降、3.6.0以降のいずれかをインストールしておくこと
この条件さえクリアできればChainerを導入することができます。
Windows
まずはWindowsOSを使用したインストールの槍か倉間田です。
コマンドプロンプトを起動させ、コマンドを入力しましょう。
- pip install chainer
これでインストールは完了です。
GPUを使って計算スピードを向上させたいなど目的が決まっているなら、別途で拡張機能をインストールしましょう。
Mac
Windowsと同じく、下記コードを記述します。
- pip install chainer
WindowsもMacもインストール方法に変わりありません。
Chainerのチュートリアル
Chainerには公式サイトにチュートリアルがあります。
はじめてChainerを触る時はこのチュートリアルを読んでおくのがおすすめです。
チュートリアルのネック
そんなChainerを使い始めるのに必要なチュートリアルですが、1つ大きなネックが存在します。
そのネックとは、チュートリアルの言語が英語ということです。
Chainerには日本語コミュニティがありますが、このチュートリアルは英語で書かれています。
英語が苦手な人はGoogle翻訳などを通して読み進めると良いでしょう。
もう1つのチュートリアル
実は、先に紹介したチュートリアルとは別に「ディープーニング入門 Chainerチュートリアル」というものもあります。
初心者向けに、わかりやすい構成・内容のチュートリアルとなっています。
- 数学の基礎
- Pythonの基礎
- 機械学習・深層学習の基礎とコーディング
上記の内容を段階を追って学習することができます。
途中でつまづいてしまって投げ出してしまわないような工夫が随所にちりばめられています。
Chainerの使い方
導入が終わったら、Chainerを使ってみましょう。
この項目では、Chainerでどういう使い方ができるのか具体的な例を示します。
Chainerは深層学習を実装する時に使うことができるフレームワークです。
ですから、深層学習の具体例=Chainerの具体例といえるでしょう。
- 画像分類
- セグメンテーション
- 物体検出
これらのことがChainer―深層学習でおこなえます。
Chainerの今後
「Chainerのデメリット」で少し触れた件についてご紹介します。
2019年末、Chainerを開発していた日本企業・Preferred Networks(PFN)は「Chainerのメジャーアップデートの終了」を発表しました。
今後の研究開発基盤は、アメリカのFacebook社がメインとなって開発している深層学習フレームワーク「PyTorch」に順次移行するとのこと。
そのため、Chainerの最後のメジャーアップデートは「Chainer v7」で完了の予定です。
「メジャーアップデートがないということは、バグもそのまま?」と不安になる必要はありません。
今後も、バグフィックスとメンテナンスのみは継続しておこなわれます。
なお、Preferred Networks(PFN)が運営している「ディープラーニング入門 Chainerチュートリアル」は今後リニューアルが予定されています。
まとめ
以上、Chainerの基本情報から使い方まで解説しました。
日本製のフレームワークであるChainerの魅力、感じて頂けたでしょうか。
- Chainerをこれから導入しようとしている人
- 導入は終わった人
- チュートリアルが終わって使い始めようとしている人
様々な立場の人がいるでしょうが、AI(人工知能)に興味・関心を持ったときがChainerを取り入れるチャンスです。
開発は終了しますが、Chainerの良さが失われるわけではありません。
この記事をそのチャンスと捉え、ぜひChainerの使い勝手を試してみることをおすすめします。