シンクライアントとは?シンクライアントの特徴をわかりやすく解説!OSごとの選び方もチェック
シンクライアントという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
- シンクライアントの特徴とは?
- シンクライアントの種類は?
- シンクライアントのメリット・デメリットは?
- シンクライアントはどう選べば良い?
- セキュリティ対策に良いと聞いたが本当なのか?
そんな疑問を解消するべく、この記事ではシンクライアントについて深く掘り下げて解説します。
気になる人はぜひご一読ください。
シンクライアントとは
ここでは、シンクライアントの基礎情報を説明します。
シンクライアントとは、サーバー側が処理のほとんどを担うことでクライアント端末は最低限の処理しかおこなわないシステムのことを指します。
名称の由来
シンクライアントは英語で「Thin Client」と書きます。
「Thin(薄い・厚みがない・痩せた)」と「Client(コンピューターのユーザー端末)」をかけ合わせてつけられました。
注目を浴びている理由
近年、シンクライアントはとても注目を浴びています。
その理由には「セキュリティリスクを回避するための対策」「コストの削減」などがあります。
シンクライアントの特徴
この項目では、シンクライアントが持っている特徴を見てみましょう。
シンクライアントを導入していない場合、クライアント端末にはOSやアプリケーションなどの情報が詰まっている状態です。
シンクライアントを利用する場合、そういった情報を全てサーバー側が管理することになります。
そのため、クライアント端末側は最低限の機能のみを持つことになるのです。
シンクライアントの種類①実行方式
シンクライアントの実行方式には、いくつか種類があります。
ここでは、そんなシンクライアント実行方式の種類について解説しましょう。
ネットブートタイプ
OSのイメージファイルを使用し、クライアント端末で起動して操作します。
通常のパソコンと同じようなイメージで操作できるのは便利ですが、転送データが大きくなるのがネック。
ネットワークブートタイプでシンクライアントを実行するなら、端末性能の高さとネットワーク帯域の広さが必要です。
画面転送タイプ
画面転送タイプには3つの種類があります。
画面転送タイプ①プレゼンテーションタイプ
サーバーベースコンピューティングタイプともいいます。
ターミナルサーバーでアプリケーションを動かします。そのアプリをいくつかのクライアント端末で共有。
サーバーで全ての処理をおこなうので、クライアント端末側では入力(キーボードやマウス)情報を転送することとサーバーから受け取る画像情報を転送することだけです。
画面転送タイプ②仮想PC(VDI)タイプ
高いスペックのサーバー1台で、ハイパーバイザー(VMware vSphereなどの仮想基盤)を使って複数の仮想デスクトップをまとめます。
クライアント端末それぞれの環境を独立させることが可能です。
画面転送タイプ③ブレードPCタイプ
「ブレードPC」をマシンルームなどに置き、各ブレードPCでクライアントOSを動かすタイプです。
クライアント端末は紐付いたブレードPCに接続します。
シンクライアントの種類②端末
シンクライアント環境の種類についてわかったところで、次はシンクライアント端末の種類をチェックしましょう。
それぞれが持つ特色についてもお伝えしますので、シンクライアントを選ぶ1つの参考として確認してみてください。
デスクトップ
OSは独自OS、Windows10 IoT、Linux。
デスクトップパソコン型のシンクライアント端末です。
デスクトップ型ではありますが、さほど大きくはありません。省スペースです。
オフィスでの利用を想定しています。
モバイル
OSは独自OS、Windows10 IoT、Linuxなど。
ノートパソコン型のシンクライアント端末。
有名な端末にはDell社が出している「Wyse 5470」、Atrus社が販売している「Atrust mt182」など。
在宅勤務の人にも適したシンクライアント端末です。
ソフトウェアインストール
OSはLinux。
シンクライアント専用端末ではないパソコン(ファットクライアント)に、ソフトウェアをインストールしてシンクライアント端末化する方法です。
USBデバイス
OSはLinux。
ソフトウェアインストールタイプと同じく、ファットクライアントに挿入して、シンクライアント端末にする方法です。
差し込むだけでシンクライアント端末化できる簡単さが魅力。
ただし、改ざん性に耐えられる強さや暗号化の強さなどを備えたファットクライアントでないと、セキュリティに不安が出て来ます。
在宅勤務者やモバイルを利用する人向け。
シンクライアントとファットクライアント
「シンクライアントの種類②端末」で登場した、シンクライアントとは逆の意味を持つ「ファットクライアント」のことをご存じでしょうか。
ファットクライアントはシンクライアントと真逆の意味を持つシステムです。
シンクライアントは必要最低限の機能しか端末に置かず、サーバー側でOS・アプリケーション・情報などを管理するシステムだということはおわかりのはず。
ファットクライアントはそれとは逆に、端末側に全ての機能を内包している状態のことをいいます。
「Fat(厚い、太った)」と「Client(コンピューターのユーザー端末)」という単語を合わせて名付けられました。
要は、通常のパソコンは全てファットクライアント端末ということです。
シンクライアントのメリット
シンクライアント製品を使えば、どういうメリットを得られるのか…。
この項目では、シンクライアントの良いところをピックアップしました。
セキュリティリスク対策ができる
クライアント端末でデータを保存しないため、個人がアプリケーションをインストールしたりもできないのがシンクライアントです。
そのため、セキュリティリスクを回避する方法として非常に有効といえるでしょう。
万が一、シンクライアント端末を紛失してしまったとしても、端末自体にはデータなどの情報が入っていません。
情報を抜き取られたり機密情報が漏洩してしまうことを防ぐことが可能です。
管理がしやすい
シンクライアントを導入すれば、サーバー側でOS、アプリなどをまとめて管理できます。
そのため、端末の設定をおこなうために現地へ向かう…という手間を大幅に省くことが可能です。
故障時もシンクライアント端末を交換すれば済むので、すぐに作業再開ができます。
耐久性がアップする
壊れやすい部分が少ないのがシンクライアント端末の特徴です。
そのため、故障してしまう確率が通常よりも低くなります。
サーバーを増設すればアプリのパフォーマンスが上がる
通常なら、アプリケーションの性能を上げようと思ったら端末を高スペックにしなければならなかったりします。
しかし、シンクライアントを導入していれば、サーバーを増やすだけでアプリケーションのパフォーマンスを上昇させることが可能です。
シンクライアントの注意点
この項目では、シンクライアントを使うにあたって注意してほしい事項をお伝えします。
初期費用がかさむ
シンクライアント端末にはデータの保存やアプリケーションインストールなどがおこなえません。
そのため、シンクライアントを利用する時はシンクライアント環境が必要です。
パソコン環境を整えるコストよりも、システム全体の導入コストが高額になる恐れも。
オフラインでは利用不可
クライアント端末は、サーバー側に存在する画面を動かすことになります。
サーバーにアクセスするためにはネットワークが必須。
なので、基本的にネットワークが繋がっていない状態の場合は利用することが不可能です。
サーバーに対する負荷
ユーザーごとに割り振られていた機能が全てサーバーに集約するのがシンクライアントというシステムです。
これはメリットにもなり、デメリットにもなる諸刃の剣。
集まった機能を保存しておくところはサーバーです。
そのため、サーバーに大きな負担がかかってしまいます。
場合によっては、ファットクライアントならスムーズに動いていたアプリケーションも重くなってしまう事態も考えられるでしょう。
シンクライアントをOSで選ぶ①メーカーについて
シンクライアントの選び方には色々ありますが、ここからはOSで選ぶ方法をご紹介します。
どのOSにどんな機能が搭載されているか、しっかり確認してください。
まずはシンクライアントOSを提供しているメーカーについて確認しましょう。
Dell
後ほど詳しく紹介する、独自OS「Dell Wyse ThinOS」を提供しています。
HP
ソフトウェアもハードウェアもお任せあれ。どちらも独自開発している企業です。
HP製のシンクライアントなら無料で使える独自機能「HP Easy Shell」がポイント。
アセンテック
USBデバイスのシンクライアント端末などを提供している企業です。
独自に開発したソフトウェアインストールタイプのシンクライアントもあり。
Atrust
創業は2007年と比較的新しい企業です。
Linuxを基にして作った専用OS「Atrust OS」など技術力の高さには定評があります。
シンクライアントをOSで選ぶ②Dell Wyse ThinOS
Dell社がまだWyse社だった頃にいたエンジニアが「Microsoft」や「Citrix」などの企業と技術の提携を結んで開発した独自OSになります。
専用の管理ソフトが要らないという手軽さと、端末を起動する時間が非常に早い(約10秒ほど)という特徴を持っています。
また、セキュリティ対策をおこなわなくても良いというのは導入する上で大きなメリットとなるでしょう。
大規模な導入をおこなう場合も、管理工数を最低限に抑制して導入することができます。
シンクライアントをOSで選ぶ③HP ThinPro/Smart Zero
HP社が提供している独自OS。
「Smart Zero」と「Thin Pro」の2つをモード切り替えしながら使います。
「Thin Pro」はカスタマイズ性が高く、マルチセッションが可能。利用できる接続プロトコルが豊富です。
「Smart Zero」は同時に利用できる接続数は1つ。「仮想環境に接続する」という目的を達成するのに適しています。
シンクライアントをOSで選ぶ④Resalio Lynx OS
アセンテックが提供する独自OS。
最新Windowsパソコンはもちろん、リース切れしたパソコンやスペックが弱いパソコンなどもシンクライアントとして使えます。
シンクライアントをOSで選ぶ⑤Aturst OS
Aturst社が開発したシンクライアント専用OS。
「Ubuntu」を基にして開発されています。
多言語に対応していること、カスタマイズが柔軟にできること、導入コストが安上がりなことなどが注目ポイントです。
シンクライアントの導入
この項目では、シンクライアントを導入することを決めたら、どう動けば良いのかについて解説します。
- 目的を明確に設定する
- 対象となる業務を選びシステム要件を定義する
- システム設計をおこなう
- 最低限の構成でテスト環境を作って検証する
- 導入する
- 運用ルールや管理ルールを設計する
これがシンクライアントの導入に関する一連の流れです。
目的を明確に設定する
セキュリティ対策として導入するのか、コストを少しでも減らすために導入するのか。
シンクライアントを導入する目的を明確にします。
現状を理解し、どういった課題があるかもあぶり出しましょう。
対象となる業務を選びシステム要件を定義する
シンクライアントにする業務を選んで、システムの要件定義をしましょう。
システムの外枠を作ります。
全ての業務をシンクライアントにすると、莫大なコストがかかってきます。
そのため、まずは必要最低限の業務のシンクライアント化をおこなうと良いでしょう。
システム設計をおこなう
ネットワークの構成や全体のシステム設計をおこないましょう。
最低限の構成でテスト環境を作って検証する
テスト環境(最小構成)を作り、実際に使用してみて感じた問題点などを洗い出します。
導入する
導入する際は、業務への影響を最小限で抑えるため範囲を区切りつつ、グループによって切り替えるなどすると良いでしょう。
運用ルールや管理ルールを設定する
シンクライアントを稼働させるにあたって、運用・管理ルールなどを設定します。
まとめ
以上、シンクライアントに興味を持っている人全てに知っておいてほしい情報をお届けしました。
シンクライアントを取り入れることでパソコンの運用・管理の効率化、そしてコストダウンを実現できます。
デスクトップ型のシンクライアント端末が良いか、モバイル型が良いのか。
はたまたUSBデバイス型がベストなのかは、ユーザー環境が置かれた状況によって異なります。
シンクライアント端末だけでなく、実行方式も環境によってベストな実行方式は変わってきます。
取り入れるメリットや注意する点をよく確認し、ベストなシンクライアント製品の導入を検討してみてください。
もし迷っているようなら、気になるシンクライアント製品の資料をいくつか取り寄せてみてはいかがでしょうか。