フリーランスとは?フリーランス初心者に向けてフリーランスの職種や案件獲得方法などを紹介
フリーランスになったばかりの方やこれからフリーランスを目指そうと考えている人のなかで、フリーランスという働き方についてまだ明確なイメージを持っていない人も多いのではないでしょうか。
2018年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表し、2019年4月から大企業での「働き方改革」を開始したことにより、日本でも少しずつ働き方の多様性が認められるようになってきました。
しかし、フリーランスはまだ新しい働き方なので、フリーランスのなり方や職種についてはこれから少しずつ変化していく可能性が高いでしょう。
本記事では、フリーランス初心者とフリーランスを目指そうと考えている人向けに、フリーランスの働き方やフリーランスになるために必要な準備をお伝えします。
また、フリーランス初心者に向けた案件獲得方法やフリーランスになるメリットやデメリットなどを詳しく解説します。
フリーランスとは
2021年3月26日に内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省の連名で発表された、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」におけるフリーランスの定義は次の通りです。
“「フリーランス」とは、実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、 自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者を指すこととする。”
この定義ではフリーランスは次の2つの条件を満たす人としています。
- 店舗を持たず従業員を雇用していない自営業主や一人社長
- 自分の経験や知識、スキルを活用して収入を得ている
この定義を踏まえて、フリーランスとは何かを適用される法律、混同されやすい言葉との違いからもう少し詳しく見ていきましょう。
適用される法律
雇用契約を結んで働く労働者が労働法によって保護されているように、フリーランスを守る法律も存在します。
2023年5月12日に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」は、フリーランスの取引適正化と就業環境の整備を目的に定められた法律です。
フリーランス・事業者間取引適正化等法が対象としているのは、企業を相手に仕事をしている「特定受託事業者」の取引です。
フリーランスの取引適正化のために、具体的には次のようなことが定められています。
項目 | 概要 |
取引条件の明確化 | ・取引条件を発注者と受注者の双方が記録として参照できる形で残す |
支払い期日 | ・フリーランスが業務を完了、納品してから60日以内に報酬を支払う必要がある |
禁止行為 | 一方的な受領拒否 一方的な報酬減額 一方的な返品 買いたたき 一方的な押し売り 金銭・役務などの利益提供の強要 不当な変更・やり直しの強要 ・上記の7つを禁止する |
項目 | 概要 |
正確で最新の内容での募集 | ・募集の内容は虚偽の表示をせず、常に正確で最新の内容にしなければならない |
育児や介護との両立 | ・フリーランスの申し出に応じて、育児や介護との両立ができるよう必要な配慮をしなければならない |
ハラスメント対策 | ・依頼者はフリーランスに対しても、従業員向けのハラスメント対策窓口を使えるように周知するといった配慮をしなければならない |
契約の中途解除の事前予告 | ・契約期間内に依頼者から契約解除をする場合は、原則として30日前までの事前予告が必要となる |
- 報告徴収、立入検査
- 指導、助言
- 勧告
- 勧告に従わない場合命令、公表
- 命令違反には50万円以下の罰金
フリーランスと在宅ワークの違い
民法では企業から業務を依頼され、その業務を行うことで報酬を得る場合の契約について、次の3種類を定めています。
項目 | 民法における記載箇所 | 概要 |
雇用 | 第623条 | ・労働者が雇用主のもとで労働に従事し、雇用主がその対価として賃金を支払う契約 |
請負 | 第632条 | ・業務の依頼を受けそれを完成させることで報酬を受け取る契約 |
委任 | 第643条 | ・業務の依頼を受けそれを行う(完成させるかどうかは問わない)ことで報酬を受け取る契約 |
フリーランスは請負契約や委任契約を結んで報酬を受け取る人で、在宅ワークは雇用契約を結んで家で仕事をする人と、フリーランスの中で在宅で仕事をする人両方を指す言葉であるという違いがあります。
フリーランスと個人事業主の違い
フリーランスは前の項目でもご紹介した通り「働き方」を示す言葉です。
一方個人事業主は個人で事業を営む人のことで、税法上の区分を示す言葉です。
そのため、個人事業主として仕事をするには税務署に開業届を提出する必要があります。
開業届についてはのちほど詳細をお伝えします。
フリーランスになるためにやるべきこと
フリーランスになるためには、事前にどのような準備をしておくのが望ましいのでしょうか。
「フリーランスになるためにやるべきこと」を5つご紹介します。
審査の申し込みをする
フリーランスは会社員と比較すると収入が不安定になるため、社会的信用が低くなる傾向になります。
そのため、審査が必要となる次のような手続きは独立前に済ませておくことを検討してもよいでしょう。
- 住宅ローンの審査
- マイカーローンの審査
- 賃貸住宅の入居審査
クレジットカードについては、フリーランスになったあとにも作成することができます。
フリーランスがクレジットカードの審査に通過する際のポイントなどを以下記事でまとめていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。
フリーランスはクレジットカードを作れる?クレジットカードの審査に通過するためのポイントやフリーランスにおすすめの法人カードなどを紹介
貯金をしておく
2023年にプロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会が発表した「フリーランス白書2023」で、フリーランスの現在の年収を聞いたところ、47.4%が年収400万円未満であることがわかりました。
一方2022年に厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の平均賃金は31.2万円だったので、12か月分の374.4万円が年収の目安となるでしょう。
参照:プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会│「フリーランス白書2023」
これらのことからフリーランスとして働いても、会社員として働く場合の年収を必ずしも超えられるとは限らないことがわかります。
「生活費が足りなくなった」などの状況にならないように、フリーランスとして独立する前には貯金などをしてから、フリーランスとして活動を始めてみてはいかがでしょうか。
家計の固定費を見直す
固定費とは定期的に支出される費用のことで、フリーランスになる前に見直しをしておきましょう。
固定費には例として次のような種類があり、それぞれ見直しのための料金シミュレーションツールがあります。
固定費の種類 | 料金シミュレーションツールの例 |
電気・ガス料金 | ・エネチェンジ |
スマホ料金 | ・NTT docomo料金シミュレーション |
保険料 | ・保険市場 保険シミュレーション |
副業としてやりたい仕事に取り組んでみる
やりたい仕事が決まっているならば、まずは独立前に一度副業として取り組んでみるのもよいでしょう。
副業でやりたい仕事に取り組むと、次のようなことなどが理解できます。
- 自分がその仕事に本当に向いているかがわかる
- 案件の探し方や営業のかけ方がわかる
- 自分に合ったスケジュール調整の方法がわかる
- 契約や請求書などフリーランスとして仕事をする上で必要な事務手続きがわかる
- 会社で働く場合とフリーランスとして働く場合のマインドの違いがわかる
副業としてやりたい仕事である程度まとまった金額を稼げるようになれば、フリーランスとして独立ができるという自信にもつながるでしょう。
開業届を提出する
フリーランスとして仕事をするなら、開業から1か月以内に税務署へ開業届を提出しましょう。
提出することで次のようなメリットなどがあるためです。
- 青色申告ができる
- 屋号で銀行口座の開設ができる
- 小規模企業共済に加入できる
- 確定申告の書類が郵送される
- 職業証明としても使える
開業届の詳しい作成・提出方法は国税庁のホームページから確認することができます。
開業届についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてはいかがでしょうか。
フリーランス・個人事業主の開業届の書き方を徹底解説!フリーランスエンジニアが開業届を提出するメリット・デメリットは?開業届の必要書類と提出先も紹介
フリーランスの職種の紹介
参照:公正取引委員会│「フリーランスの業務及び就業環境に関する実態調査(令和5年度)」
「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」で報告された、「フリーランスの業務及び就業環境に関する実態調査(令和5年度)」によると、フリーランスで多い職種は「事務」「講師・インストラクター」「デザイン・コンテンツ制作」「調査・研究・コンサルティング」「ライター」でした。
5つの職種の特徴をそれぞれご紹介します。
事務
フリーランスの事務の仕事は12%を超える人が行っており、多く行っている仕事の内容はデータ入力、文書入力、テープ起こし、反訳などでした。
講師・インストラクター
講師・インストラクターの仕事は10%を超える人が行っていました。
コロナ禍以来、対面での授業だけではなくビデオ通話や動画などを使った講義を取り入れる学校やスクールが増えてきており、対面ではなくても生徒に理解しやすい講義を行うことのできる講師やインストラクターが重宝されたことが要因として考えられます。
デザイン・コンテンツ制作
デザイン制作・コンテンツ制作の仕事は9%を超える人が行っており、「クリエイター」という名称で呼ばれることもあるでしょう。
デザイン制作とは印刷物やウェブサイトなどのデザインをする仕事で、コンテンツ制作とはウェブ上で発信する文章や画像、動画や音声などを作る仕事です。
実績が直接評価に結びついたり、ものづくりの達成感を味わえたりするのがクリエイターとして働くことの魅力のひとつです。
調査研究やコンサルティング
調査研究やコンサルティングは8%程度の人が行っています。
研究者になるには学部生時代から研究に取り組み、大学院で修士号や博士号を取得する必要があります。
一方コンサルティングは自分の持つ専門分野の知識や経験を活かし企業の課題を解決する仕事になります。
どちらも常に自分の知識を更新し、学び続けるのに抵抗がない人に向いているといえるでしょう。
ライター
ライターは7%程度の人が行っている職種です。
PCとインターネット環境の整備程度で始められるため、フリーランスになるにあって比較的準備することが少ないようです。
SEO技術やインタビューの技術、セールスライティングの技術など、他のライターにはない技術を身につけると、他のライターと差別化することができ、仕事の依頼も増える可能性があります。
フリーランス初心者に向けた案件獲得方法の紹介
フリーランス初心者の案件獲得方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
「フリーランス白書2023」のデータを基に5つご紹介します。
参照:プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会│「フリーランス白書2023」
人脈
「フリーランス白書2023」では、「知人の紹介なども含む人脈」から案件を獲得したことのある人が70.6%という結果でした。
案件を獲得するためには信頼を得る必要があります。
面識のある人物であれば、ある程度信頼関係が構築されている場合があるため、フリーランス初心者でも案件を獲得しやすいのではないでしょうか。
過去や現在の取引先
「過去や現在の取引先」から案件を獲得したことのある人が64.7%でした。
「人脈」と同様にある程度の信頼関係が構築されており、自身のスキルや実績なども理解してくれている場合があるため、案件獲得のひとつの方法として実践してみてはいかがでしょうか。
自分自身の広告宣伝活動
「自分自身の広告宣伝活動」で案件を獲得したことのある人が31.6%でした。
ホームページやSNSを使用することで自分のことを宣伝できるので、仕事についてのホームページやSNSアカウントなどを作ってクライアントに呼びかければ、依頼が来る可能性があります。
フリーランス初心者の方も利用を検討してみてください。
エージェントサービスの利用
「エージェントサービス」を利用して案件を獲得している人が25.8%という結果でした。
エージェントサービスとは、フリーランスを対象に案件の紹介や契約交渉、案件稼働後のサポートなどを行ってくれるサービスです。
エージェントが報酬ややりたい仕事などの条件に合わせて仕事を紹介してくれるので、初心者でも希望に近い内容の案件が見つかるでしょう。
toiroフリーランスは、SHIFTグループがプライムとして参画している独自案件をフリーランスエンジニア向けに紹介する唯一のプラットフォームサービスです。
エージェントによるサポートもありますので、ご利用を検討してみてはいかがでしょうか。
クラウドソーシング
「クラウドソーシングサイト」で案件を獲得したことのある人は18.8%になります。
クラウドソーシングサイトとはインターネットを通じて不特定多数の人に仕事を発注できるウェブサイトのことで、ウェブサイト上で条件交渉を行い、契約後に仕事を行います。
依頼者と受注者の双方を評価する仕組みが搭載されたクラウドソーシングサイトもあるため、フリーランス初心者の人でも信頼できる依頼者が見分けやすいでしょう。
ここまでフリーランス初心者に向けた案件獲得方法をお伝えしました。
以下の記事では、案件を探す・獲得する際の注意点をまとめています。
エンジニア以外のフリーランスの方も参考になる情報があると思いますので、気になる方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
フリーランス初心者が押さえておくべきフリーランスのメリット・デメリット
フリーランスとして働くことにはメリットがある一方、デメリットもあります。
こちらでは、「フリーランス初心者が押さえておくべきフリーランスのメリット・デメリット」をご紹介します。
フリーランスとして働くメリット
参照:内閣官房日本経済総合事務局│ フリーランス実態調査結果
内閣官房日本経済総合事務局が発表したフリーランス実態調査の結果を基に、フリーランスとして働くメリットを3つご紹介します。
・仕事上の人間関係
フリーランス実態調査の結果では、仕事上の人間関係に「非常に満足」「満足」と回答した人が合計85.7%でした。
フリーランスとして働くと、自分で案件を選ぶことができるため、相性の良いクライアントと仕事ができる可能性があります。
また基本的には個人で仕事を完結させるため、会社員とは異なり、同僚や上司などといったチームメンバーとの人間関係に頭を悩ませることも少なくなります。
これらのことから、仕事上の人間関係の良さはフリーランスとして働く人にとって大きなメリットだといえるでしょう。
・就業環境
フリーランス実態調査の結果では、就業環境(働く場所や時間など)に「非常に満足」「満足」と回答した人が合計82.9%でした。
フリーランスの場合、働く場所や時間を比較的自由に決められるため、満足度の高い結果につながったと考えられます。
・ワークライフバランス
フリーランス実態調査では、「プライベートとの両立」に「非常に満足」「満足」と回答した人が81.8%でした。
働く時間が比較的自由に決められることに加え、仕事の合間に家事をするなどといった柔軟な時間の使い方もできるので、ワークライフバランスが取りやすいことはメリットだといえるでしょう。
フリーランスとして働くデメリット
フリーランス実態調査の結果を基に、フリーランスとして働くデメリットも3つご紹介します。
・収入が安定しない
フリーランス実態調査で、フリーランスとして働く上での障壁を聞いたところ、「収入が少ない・安定しない」と回答した人が59.0%いました。
フリーランスとして働いていると不景気やクライアント企業の業績が悪くなったなどの原因により仕事の契約が終了するなどの理由から、収入を安定させることは難しいです。
しかし、積極的に営業をかけたり、長期契約の仕事を獲得したりするなどの方法で、収入を少しずつ安定させていくことは不可能ではないでしょう。
・人とのつながり
フリーランス実態調査で、フリーランスとして働く上での障壁として「1人で仕事を行うので、他人とのネットワークを広げる機会が少ない」を挙げた人は17.2%でした。
フリーランスは人間関係のわずらわしさは少ないものの、新しい人間関係を広げていくことが難しい場合があります。
少しずつでもコミュニティに参加したり、SNSでコミュニケーションを取ったりと、新しいつながりを作る努力をしてみてはいかがでしょうか。
フリーランス同士の交流を行うことができる場としてフリーランス交流会があります。
以下の記事ではフリーランス交流会について紹介していますので、気になる方は参考にしてみてください。
フリーランス交流会に参加するメリットや事前に準備するべきこと、意識するべきことは?フリーランス交流会の探し方や代表的なフリーランス交流会も紹介
・案件獲得
フリーランス実態調査で、フリーランスとして働く上での障壁として「仕事がなかなか見つからない」を挙げた人は15.3%でした。
フリーランスとして仕事を探す場合、案件自体はたくさんあるものの自分の希望する条件と合わなかったり、挑戦してみたい案件にスキルが足りず断られてしまったりといったことは起こります。
また初心者の場合、営業になかなか慣れずチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。
このような場合、今までしていなかった案件獲得方法に挑戦したり、少しずつでもよいので営業をかける回数を増やしたりすると改善される可能性が高まります。
ITフリーランスを仕事にするメリットとデメリットについても知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
まとめ
本記事では、フリーランス初心者とフリーランスを目指そうと考えている人向けに、フリーランスの働き方やフリーランスになるために必要な準備をお伝えしました。
また、フリーランス初心者に向けた案件獲得方法やフリーランスになるメリットやデメリットなどを詳しく解説しました。
フリーランスとは自分の経験や知識、スキルなどを活用して収入を得る働き方で、初心者のうちから収入を安定させることが難しい反面、ワークライフバランスや人間関係の良さなど、メリットも大きい働き方だといえるでしょう。
本記事を参考にして、フリーランスとして少しずつ自分に合った仕事や働き方が見つかれば幸いです。