ウェブデザイン技能検定の概要や特徴・難易度を徹底解説!資格取得のメリットを確認。独学での学習方法とおすすめの書籍も紹介
技能検定という国家検定制度があります。全部で130種類の試験がありますが、実施主体は地方自治体で111種、指定試験機関で19種です。
「ウェブデザイン技能検定」は後者のグループで厚生労働大臣が指定する機関で実施されます。運営者はNPO法人インターネットスキル認定普及協会です。
「ウェブデザイン技能検定」という制度の骨格、受検対策、合格後の方向性などについて幅広く解説します。
ウェブデザイン技能検定の全体像
この検定により得られる資格は国家資格です。開催地区や出題範囲など広範な決まりがあり、詳しく公開されています。項目毎にチェックしておきましょう。
国家資格
この検定制度は職業能力開発促進法という法律の第47条第1項の規定に基づくものです。
労働者の能力開発とその向上・促進に資する目的で1969年に制定されました。
実務遂行能力の検定と公証により、働く人の地位向上を目指す法律と理解して下さい。
ウェブデザインに関わるスキル・知識が問われる学科・実技試験を経て、合格者は「ウェブデザイン技能士」として認定されます。
試験は1級から3級まであり合格証書は1級が厚生労働大臣から、2級・3級はインターネットスキル認定普及協会理事長より付与される仕組みです。
運営主体
ウェブデザイン技能検定の運営は「NPO法人インターネットスキル認定普及協会」が担っています。
元々は都道府県知事が国の実施計画に基づいて行うものでした。
2001年より施行された改正職業能力開発促進法等により指定試験機関で実施できることとなりました。
指定試験機関で実施される検定は、ウェブデザイン技能検定をはじめとして19種類あります。主なものは次の通りです。
- NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のファイナンシャル・プランニング
- 公益社団法人 日本ブライダル文化振興協会のブライダルコーディネート
- 日本百貨店協会の接客販売
- 一般社団法人全日本着付け技能センターの着付け
- 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のビル設備管理
開催地区
検定試験の開催地区は級によって変わります。1級ですと東京23区内、大阪市、福岡市で開催されます。
2級は北海道の札幌市・小樽市、行田市、仙台市、横浜市、沖縄の浦添市など全国9都市です。
3級は2級の地区に加え金沢市、岡山の倉敷市・岡山市、佐賀市、鹿児島市など14都市になります。
但し受検者数により開催地区が変わることもありますし、団体受検の場合は他の地区で行われる場合もあります。
特に団体受検ではPCの設置や作業スペースなどの基準をクリアすると新たな会場として認定されることもあるのでこの地区だけとは限りません。
開催スケジュール
2級・3級は年4回開催日程が組まれます。1級は学科と実技が年1回ずつですが学科に合格しないと実技は受検できません。
試験時間も級によって異なります。1級は学科90分、実技180分です。それ以外にペーパー実技が60分組まれます。
2級は学科60分、実技120分、3級では学科45分、実技60分という時間割です。
出題形式と試験用PCの使い方
学科の出題形式ですが、マーク方式の筆記試験となり、多肢選択法、真偽法が採用されています。実技は課題選択式です。
試験に使うPCは主催者により用意されます。テキストエディタやブラウザ、使用する言語などは予め主催者より案内される形式です。
試験に使う素材は実施に際して配布されますが、保存方法やフォント、スペースなどの使い方について細かく指示がなされると考えて下さい。
合格基準
配点は学科、実技どちらも100点満点で合格ラインは70点です。但し実技の方は作業分類毎に最低60点を取らなければなりません。
出題範囲
インターネットスキル認定普及協会は公式サイトにて出題範囲を公表しています。詳細はサイトにて確認できますが学科試験は10項目に分かれています。
これらの項目は1~3級共通です。
- インターネット概論
- ワールドワイドウェブ法務
- ウェブデザイン技術
- ウェブ標準
- ウェブビジュアルデザイン
- ウェブインフォメーションデザイン
- アクセシビリティ・ユニバーサルデザイン
- ウェブサイト設計・構築技術
- ウェブサイト運用・管理技術
- 安全衛生・作業環境構築
出典元:https://www.webdesign.gr.jp/wdsc/pdf/20190401.pdf
この内、ワールドワイドウェブ法務では1級・2級共「インターネットに関する法令」が付加されます。
又、ウェブデザイン技術では「サイバーサイドアプリケーション」が両級共通で加わります。
同様に、ウェブインフォメーションデザインでは「データベース連携とサイトデザイン」が付け加えられていますから勉強に際して注意が必要です。
一方、実技試験は次の2項目です。
- ウェブサイト構築
- ウェブサイト運用管理
出典元:https://www.webdesign.gr.jp/wdsc/pdf/20190401.pdf
こちらも各級共通です。
技能検定委員
検定試験は地方自治体若しくは指定試験機関が主体となって実施されます。検定委員もそれぞれ選任されます。
地方自治体の場合は職業能力開発協会又は中央職業能力開発協会が主導します。指定試験機関で検定委員の選任を行うのは機関自身です。
検定委員は出題範囲の設定、試験や実技の審査・採点といった役目を負っています。
ウェブデザインに関して大学以上の教育機関に於ける学識経験者、豊富な実務経験のある1級ウェブデザイン技能士等の中からの選任です。
ウェブデザイン技能士という資格に関すること
ウェブデザインという仕事の内容、資格取得の意味などについて解説します。
そもそもウェブデザインとは
ウェブデザインとは、ネット上に掲載して情報発信するためにウェブサイトの設計を行う仕事です。PCや携帯端末が情報ツールとして利用されます。
ウェブデザインという仕事はネットワーク環境や周辺機器との相性などへの配慮を必要とする高度に専門的な仕事です。
ネットユーザーの要望も多様化しており、専門性の高い人材の確保は益々重要性を増すものと予想されます。
技能士資格取得のメリット
ウェブデザイン技能士といっても1級から3級まであり、取得する意味はそれぞれ異なります。
3級は実務経験や教育履歴を問われない、誰でも受検できるレベルですから、ウェブデザインに関する入門編との位置づけです。
一方2級では最低2年以上、1級となると大学卒業後3年、各種学校卒で5年といった実務経験が受検資格に定められています。
資格保有が採用条件に直接結び付いている企業は殆ど無いようです。ウェブデザインの仕事に就く上で必須の資格ではありません。
ただ、1級まで取得していればウェブデザインの力やWebページを構築する実務能力が備わっていることの客観的証明になります。
受検に伴う手続き
受検手続きのポイントを押さえておきましょう。特に受検資格は規定がやや複雑ですからしっかり把握しておくことが大切です。
申請
各試験日に対し、概ね2週間の受検申請期間が設けられています。受検を希望する方はインターネット、郵送、いずれかの方法により申請して下さい。
インターネットの場合は基本情報を事前登録し、受検資格の申請・受検する級の選択などを行ってから金融機関での受検料決済へと進めます。
郵送では、受検料の振り込み、申請書類の記入・送付という流れです。送付は簡易書留に拠ると決められています。
申請書類は公式サイトからのダウンロードが可能です。
受検料
各級毎の受検料は次の通りです。
- 1級:学科7,000円、実技25,000円(ペーパー実技を含む)
- 2級:学科6,000円、実技12,500円(35歳未満は7,000円)
- 3級:学科5,000円、実技5,000円(35歳未満は3,000円)
因みにペーパー実技とは書面で指示された設問に対して作業を行い、解答用紙に記入する形式の試験のことです。
設問の例ですが、「提案依頼書に沿ってウェブサイトのサイトマップを作りなさい」「ウェブサイトの遷移図を作成しなさい」などの課題が出題されます。
尚、受検料は非課税扱いです。
受検資格
受検資格も各級毎に定められています。それぞれの資格要件を確認しておきましょう。
3級には資格についての厳格な定めが無く、ウェブの作成や運営に既に従事している人、これからしようとする人であれば誰でも受検できます。
次に2級では次の要件のどれかを満たす必要があります。まず2年以上ウェブ作成や運営の実務に携わった経験のある人です。
各種学校卒業又は普通職業訓練を終了した人も要件に合致します。この各種学校とは職業高校・短大・高専のことです。
大学卒業又は高度職業訓練修了者で協会が定めたカリキュラムを履修した人も該当します。3級の技能検定合格者も資格対象です。
1級は更に厳格になります。次の要件のどれかを満たすこと、というのは2級と同じです。
まずウェブ作成・運営実務経験は7年以上が必要となります。
各種学校卒業若しくは普通職業訓練修了者の場合はその後5年以上の実務経験を有することとされています。
大学を卒業し協会が定めたカリキュラムを履修した人の場合は、その後3年以上の実務経験を有することが必要です。
高度職業訓練を終了した人も要件を満たしますが、その後1年以上の実務経験が求められます。
2級の技能検定合格者でその後2年以上の実務経験を有する人も対象です。
尚、1級の実技試験は1級の学科試験合格者しか受けられません。その学科試験合格の日より2年以内のものと限定されています。
団体受検
ウェブデザイン技能検定には団体受検という制度があります。受検しようとする団体が一定の条件をクリアすれば一括申し込みが可能です。
独自会場と公開会場という2つの方式があります。
独自会場
受検者を10名以上まとめて申し込み、その団体が設置する会場で独自に受検することができます。独自会場の設置基準は次の通りです。
- 受検者1人に1台のキーボード・マウス付きのPCを用意すること。
- データ保存ができるPCであること。
- ネットワーク機能が無くてもスタンド・アローンでの操作が可能であること。
- OSはWindows7又はOSX10.11以降であること。
- 指定ソフトのインストールができること。
- アプリケーションの同時動作に耐えられること。
- 一定の受検者間のスペースを確保できること。
これらの基準に合致しているか、主催者の審査を受けることとなります。最低必要受検者数は10名以上です。責任者の設置も必要です。
公開会場
主催者であるインターネットスキル認定普及協会が設置した会場で受検する方式です。会場を選ぶことはできません。
5名以上の受検者数が必要です。責任者の設置は不要となります。
団体受検のメリット
団体受検をした場合、受検会場への移動の負担が軽減されます。
独自会場であれば使い慣れたPCを使うことが可能です。個別の申し込み手続きは必要ありません。
試験の難易度
ウェブデザイン技能士は業界では唯一の国家資格です。3級は誰でも受検できるため、合格率も60%から70%と高めに推移しています。
ウェブサイト作成に関する基礎的知識があれば、実務経験が無くても合格は充分可能です。
一方、2級では30~40%、1級は10~20%と難易度もかなりアップします。
ウェブデザインというタイトルが付されていますが、サイト作りのデザインスキルやコーディングの他に広範な技術力・知識が要求される資格です。
サイトを機能させるためのネットワーク関連知識やシステム構築に関わる技術力が求められます。
2級・1級では受検資格に於いて豊富な実務経験が必要ですから、決して易しい試験ではありません。
特に1級のハードルはかなり高いものと認識して下さい。
試験対策
試験に備えるには公開されている出題範囲を吟味した上で、これも公開されている練習問題を解き進めることが重要です。
公式サイトからのダウンロードができますから入手しておきましょう。実際に出題された過去3回分の試験問題も同様に公開されました。
この措置は2011年10月の総務大臣勧告により「受検者の負担軽減を図る」目的でなされたものです。
過去の試験問題には同時に正答も示されています。
問題に挑戦した後のチェック用に活用できますので、こちらもダウンロードして必ず学習しておくべき重要ポイントです。
出題傾向と勉強方法
ウェブデザイン技能検定では過去の試験問題によく似た問題が出題されるというのが定説になっています。
公表されている過去3年分の試験問題は重要な学習課題であり、それは学科試験だけでなく実技に於いても同様です。
実技試験は6問出題された内から5問を選び、3問正解すれば合格ラインです。
繰り返しPCで練習しておけば大丈夫、とは合格者の方々の一致した感想です。
過去問を解いて解答の突き合わせをしっかり積み重ねておくことが合格への一番の近道と言えるでしょう。
参考書・教材
公式サイトでは受検に役立つ参考書を紹介しています。主なものをピックアップしてみましたので独学で勉強を進める時の教材として参考にして下さい。
受検対策参考書
次の3冊をお勧めします。
- ウェブデザイン技能検定過去問題集(制作:富士通エフ・オー・エム株式会社)
- ウェブデザイン技能検定-対策ガイドブック及び問題集(制作:株式会社クリーク・アンド・リバー社)
- 誰でもわかるウェブデザイン技能検定対策講座(アテイン株式会社)
ウェブデザインスキルの学習参考書
こちらも同様に3冊ほどご紹介しておきましょう。
- よくわかるHTML5+CSS3の教科書(マイナビ出版)
- ゼロからわかるHTML&CSS超入門(技術評論社)
- Web標準の教科書(秀和システム)
書籍以外に「ウェブデザイン技能検定対策講座」というトレーニング用のDVDが教材として販売されています。
アテイン株式会社が通信販売で扱っていて、実技試験の演習には効果的との評判です。
尚、受検対策参考書のガイドブック・問題集は試験等級毎に分かれていますから、購入される場合は注意願います。
セミナーなど
受検対策としては独学以外の勉強方法もあります。代表的なものは短期セミナーを受講することです。頻度にもよりますが3か月程度のコースが一般的です。
ウェブデザイン関係の専門学校に通うという方法もあります。この場合、通学制スクールとオンラインスクールという2つの選択肢に分かれます。
通学制スクールは文字通り学校に通うスタイルです。時間と場所の制約はありますが、わからない部分は先生にすぐ聞けるという利点があります。
同じ目的を持った生徒同士の交流が深められるというメリットもあるでしょう。
対するオンラインスクールはネットワーク通信環境を経由して受講するものです。
授業は一方通行となり、疑問点が生じた時に自己解決しなければなりません。
一方で好きな時間に遠隔で受けられてしかも低コスト、というメリットがあります。
それぞれの長所・短所を吟味して、自分に合ったやり方を選択して下さい。
合格者の声
ウェブデザイン技能検定に合格した方々の声をネット上で知ることができます。印象的なものを集めてみました。
- 合格への王道は過去問と丁寧に向き合うこと。
- 就職に際しての有利・不利とかは特に気にはならない。
- 試験の難易度は今後上昇するかも知れない。
- 3級はそれほど難しくないと言われるが、国家資格という言葉に誇りを持てる。
- 受検勉強を通じて自分の価値を高めることができた。
総じて前向きに捉えている方が多いという印象です。
ウェブデザインの業界を取り巻く環境を振り返ってみた時に、デザイナーのスキルに対する需要が確実に増加していることを肌で感じているからでしょうか。
ウェブデザイナーに贈る言葉
ウェブデザインの業界は技術革新の著しい世界です。デザイナーとしてのスキルは万国共通の言語であり、国内限定のものではありません。
その強力な武器を携え、世界に活躍の舞台を求めて大きく羽ばたいて欲しいと願っています。