こんにちは!

toiroフリーランス編集部です。

近年、IT業界で「LLM(大規模言語モデル)」という言葉を耳にしない日はないといっても過言ではありません。

特に、ITフリーランスエンジニアであれば、「LLMを理解して、LLMエンジニアを目指したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、「LLMって結局何?」「生成AIとどう違うの?」「どうやって活用すればいいの?」といった疑問や、具体的な学習方法に悩んでいる方もいるかもしれません。

本コラムでは、そんな疑問を解消し、LLMの基礎から応用、そしてLLMエンジニアへの道筋まで、現役ITフリーランスエンジニアの目線でわかりやすく解説します。

最新の情報を盛り込みながら、LLMの仕組みや使い方、さらにはローカル環境での構築方法、ファインチューニングRAGといった応用技術まで、具体的な活用例を交えながらご紹介します!

LLMとは?言語モデルの基本と仕組みをわかりやすく解説

まずは、LLMとは何か、その基本的な定義と仕組みについて深掘りしていきましょう。

LLM(大規模言語モデル)の定義と特徴

LLM(Large Language Model)とは、大量のテキストデータを学習することで、人間のような自然な言語を理解し、生成できるAIモデルのことです。

その名の通り、「大規模」であることが特徴で、数千億から数兆もの膨大なパラメータ(モデル内部の調整可能な値)をもっています。

この膨大なパラメータとデータ量により、LLMは文脈を正確に捉え、複雑な指示にも柔軟に対応し、まるで人間と会話しているかのような自然な文章を生成することが可能になっています。

LLMが登場する背景と注目される理由

LLMがこれほどまでに注目されるようになった背景には、以下の要因が挙げられます。

・計算能力の飛躍的向上
GPUをはじめとするハードウェアの進化により、大規模なモデルの学習が可能になりました。

大量データの利用可能性
インターネットの普及により、ウェブ上のテキストデータが大量に利用できるようになりました。

・Transformerアーキテクチャの登場
2017年にGoogleが発表したTransformerというニューラルネットワークのアーキテクチャが、言語モデルの性能を劇的に向上させました。これにより、文章の長距離依存関係(文章中の離れた単語同士の関係性)を効率的に捉えることができるようになりました。

これらの技術的進歩により、LLMはこれまでのAIではむずかしかった「複雑な文章理解」「自然な文章生成」「多様なタスクへの応用」といったことが可能になり、ビジネスや研究の場でその可能性が大きく広がっています。

AI・生成AIとの違い:言語モデルの独自性

よく混同されがちな「AI」「生成AI」「LLM」ですが、これらには明確な違いがあります。

AIとは、人間の知能を模倣する技術全般を指す、最も広義な概念です。

画像認識、音声認識、レコメンデーションなど、さまざまな分野が含まれます。

生成AIとは、既存のデータから学習し、新しいデータ(画像、音声、テキストなど)を「生成」するAIの一種です。

例えば、画像生成AIはテキストから画像を生成し、音楽生成AIは音楽を生成します。

LLMとは、生成AIの一種であり、特にテキスト(言語)の生成に特化した大規模なモデルを指します。

生成AIの中でも、人間が使う自然言語を扱うことに強みをもっています。

つまり、LLMは生成AIの一部であり、生成AIはAI全体の一部である、という関係性になります。

◆「AI」「生成AI」「LLM」の比較まとめ
項目AI生成AILLM
定義人間の知能を模倣する技術全般既存データから新しいデータ(画像、音声、テキストなど)を生成するAI特にテキスト(言語)の生成に特化した大規模なモデル
範囲最も広義な概念AIの一種生成AIの一種
機能認識、判断、学習、推論、問題解決など多岐にわたる新しいコンテンツの創造、既存データの変形自然言語の理解、生成、要約、翻訳、質問応答、対話など
画像認識、音声認識、レコメンデーションシステム、自動運転画像生成AI(例:Midjourney)、音楽生成AI、動画生成AIChatGPT、Gemini、Claude、Llamaなど

LLMの独自性は、その膨大な知識量と、人間が使う言葉を理解し、人間らしい言葉でアウトプットできる点にあります。

LLMの仕組みと動作プロセス

ChatGPTのような生成AIのイメージ

次に、LLMがどのようにして動いているのか、その内部構造と動作プロセスを詳しく見ていきましょう。

LLMの内部構造と学習メカニズム

LLMの学習メカニズムは、主に以下のステップで構成されています。

1.事前学習(Pre-training)

インターネット上の膨大なテキストデータ(書籍、記事、ウェブサイトなど)を用いて、単語と単語の関連性、文脈、文法、事実などを学習します。

この段階では、次の単語を予測したり、文章中の穴埋めを行ったりするタスクを繰り返し行い、言語の統計的なパターンを学習します。

この事前学習によって、LLMは一般的な知識と高い言語理解能力を獲得します。

2.ファインチューニング(Fine-tuning)

事前学習で得られた汎用的な能力を、特定のタスクやドメイン(例:カスタマーサポート、法律、医療)に特化させるために、少量の教師ありデータを用いて追加学習を行います。

これにより、モデルは特定の目的に合わせた応答や知識をより正確に生成できるようになります。

LLMの内部構造は、前述のTransformerアーキテクチャが基盤となっています。

Transformerは、文章中の各単語がほかの単語とどのように関連しているかを計算する「Attentionメカニズム」を主要な要素としており、長文の文脈も効率的に処理できます。

プロンプトの役割とテキスト生成の流れ

LLMとの対話において、ユーザーの意図をAIに伝えるための羅針盤となるのが「プロンプト(Prompt)」です。

プロンプトは単なる質問文に留まらず、LLMがどのような情報を基に、どのような形式で、どのようなトーンでテキストを生成するかを決定づける極めて重要な要素となります。

その質が、LLMの出力品質を大きく左右するといっても過言ではありません。

テキスト生成のプロセスは、以下のステップで進行します。

1.プロンプトの入力:AIとの対話の出発点

このステップは、ユーザーがLLMに対してテキスト形式で指示や質問を与えることから始まります。

これは、ChatGPTのようなチャットインターフェースであったり、APIを介してプログラム的に文字列を送信する形であったりします。

明確性と具体性
効果的なプロンプトは、曖昧さを排除し、具体的に何をしてほしいのかを明確に伝える必要があります。「何か書いて」よりも「〇〇というテーマで、300字以内で、読者に親しみやすい口調でブログ記事を書いてください」のように、目的、形式、長さ、トーンなどを具体的に指定することで、LLMはより期待に近い出力を生成できます。

文脈の提供
必要に応じて、LLMが回答を生成するための前提情報や背景知識をプロンプトに含めます。例えば、特定の文書に関する質問であれば、その文書の内容をプロンプトの一部として与える「インコンテキスト学習(in-context learning)」の手法が用いられます。

役割の指定
LLMに特定の「役割」を与えることも有効です。例えば、「あなたはベテランのWebライターです」と指定することで、その役割に合わせた専門性や口調で回答を生成させることができます。

2.エンコーディング:人間の言葉をAIの言語へ変換

入力されたプロンプトは、LLMが内部的に処理できる数値の形式に変換されます。

このプロセスを「エンコーディング」と呼び、テキストが「トークン」という単位に分割され、それぞれが固有の数値(ID)に対応付けられます。

トークン化(Tokenization)
テキストは、単語、サブワード、または文字といったより小さな単位に分割されます。例えば、「プロンプト」という単語が「プロ」「ンプ」「ト」のように分割されることもあります。このトークン化の粒度は、使用するLLMやトークナイザーによって異なります。

埋め込み(Embedding)
各トークンは、高次元のベクトル空間における「埋め込みベクトル」に変換されます。この埋め込みベクトルは、単語の意味的・文法的な情報を数値的に表現したもので、意味的に近い単語はベクトル空間上で近くに配置されるような特性をもちます。LLMは単語単体ではなく、その意味や文脈を理解できるようになります。

位置エンコーディング(Positional Encoding)
Transformerモデルでは、単語の順序情報が失われるため、各トークンの位置情報もベクトルとして埋め込みベクトルに付加されます。LLMは単語の並び順(文法構造など)も考慮して処理を行えるようになります。

3.モデルによる処理:膨大な知識と複雑な計算の実行

エンコードされたプロンプトは、LLMの核心部分であるニューラルネットワーク(主にTransformerアーキテクチャ)に入力されます。

ここで、LLMは学習済みの膨大な知識と複雑な計算能力を駆使して、プロンプトの意味を解釈し、次に生成すべき単語の確率を推論します。

アテンションメカニズム(Attention Mechanism)
Transformerの最も重要な要素の一つです。入力プロンプト内の各トークンが、ほかのどのトークンと強く関連しているかを計算し、その関係性に基づいて、各トークンの重要度を動的に調整します。文中の離れた単語間の意味的なつながり(長距離依存関係)を効率的に捉え、複雑な文脈理解を可能にします。

多層構造(レイヤー)
LLMは、多数のTransformerブロック(レイヤー)を積み重ねた深い構造をもっています。各レイヤーで異なる種類の抽象的な特徴を抽出し、より高度な言語理解と生成能力を獲得します。

並列処理
Transformerアーキテクチャは並列処理に適しており、大量のデータを効率的に処理できるため、高速な学習と推論が可能です。

確率分布の計算
最終的に、LLMはこれまでの入力トークンと自身の学習済みの知識に基づき、次に続く可能性のあるすべての単語(ボキャブラリー内の単語)に対して、それぞれ出現する確率を計算します。

4.デコーディングと出力:確率から自然なテキストへ

モデルによる処理で計算された「次に続く単語の確率分布」を基に、実際にテキストが生成されます。

このプロセスを「デコーディング」と呼び、最適な単語が順次選択されて、最終的な人間が読める形式のテキストとして出力されます。

サンプリング戦略
確率分布の中からどの単語を選ぶかには、いくつかのサンプリング戦略があります。

貪欲法(Greedy Search)
つねに最も確率の高い単語を選択します。予測可能で一貫性のある出力を得やすいですが、創造性に欠ける場合があります。

ビームサーチ(Beam Search)
複数の候補(ビーム)を同時に探索し、より確率の高い単語の組み合わせを見つけます。より質の高い出力を生成しやすいですが、計算コストは高くなります。

温度(Temperature)
生成されるテキストの「ランダム性」や「創造性」を調整するパラメータです。温度が高いほど多様で予測不能なテキストが生成されやすくなり、低いほど定型的で保守的なテキストになります。

・Top-k/Top-pサンプリング
確率の高い上位K個の単語の中から選んだり、累積確率がP%に達する単語の集合の中から選んだりすることで、多様性と品質のバランスを取ります。

文脈の一貫性
LLMは、生成された単語を次の単語の予測に利用することで、長文においても文法的な正しさや文脈の一貫性を保ちながらテキストを生成し続け、自然で読みやすい文章が完成します。

停止条件
LLMは、特定の終了トークンを生成したり、生成されるテキストの長さが上限に達したりすると、テキスト生成を停止します。

主要LLMの比較・特徴

現在、さまざまなLLMが開発され、提供されています。

代表的なものをいくつかご紹介します。

GPTシリーズ(OpenAI)
GPT-3.5、GPT-4などが有名。特にChatGPTは、GPTモデルをベースにした対話型AIサービスとして広く普及しました。汎用性が高く、多様なタスクに対応できます。文章生成、要約、翻訳、プログラミングコードの生成など、幅広い用途で活用されています。

Gemini(Google)
Googleが開発した最新のマルチモーダル(多様な情報形式を扱える)なLLM。テキストだけでなく、画像、音声、動画なども理解し、生成することができます。異なる情報形式を統合して処理できるため、より複雑なタスクに対応できる可能性があります。

Claude(Anthropic)
安全性と倫理的なAI開発を重視していることで知られています。特に長文の要約や複雑な質問応答に強みがあります。

Llama(Meta)
Metaが開発し、オープンソースとして公開されているLLM。研究者や開発者が自由に利用・改変できるため、コミュニティによる活発な開発が進んでいます。ローカル環境での実行や、特定の用途に合わせたファインチューニングが比較的容易です。

これらのモデルはそれぞれ特徴や得意分野が異なります。

利用目的や環境に合わせて最適なモデルを選択することが重要です。

RAG(Retrieval Augmented Generation)とは|仕組みやメリット・デメリット

LLMの性能をさらに高める技術として、「RAG(Retrieval Augmented Generation)」が注目されています。

RAGの基本構造とLLMとの連携手法を解説

RAGは、「検索(Retrieval)」と「生成(Generation)」を組み合わせた技術です。

LLMがもつ既存の知識に加えて、外部のデータベースやドキュメントから関連情報を「検索」し、その情報に基づいて回答を「生成」することで、より正確で最新の情報を盛り込んだ回答を可能にします。

RAGの基本的な構造とLLMとの連携手法は以下の通りです。

1.ユーザーからのクエリ(質問)
ユーザーがLLMに質問を投げかけます。

2.関連情報の検索(Retrieval)
クエリに基づいて、外部のデータベース(社内ドキュメント、Webサイト、専門知識データベースなど)から関連性の高い情報を検索します。この際、ベクトルデータベース(埋め込みベクトルによって類似度を高速に検索できるデータベース)が利用されることが多いです。

3.プロンプトの拡張
検索で得られた関連情報を、元のクエリとともにLLMへのプロンプトに追加します。

4.回答の生成(Generation)
拡張されたプロンプトを受け取ったLLMは、その情報に基づいて、より正確で信頼性の高い回答を生成します。

RAGと従来のLLMの違い・使い分け

従来のLLMは、学習済みのデータに基づいた知識しかもっていませんでした。

このため、学習データに含まれていない最新の情報や、特定の企業内部の機密情報に関する質問には、正確に答えるのがむずかしいという課題がありました。

しかし、RAG(Retrieval Augmented Generation)は、外部情報をリアルタイムで参照できるため、従来のLLMとは明確な違いがあります。

RAGは、従来のLLMの知識の限界を補完し、その能力を大きく拡張します。

まず、従来のLLMが学習データにない最新の出来事や動向を扱うのが苦手なのに対し、RAGは外部ソースからリアルタイムで情報を検索し、回答に反映できるため、つねに最新の情報を基にした応答が可能になります。

次に、RAGは参照元の情報を明示できるため、生成された回答の信頼性を大幅に向上させられます。

ユーザーは情報の出所を確認できるので、安心してその情報を利用できます。

さらに、LLMが事実に基づかない情報を生成してしまう現象である「ハルシネーション(Hallucination)」を抑制する効果も期待できます。

これは、外部から取得した正確な情報が回答の根拠となるためです。

最後に、特定の企業や分野に特化した内部ドキュメントを情報源として利用することで、RAGは専門性の高い質問にも極めて正確に回答できるようになります。

これらの特性から、RAGと従来のLLMは異なる状況で使い分けられます。

一般的な知識に基づく質問や、創造的な文章生成が主な目的であれば、従来のLLMで十分対応可能ですが、特定のドメイン知識やつねに最新の情報、そして高い情報の正確性が求められる場合は、RAGの導入が非常に有効な戦略となるでしょう。

RAG導入のメリット・デメリット

◆ メリット

・情報の正確性と信頼性の向上
最新情報や社内データなど、学習データにない情報も参照できるため、より正確で信頼性の高い回答が得られます。

・ハルシネーションの抑制
誤った情報を生成するリスクを低減できます。

・モデルの再学習不要
新しい情報が追加されても、LLM自体を再学習させる必要がなく、検索対象のデータベースを更新するだけで対応できます。

・透明性の確保
回答の根拠となった情報源を提示できるため、ユーザーは情報の信頼性を確認できます。

◆ デメリット

検索システムの構築コスト
質の高い情報を迅速に検索するためのシステム構築が必要となり、初期投資や運用コストがかかる場合があります。

情報源の品質依存
参照する情報源の品質が低い場合、生成される回答の品質も低下する可能性があります。

検索の複雑さ
適切な情報を効率的に検索するためのアルゴリズムやチューニングが必要になることがあります。

RAGは、LLMの実用性を大きく引き上げる強力な技術といえるでしょう。

ファインチューニングとは?仕組み・プロセス・データセットの作り方

RAGと並んでLLMの応用において重要なのが「ファインチューニング」です。

ファインチューニングの目的と必要性

ファインチューニングとは、事前学習済みのLLMを、特定のタスクやドメインに特化させるために追加で学習させることを指します。

その目的と必要性は以下の通りです。

・特定タスクへの最適化
事前学習で得られた汎用的な知識を、特定の業務(例:特定の商品に関する問い合わせ応答、特定の文書形式でのレポート作成など)に最適化させます。

・ドメイン知識の獲得
一般的な知識に加え、特定の業界(医療、金融、法律など)や企業内部の専門用語、慣習などをLLMに学習させ、より専門的な応答を可能にします。

・モデルの挙動の調整
特定のトーン(例:丁寧語、フランクな言葉遣い)や、特定のルール(例:特定の情報を出力しない、つねにポジティブな応答をする)に従うようにモデルの挙動を調整します。

・ハルシネーションの低減
特定のデータに基づいて学習させることで、事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」のリスクを低減できます。

ファインチューニングの具体的なステップと実装方法

ファインチューニングの具体的なステップは以下の通りです。

1.データセットの準備
ファインチューニングの最も重要なステップです。目的に合った高品質なデータセットを用意します。

2.データの前処理
準備したデータセットをLLMが学習しやすい形式に変換します。不要なノイズの除去、テキストの正規化、トークン化などを行います。

3.モデルの選択
ファインチューニングを行うベースとなるLLMを選択します。モデルの規模や、利用するクラウドサービス(OpenAI API、Google Cloud AIなど)によって実装方法は異なります。

4.学習の実行
準備したデータセットを用いて、選択したLLMを学習させます。学習率、バッチサイズ、エポック数といったハイパーパラメータを調整しながら、最適な性能を目指します。

5.モデルの評価とデプロイ
学習済みのモデルを評価し、期待通りの性能が出ているかを確認します。問題がなければ、実際のアプリケーションにデプロイして利用します。

実装方法の例

OpenAIのAPIを利用する場合、openai.FineTuningJob.create()のようなAPIを使って、準備したデータセットをアップロードし、ファインチューニングジョブを実行します。

より詳細な制御が必要な場合は、Hugging Face Transformersなどのライブラリを用いて、Pythonでモデルを直接ロードし、学習ループを記述することも可能です。

データセット準備・前処理・選定の工夫ポイント

ファインチューニングの成功は、ひとえにデータセットの品質にかかっています。

どんなに優れたLLMや高度な技術を用いても、元となるデータが不十分であれば、期待通りの成果は得られません。

では、どのようにして質の高いデータセットを準備し、モデルの性能を最大限に引き出すことができるのでしょうか。

まず最も重要なのは、高品質なデータを収集することです。

誤字脱字がなく、内容に一貫性があり、何よりも目的(例えば、特定の業界のQ&A応答や、特定のトーンでの文章生成など)に合致したデータを選ぶことが肝心です。

次に、モデルの汎化能力を高めるためには、データの多様性を確保することが不可欠です。

特定の偏りがないよう、さまざまなパターンや表現を網羅したデータセットを用意することで、未知の入力に対しても適切に応答できる柔軟なモデルを構築できます。

また、データセットの準備段階では、適切なアノテーション(タグ付け)が欠かせません。

例えば、質問と回答のペアであれば、それぞれの質問と回答が正確に対応しているか、分類タスクであれば、適切なラベルが正確に付与されているかを確認しましょう。

このアノテーションの精度が、モデルの学習効果に直結します。

さらに、データ量の確保も重要な要素です。

ファインチューニングにはある程度のデータ量が必要で、タスクの複雑さにもよりますが、数百から数千のデータポイントが目安となることが多いです。

ただし、単に量が多いだけでなく、前述の品質と多様性を満たしていることが前提となります。

収集したデータは、そのままモデルに投入するのではなく、ノイズの除去と正規化といった前処理を丁寧に行う必要があります。

不要な記号、特殊文字、HTMLタグなどを取り除き、テキスト形式を統一することで、モデルの学習効率を飛躍的に高めることができます。

最後に、LLMがテキストをどのようにトークン(単語や部分単語)に分割するのかを理解し、それに合わせてデータを調整することも非常に重要です。

モデルがデータをどのように「読む」かを把握することで、より効果的なデータセットを作成し、ファインチューニングの成功へと繋げられます。

RAGとファインチューニングの違い・組み合わせ活用

RAGとファインチューニングは、どちらもLLMの性能を向上させる技術ですが、アプローチが異なります。

特徴RAGファインチューニング
目的外部情報の参照による知識の拡充と正確性向上特定タスク・ドメインへの最適化、挙動の調整
情報源外部データベース(リアルタイム参照)事前準備された学習データセット
知識の追加新しい情報を検索してプロンプトに追加モデル自体の知識を書き換え・追加
更新頻度外部データベースを更新するだけで対応可能モデルの再学習が必要
コスト検索システムの構築・運用コストデータ準備、学習コスト

RAGとファインチューニングは、相互に補完しあう関係にあり、くみあわせて活用することで、さらに強力なLLMアプリケーションを構築できます。

・ファインチューニングで特定のトーンやスタイルの学習
まずファインチューニングで、企業のブランドイメージにあった言葉遣いや、特定の専門用語の使い方をモデルに学習させます。

・RAGで最新情報や内部情報を参照
そのうえで、RAGを用いて、社内ドキュメントや最新の顧客データなどを参照し、つねに最新かつ正確な情報を基に回答を生成させます。

このようにくみあわせることで、特定のニーズにあわせた高品質な回答を、つねに最新の情報に基づいて提供できるようになります。

LLMの使い方・ユースケース|業務やビジネスへの実践活用

LLMは多岐にわたる分野で活用され始めています。

ここでは、具体的なユースケースと業界別の導入事例、そしてデータ連携の重要性について解説します。

LLMの活用例:チャットボット・ナレッジ管理・文章生成・分析業務

チャットボット・カスタマーサポート

顧客からの問いあわせに対して、FAQや製品マニュアルを基に自動で回答。24時間365日の対応が可能になり、人件費削減と顧客満足度向上に貢献します。複雑な質問はRAGと連携し、最新情報や過去の対応履歴を参照して、よりパーソナライズされた回答を提供します。

ナレッジ管理・社内検索

社内の膨大なドキュメント(議事録、報告書、規程など)から必要な情報を瞬時に検索し、回答を生成。社員の問いあわせ対応や情報探索の時間を大幅に短縮します。新入社員のオンボーディング資料としても活用できます。

文章生成・コンテンツ作成

ブログ記事、メール、プレスリリース、SNS投稿などの文章を自動生成キーワードやテーマを与えるだけで、短時間で質の高いコンテンツを作成できます。翻訳や要約、校正作業も得意とします。

分析業務・データ洞察

大量のテキストデータ(お客様からのフィードバック、アンケート結果、市場調査レポートなど)を分析し、傾向や感情を抽出。ビジネスの意思決定に役立つ洞察を提供します。自然言語で質問を投げかけるだけで、データから必要な情報を引き出すことも可能です。

コード生成・開発支援

プログラミングコードの自動生成、デバッグ、コードレビューの支援。開発者の生産性を向上させます。GitHub Copilotのように、IDE(統合開発環境)と連携してコード補完や関数生成を行うツールも登場しています。

業界別(医療・金融・マーケティングなど)の導入事例

医療

・患者の医療記録や症状を分析し、診断支援や治療方針の提案
・最新の医学論文から必要な情報を抽出し、研究者の情報収集を効率化
・医療従事者向けの学習コンテンツ生成

金融

・お客様からの問いあわせに対する自動応答(残高照会、取引履歴確認など)
・市場レポートの自動生成、金融データの分析
・詐欺検知や不正取引の監視(パターン認識)

マーケティング

・ターゲット顧客にあわせたパーソナライズされた広告文やコピーの生成
・SNSのトレンド分析、お客様の感情分析
・A/Bテスト用の多様なコンテンツ生成。

法律

・判例や法規の検索、契約書の自動生成・レビュー
・法的文書の要約や翻訳。法的相談への初期対応チャットボット

社内データやクラウド・外部データベースとの連携

データベース・サーバールームのイメージ

LLMの真の価値を引き出し、その能力を最大限に活用するには、既存の社内システムや外部データベースとのシームレスな連携が欠かせません。

LLMを単体で使うだけでは、その秘められたポテンシャルを十分に活かせないからです。

例えば、社内システム(CRMやERPなど)とLLMを連携させることで、顧客情報や販売データといった基幹業務データをLLMが活用できるようになります。

よりパーソナライズされた顧客対応が可能になったり、手作業で行っていた業務が自動化され、業務効率が飛躍的に向上したりするでしょう。

また、現代のビジネスでは、多くの企業がGoogle DriveやMicrosoft SharePointのようなクラウドストレージに重要なドキュメントを保存しています。

これらのクラウドストレージとLLMを連携させれば、保存されているドキュメントをLLMの学習データとして利用したり、RAG(Retrieval Augmented Generation)の検索対象として活用したりできます。

これにより、LLMは企業のもつ膨大な知識を基盤として、より正確で詳細な情報を提供できるようになります。

さらに、LLMの応用範囲を広げる上で重要なのが、外部データベースやAPIとの連携です。

最新のニュース、リアルタイムの市場データ、天気情報といった刻々と変化する情報は、外部APIを通じて取得し、LLMの回答に反映させることが可能です。

LLMはつねに最新の情報に基づいて、ユーザーに価値ある洞察を提供できるようになります。

これらの連携を実現することで、LLMは単なる言語生成ツールから、企業がもつ重要なデータや外部の膨大な知識を繋ぎあわせ、新たな価値を創造する強力なインテリジェントハブへと進化を遂げます。

データのサイロ化を防ぎ、LLMを中心に情報が有機的に連携することで、これまでになかったビジネス機会が生まれる可能性を秘めているのです。

ローカル環境でのLLM構築・運用の方法とセキュリティ考慮点

クラウドサービスとして提供されているLLMが一般的ですが、プライバシーやコストの観点から、ローカル環境でのLLM構築も注目されています。

ローカルLLM導入のメリット・デメリット

◆ メリット

・データプライバシー・セキュリティの向上
機密性の高いデータを外部に送信することなく、社内ネットワーク内で処理できるため、情報漏洩のリスクを低減できます。

・コスト削減(長期的視点)
クラウドサービスの利用料がかからず、大規模な利用や長期的な運用においてはコストを抑えられる可能性があります。

・カスタマイズの自由度
モデルの内部構造や挙動をより細かく制御でき、特定の要件にあわせた最適化が可能です。

・インターネット接続不要
オフライン環境でもLLMを利用できます。

◆ デメリット

・高いハードウェア要件
LLMの実行には高性能なGPUや大容量のメモリが必要となり、初期投資が高額になります。

・構築・運用の専門知識
モデルのダウンロード、環境構築、チューニング、監視など、専門的な知識とスキルが求められます。

・モデルの選択肢の制限
クラウドAPIで提供されている最新かつ大規模なモデルは、ローカルでの実行が困難な場合があります。主にオープンソースの比較的小規模なモデルが対象となります。

・パフォーマンスの課題
クラウドの最適化された環境と比較して、ローカル環境での処理速度が遅くなる可能性があります。

必要なツール・システムと構築の手順

ローカルLLMを構築・運用するために必要な主なツールやシステム、そして基本的な手順は以下の通りです。

必要なツール・システム

・高性能なGPU
NVIDIAのGeForce RTX 30シリーズ以降や、データセンター向けのNVIDIA A100/H100などのGPUが必須です。**VRAM(ビデオメモリ)**が非常に重要になります。

・大容量のRAMとストレージ
モデルのロードや推論に必要なメモリ、そしてモデルファイルやデータセットを保存するためのストレージが必要です。

・LinuxベースのOS
多くの場合、Linux環境での構築が推奨されます。

・Python
LLMのライブラリやフレームワークの多くはPythonで書かれています。

・GPUドライバー
利用するGPUに応じた最新のドライバーをインストールします。

・CUDA Toolkit
NVIDIA GPUを利用する場合、CUDA Toolkitが必要です。

・Pythonライブラリ・フレームワーク

・transformers(Hugging Face)
LLMのモデルを簡単にロード・実行できるライブラリ。

・bitsandbytes, accelerate
量子化や並列処理を可能にし、限られたVRAMで大きなモデルを実行するのに役立ちます。

・llama-cpp-python(または類似のプロジェクト)
Llama.cppのようなC++で実装された高速な推論エンジンをPythonから利用するためのバインディング。これにより、CPUでも比較的小規模なモデルであれば実行可能になります。

構築の手順(一般的な例)

1.ハードウェアの準備
必要なGPU、RAM、ストレージを搭載したPCまたはサーバーを用意します。

2.OSとドライバーのインストール
Linuxをインストールし、NVIDIA GPUドライバーとCUDA Toolkitをセットアップします。

3.Python環境の構築
condaやvenvなどを使ってPythonの仮想環境を作成します。

4.必要なライブラリのインストール
pip install transformers accelerate bitsandbytesなどのコマンドでライブラリをインストールします。

5.LLMモデルのダウンロード
Hugging Face Hubなどから、ローカル実行可能なLLMモデル(例:Llama 3の各サイズ、Mistralなど)をダウンロードします。特に.gguf形式のモデルは、CPUでも効率的に動作するように最適化されており、手軽に試すことができます。

6.推論コードの記述と実行
ダウンロードしたモデルをロードし、プロンプトを与えてテキストを生成するPythonスクリプトを作成・実行します。

データセキュリティ・プライバシーへの対応

ローカル環境でLLMを導入する最大の利点の一つは、データセキュリティとプライバシーをより強固に確保できる点です。

機密情報を外部のクラウドサービスに送ることなく、自社の管理下で処理できるため、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。

しかし、ローカル環境だからといって、あらゆるリスクがなくなるわけではありません。依然として、細心の注意を払うべき点があります。

まず、ローカルで稼働するLLMサーバーへの不正アクセスを防ぐことが極めて重要です。

そのためには、ファイアウォール設定やVPN利用など、厳格なネットワークアクセス制御を徹底する必要があります。

次に、モデルファイルや学習データ、LLMによって生成されたテキストなど、保存されるデータは適切に暗号化することが望ましいです。

万が一データが流出しても、その内容を保護できます。

さらに、LLMの利用ログを適切に管理し、つねに異常がないか監視する体制も不可欠です。

不審なアクセスや利用パターンを早期に発見するためにも、ログの徹底的な管理は基本中の基本です。

また、モデル自体の監視と監査も継続的に行いましょう。

LLMが意図しない出力(例えば、不適切な表現や機密情報の誤った生成)をしていないか定期的にチェックし、必要に応じてファインチューニングや設定の調整を行うことで、モデルの信頼性を維持できます。

もしユーザーの個人情報を取り扱う場合は、GDPR(一般データ保護規則)や各国のデータプライバシー規制を確実に遵守するための体制を構築しなければなりません。

これは、法的リスクを回避し、企業の社会的責任を果たす上で必須の項目です。

そして何より、責任あるAIの運用をつねに心がけることが重要です。

モデルが生成するコンテンツの倫理的側面や潜在的なバイアスにも目を向け、不適切なコンテンツが生成されないよう、つねに改善と対策を講じ続ける必要があります。

このように、ローカルLLMはセキュリティとプライバシーを重視する企業や、特定のニッチな用途に特化させたい場合に、非常に強力な選択肢となり得ます。

しかし、その導入と運用には、上記の注意点を踏まえた総合的なセキュリティ戦略が求められます。

LLMのメリット・デメリットと導入時の課題

LLMは大きな可能性を秘めている一方で、導入にはメリットとデメリット、そして課題が伴います。

それぞれを見ていきましょう。

LLMのメリット・品質向上のポイント

◆ メリット

・生産性の向上
手作業で行っていた文章作成、情報検索、データ分析などの時間を大幅に短縮し、業務効率を高めます。

・コスト削減
人手による作業を自動化することで、人件費や運営コストを削減できます。

・新しい価値の創出
これまで不可能だったクリエイティブなコンテンツ生成や、複雑なデータからの洞察抽出など、新たなビジネスチャンスを生み出します。

・パーソナライゼーション
個々のユーザーにあわせた情報やコンテンツを生成し、顧客体験を向上させます。

・24時間365日稼働
人間の都合に左右されず、つねにサービスを提供できます。

品質向上のポイント

・高品質なプロンプトの設計
LLMからいい出力を得るためには、明確で具体的なプロンプトを与えることが最も重要です。

・RAGの活用
外部の最新情報や社内データを取り込むことで、回答の正確性と網羅性を向上させます。

・ファインチューニングの実施
特定のタスクやドメインに特化させることで、モデルの応答品質を最適化します。

・人間によるレビューとフィードバック
生成されたコンテンツを人間がレビューし、問題点を修正することで、モデルの改善サイクルを回します。

・倫理的配慮とバイアス対策
生成されるコンテンツに偏りがないか、差別的な表現が含まれていないかなどを定期的に確認し、対策を講じます。

デメリット・よくある課題とその対策

LLMは非常に強力なツールですが、その導入にはいくつかの課題とデメリットも伴います。

これらの点を理解し、適切に対策を講じることが、LLMを成功させる鍵となります。

LLMの利用で最も懸念される課題の一つが、ハルシネーション(幻覚)です。これは、LLMが事実に基づかない、でたらめな情報を生成してしまう現象で、特に専門性の高い分野や最新情報では顕著に見られます。

この問題に対処するには、RAG(Retrieval Augmented Generation)を導入して外部の信頼できる情報源を参照させたり、生成された情報を人間がファクトチェックする仕組みを導入したりすることが重要です。

また、LLMは学習データに含まれる社会的な偏見や差別を、生成されるテキストに反映してしまうバイアス(偏見)の問題も抱えています。

この課題への対策としては、学習データの多様性を確保し、意図的にバイアスを排除する努力が求められます。

さらに、生成されたコンテンツを倫理的にレビューするガイドラインを設け、定期的にチェックすることも効果的です。

情報のセキュリティとプライバシーも重要な懸念事項です。

機密情報をLLMに入力することで、情報漏洩のリスクが生じる可能性があります。

これに対しては、ローカルLLMの導入を検討したり、入力データから個人情報や機密情報を匿名化・除去する前処理を行ったりすることが必須です。

信頼できるクラウドプロバイダーを選定し、契約内容を精査することも忘れてはいけません。

LLMの学習や推論には莫大な計算資源が必要であり、電力消費も大きく、計算コストと環境負荷が懸念される点も課題です。

この負荷を軽減するためには、より効率的なモデル(軽量モデルや量子化モデルなど)の利用を検討しましょう。

省電力設計のハードウェアを選択したり、利用状況を最適化して無駄な計算を削減したりする工夫も重要です。

LLMの出力は予測がむずかしい場合があり、つねに意図通りの結果が得られるとは限らないというコントロールのむずかしさも存在します。

これに対処するには、プロンプトエンジニアリングのスキルを向上させ、明確で具体的な指示を与えることが大切です。

モデルのパラメータ(温度など)を調整したり、複数回の生成を試行して最適な結果を選択したりする工夫も必要になります。

最後に、LLMが生成したコンテンツによって生じた問題(著作権侵害や名誉毀損など)に対する法的・倫理的責任の所在が不明確な場合があります。

このリスクを避けるためには、利用規約の整備や、生成物の利用に関するガイドラインの策定が不可欠です。

生成物の最終的な責任は人間が負うという意識をもつことが、適切な運用には欠かせません。

ビジネス導入時の注意点・よくある失敗例

・過度な期待
LLMは万能ではありません。導入前に、解決したい課題とLLMで可能な範囲を明確にし、過度な期待をもたないことが重要です。

・データ戦略の欠如
LLMの性能はデータの質に大きく左右されます。データ収集、管理、品質確保の戦略なしに導入を進めると、期待する効果は得られません。

・PoC(概念実証)なしの導入
いきなり大規模なシステムに導入するのではなく、小規模なPoCを実施し、効果検証と課題抽出を行うことが成功の鍵です。

・担当者のスキル不足
LLMの運用には専門知識が必要です。適切な人材育成や外部パートナーとの連携を怠ると、プロジェクトが停滞します。

・セキュリティ対策の軽視
情報漏洩などのインシデントは、企業の信頼を大きく損ねます。徹底したセキュリティ対策は必須です。

・法規制・倫理への無配慮
各国の法規制やAI倫理ガイドラインを無視した運用は、法的リスクや企業の評判低下につながります。

LLMの導入は、技術的な側面だけでなく、組織体制や運用プロセス、倫理的配慮など、多角的な視点からアプローチすることが成功への道です。

LLMエンジニアを目指すには|必要な知識・スキル・学習ロードマップ

LLMの可能性に魅力を感じ、LLMエンジニアとしてのキャリアを考えているITフリーランスエンジニアの方も多いでしょう。

ここでは、LLMエンジニアに求められるものと、具体的な学習ステップについて解説します。

LLMエンジニアに求められる技術と業務内容

LLMエンジニアは、LLMを活用したアプリケーションの設計、開発、運用、改善を行う専門家です。

求められる技術と業務内容は多岐にわたります。

求められる技術・知識

・プログラミングスキル
Pythonは必須。データ処理、API連携、機械学習ライブラリの利用に不可欠です。

・機械学習・深層学習の基礎
ニューラルネットワーク、勾配降下法、過学習など、基本的な概念の理解。

・自然言語処理(NLP)の基礎
トークン化、埋め込みベクトル、Attentionメカニズムなど、言語モデルの基盤となる知識。

・LLMの知識
Transformerアーキテクチャ、各種LLMモデル(GPT, Gemini, Claude, Llamaなど)の特徴と使い方。

・プロンプトエンジニアリング
LLMから最適な出力を引き出すためのプロンプト設計、最適化のスキル。

・RAGの知識と実装
ベクトルデータベース、情報検索、埋め込みモデルに関する知識と、それらを統合する実装能力。

・ファインチューニングの知識と実装
データセットの準備、モデルの選択、学習プロセスの実行、評価に関するスキル。

・クラウドプラットフォームの知識
AWS, GCP, Azureなどの機械学習サービスやGPUインスタンスの利用経験。

・MLOpsの基礎
モデルのデプロイ、監視、バージョン管理、継続的な改善に関する知識。

・データ処理・データベースの知識
大量のテキストデータを効率的に処理し、管理する能力。SQL, NoSQL, ベクトルデータベースなど。

業務内容

・LLMを用いた新規サービスの企画・設計
・LLMアプリケーションの開発(API連携、フロントエンド・バックエンド開発)
・RAGシステムの構築・運用
・ファインチューニング用データセットの作成と学習実行
・LLMモデルの評価と性能改善
・プロンプトの設計・最適化
・LLMのデプロイと運用監視
・最新のLLM技術やトレンドの調査・研究

学習ステップ:データセット作成、Fine-tuning、RAGの実践

LLMエンジニアを目指すにあたり、具体的な学習ロードマップを描くことは非常に有効です。

体系的にスキルを習得し、実践力を高めていきましょう。

まず、基盤となるのはプログラミングとデータサイエンスの基礎固めです。

Pythonの基本、例えばデータ構造やアルゴリズム、オブジェクト指向プログラミングをしっかりと身につける必要があります。

また、データ処理にはNumPyPandas、データの可視化にはMatplotlibSeabornといったライブラリの習得が不可欠です。

さらに、機械学習の基礎として、回帰、分類、クラスタリングといった基本的な概念も理解しておきましょう。

次に、自然言語処理(NLP)と深層学習の基礎へと進みます。

NLPの基本概念であるテキスト前処理トークン化Word Embeddingなどを学び、言語がどのようにコンピュータで扱われるかを理解します。

深層学習については、ニューラルネットワーク、CNN、RNN、そしてLLMの根幹をなすTransformerの基本原理を把握してください。

PyTorchTensorFlowといった主要な深層学習フレームワークの使い方も、この段階で習得します。

基礎が固まったら、いよいよLLMの理論と実践に入ります。

主要なLLM(例えばGPT、Llamaなど)のアーキテクチャやその進化の歴史を学ぶことで、現在のLLMがどのような背景で登場したのかを理解できます。

そして、Hugging Face Transformersライブラリを使って既存のLLMをロードし、実際にテキスト生成を試してみましょう。

OpenAI APIGemini APIなど、各種LLMサービスのAPIを実際に叩いてみることで、実践的な利用方法を身につけます。

このフェーズでは、プロンプトエンジニアリングを徹底的に学ぶことが特に重要です。

さまざまなプロンプトパターンを試し、LLMから最適な出力を引き出すためのスキルを磨き込んでください。

さらに応用として、RAG(Retrieval Augmented Generation)の実践に取り組みます。

まずはベクトルデータベースの概念を理解し、Chroma、Weaviate、Pineconeなどを実際に動かしてみるのがよいでしょう。

その後、LangChainやLlamaIndexといったフレームワークを使って、RAGシステムを構築するチュートリアルをこなします。

最終的には、独自のドキュメントを用意し、それに基づいてRAGを実装することで、実践的なスキルが身につきます。

並行して、ファインチューニングの実践も行います。

自身の目的にあったデータセットを実際に作成し、少量のデータで既存のLLMをファインチューニングしてみましょう。

例えば、Hugging Face Trainerを利用したり、LoRA(Low-Rank Adaptation)のような軽量なファインチューニング手法についても学ぶと、効率的なモデル改善が可能になります。

最後に、学んだ知識を形にするプロジェクト経験とポートフォリオ作成が重要です。

実際にLLMアプリケーション(例えば、特定のテーマに特化したチャットボットや要約ツールなど)を開発してみることで、実践的な開発力を養います。

完成したコードはGitHubなどで公開し、自身のスキルを示すポートフォリオとしてアピールしましょう。

Kaggleなどのデータサイエンスコンペに参加して、実践的な問題解決能力を磨くのも非常に有効な学習方法です。

おすすめLLMツール・最新トレンド

開発フレームワーク

・LangChain
LLMをベースとしたアプリケーション開発のためのPythonライブラリ。さまざまなLLM、ツール、データソースを連携させ、複雑なワークフローを構築できます。

・LlamaIndex
RAGアプリケーション開発に特化したPythonライブラリ。外部データとLLMを効率的に連携させる機能が豊富です。

・Hugging Face Transformers
豊富な事前学習済みモデルを提供し、ファインチューニングや推論を容易に行えるライブラリ。

ベクトルデータベース

・Chroma
軽量で使いやすいオープンソースのベクトルデータベース。

・Pinecone, Weaviate, Milvus
大規模な本番環境での利用に適したベクトルデータベース。

LLM API

・OpenAI API
GPTシリーズへのアクセスを提供。

・Google Gemini API
Geminiモデルへのアクセスを提供。

・Anthropic Claude API
Claudeモデルへのアクセスを提供。

ローカル実行ツール

・Ollama
ローカル環境でさまざまなオープンソースLLMを簡単に実行できるツール。

LM Studio
デスクトップアプリケーションとして、LLMのダウンロードから実行までをGUIで手軽に行えます。

・Llama.cpp
CPU環境でも高速にLLMの推論を行えるC++ライブラリ。.gguf形式のモデルに対応。

最新トレンド

・マルチモーダルLLMの進化
テキストだけでなく、画像や音声、動画など、多様な情報形式を理解・生成できるLLMが主流になりつつあります。

・エージェントAI
LLMが自律的に目標を設定し、外部ツールと連携しながら複雑なタスクをこなす「エージェント」としての機能が進化しています。

・小規模・効率的なモデル
限られたリソースでも高い性能を発揮する、より軽量で効率的なLLMの開発が進んでいます。

・エッジAIでのLLM展開
スマートフォンやエッジデバイス上でLLMが動作するようになり、より身近な場所でAIの恩恵を受けられるようになります。

LLMエンジニアのキャリアパスの展望

現在、LLMエンジニアは非常に高い需要があり、その将来性も極めて明るい職種として注目されています。

この分野でのスキルを磨くことで、多岐にわたるキャリアパスが開けるでしょう。

まず、LLMを活用した革新的なサービスやプロダクトを開発するスタートアップでは、中心的メンバーとして活躍するチャンスが豊富にあります。

新しい技術を最前線で形にし、事業の成長に直接貢献できるでしょう。一方で、大企業ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が加速しており、LLMを導入して業務効率化や新規事業創出を進める中で、LLMエンジニアはその中核を担う存在として非常に重宝されます。

既存の巨大なシステムにAIを組み込むことで、企業全体の生産性向上に貢献できるはずです。

さらに、LLMのさらなる性能向上や、新たな応用分野の開拓に深く携わりたいのであれば、研究開発職という道も開かれています。

最先端の技術を追求し、未来のLLMを創造する醍醐味を味わえるでしょう。

また、LLMの専門知識を活かし、企業のLLM導入支援や、特定の課題解決のためのコンサルティングを行うフリーランスやコンサルタントとしてのキャリアも十分に考えられます。

自身の専門性を武器に、多様なクライアントの課題解決に貢献できる柔軟な働き方です。

LLM技術は日進月歩で進化しており、つねに最新情報をキャッチアップし、学び続ける姿勢が、この分野で成功するための鍵となります。

まとめ|最新のLLM・生成AI技術を理解し、ビジネスに活用しよう

本コラムでは、LLMの基本的な仕組みから、RAGやファインチューニングといった応用技術、具体的なユースケース、そしてローカル環境での構築方法、さらにはLLMエンジニアを目指すためのロードマップまで、網羅的に解説してきました。

LLMは、現代のビジネスや社会において、その可能性を広げ続ける強力なツールです。

ITフリーランスエンジニアの皆さんにとって、この最先端技術を深く理解し、自身のスキルセットに加えることは、今後のキャリアにおいて大きなアドバンテージとなるでしょう。

もちろん、LLMにはまだ課題も存在します。しかし、それらの課題を理解し、適切な対策を講じることで、私たちはLLMの恩恵を最大限に引き出すことができます。

LLMに関するよくある質問

Q1: LLMとChatGPTは何が違うのですか?

A: ChatGPTは、OpenAIが開発したLLMである「GPTシリーズ(GPT-3.5、GPT-4など)」をベースにした対話型AIサービスです。LLMは大規模言語モデルという技術そのものを指し、ChatGPTはその技術を利用して作られた具体的なアプリケーションの一つ、という関係です。

Q2: LLMの学習データはどのように収集されるのですか?

A: 主にインターネット上の公開されている膨大なテキストデータ(Webサイト、書籍、Wikipedia、ニュース記事、学術論文など)が利用されます。これらのデータは、Webクローリングや既存のデータセットから収集されます。

Q3: ハルシネーション(幻覚)とは何ですか?

A: ハルシネーションとは、LLMが事実に基づかない、でたらめな情報や誤った情報を生成してしまう現象のことです。LLMは確率的に次の単語を予測するため、学習データにない情報や曖昧な文脈では、誤った情報を作り出してしまうことがあります。

Q4: LLMのファインチューニングにはどのくらいのデータが必要ですか?

A: タスクの複雑性や元のLLMの性能にもよりますが、一般的には数百から数千の高品質なデータペア(例:質問と回答のペア)があれば効果を実感できることが多いです。データ量が多いほど、より高い性能が期待できますが、データの品質が最も重要です。

Q5: RAGとファインチューニングはどちらを優先すべきですか?

A: どちらも重要ですが、目的によって優先順位が変わります。
・RAGを優先→最新情報への対応、情報の正確性、ハルシネーションの抑制を重視する場合。
・ファインチューニングを優先→特定の業界用語や企業独自のトーン、スタイルをモデルに学習させたい場合。 多くの場合、両方をくみあわせることで最も高い効果が得られます。

Q6: ローカル環境でLLMを動かすにはどのくらいのスペックが必要ですか?

A: モデルのサイズによりますが、目安として、最低でも16GB以上のVRAMを搭載したGPU(例:GeForce RTX 3060以上)、推奨は24GB以上のVRAM(例:GeForce RTX 3090, 4090)が必要です。RAMも32GB以上が望ましいです。CPUで動かす場合は、より多くのRAM(64GB以上)と時間が必要です。

Q7: LLMの学習にかかる費用はどのくらいですか?

A: LLMの学習費用は、モデルの規模、データ量、学習時間、利用するクラウドサービスの料金によって大きく異なります。大規模な基盤モデルの事前学習には数百万ドルから数千万ドルかかることもあります。一方、ファインチューニングであれば、数千ドルから数万ドル程度で済む場合もあります。

Q8: LLMの倫理的な問題とは何ですか?

A: LLMの倫理的な問題には、バイアス(性別、人種などに関する偏見)、著作権侵害(学習データに含まれる著作物の問題)、プライバシー侵害(個人情報の流出リスク)、悪用(フェイクニュース生成、サイバー攻撃など)などが挙げられます。

Q9: LLMエンジニアになるために文系出身でも可能ですか?

A: はい、可能です。プログラミングや数学、統計学の基礎知識は必要ですが、これらは後からでも習得できます。文系出身者の強みである「言語感覚」「論理的思考力」「コミュニケーション能力」は、プロンプトエンジニアリングやビジネス要件の理解において非常に役立ちます。

Q10: LLMの将来性はどうですか?

A: LLMはまだ進化の途上にあり、その将来性は非常に明るいといえます。より高性能で効率的なモデルの開発、マルチモーダル化の進展、エージェントAIとしての機能強化など、今後もさまざまなブレイクスルーが期待されています。ビジネスにおける適用範囲もますます広がっていくでしょう。

本コラムで触れた関連する技術について詳しく知りたい方はこちらをご参考ください。

<関連コラム>

AI(人工知能)とは?活用例やつくり方を簡単に解説!AIエンジニアに求められるスキルは?

ディープラーニング(深層学習)とは?機械学習との違いを分かりやすく解説!

toiroフリーランスはフリーランスエンジニア向けのSHIFTグループ案件・求人情報サイトです。

プライムベンダーだからこそ、商流が深い多重下請けや不要な中抜きは一切なく、
高単価適正単価で業務委託案件をご案内しています。

アカウント登録後には、さまざまなサービスや機能を無料でご利用いただけます。

  • 登録面談にてキャリア相談や案件マッチングのコツ、市場トレンドや耳寄りな情報をお伝えします
  • 本サイトでは公開していない非公開案件をすべて確認可能
  • ご希望条件に合うエージェントおすすめの案件を随時ご案内

個人事業主やフリーランスで活躍されている方、これから目指している方、少しでもご興味がある方はぜひお気軽にお問い合わせください!