ローカル5Gとは?5G、Wi-Fi 6とはどう違う?ビジネスに与える影響や活用方法を紹介!
2020年から、日本でも5Gの商用サービスがスタートしました。
この記事では、そんな5Gサービスの中でも総務省が満を持して公表した「ローカル5G」についてご紹介します。
- ローカル5Gとは何なのか
- ローカル5Gは5G、Wi-Fi 6とどう違うのか
- ローカル5Gのメリット・注意点
- ローカル5Gを使うことを検討してほしい人
- ローカル5Gの気になる料金
- ローカル5Gを活用する企業
- ローカル5Gの活用方法
- ローカル5Gの申請や免許について
こうしたローカル5Gについての様々な情報を集約しています。
この記事を読んで、ぜひローカル5Gについての知識を深めましょう。
ローカル5Gとは
ローカル5G(ローカル第5世代移動通信システム)とは、5G環境を企業などが自営網で構築して活用するというものです。
通信事業者が全国的に展開する5Gとは異なり、自分たちだけのネットワークを構築することができます。
5Gについて
そもそも、5Gとはどういうものなのかについてご説明します。
5Gとは第5世代移動通信システムのことです。
5Gには「速い」「容量が大きい」「遅延が少ない」「同時に多数のデバイスと接続することが可能」など特徴があります。
4Gとの接続可能デバイスの差は10倍
5Gは1つの基地局につき100万という膨大な数のデバイスが接続することができます。
これは4Gの10倍という驚異的な数値。
しかも「低遅延」という特徴もあるため、ビジネスに活用できるのでは…ということで、総務省が構想したのが「ローカル5G」でした。
様々な企業が注目している
ローカル5Gを主導する総務省は様々な企業にヒアリングをおこなっています。
その一部が下記の企業です。
- 情報通信に関わる企業
- 情報端末製造メーカー(ノキアなど)
- 電機メーカー(東芝、Panasonic、NECなど)
そういった企業と協議しながら、未使用周波数帯域の中で新しく利用できる割当枠を「ローカル5G帯域」として定めました。
コンセプト
総務省が打ち出した「ローカル5G」のコンセプトは下記のとおりです。
- 5Gを使用する
- 地域のニーズを基にした小規模な通信環境を構築する
- 無線局免許を自分で取得でき、免許を取得した他者のシステムを使うこともできる
周波数帯
ローカル5Gの周波数は他5Gとは違う、ローカル5G用の周波数が割り当てられています。
割り当てられている予定なのは「4.6~4.8GHz帯」と「28.2~29.1GHz帯」です。
2019年12月24日時点では、このうち「28.2~29.1GHz帯」については制度整備が完了しています。
ちなみに、この「28.2~28.3GHz帯」を利用できるのは「自分の所有する建物の中」もしくは「自分の所有する土地の中」のみに限定されています。
ただ、「4.6~4.8GHz帯」と「28.3~29.1GHz帯」はそういった制限を取り除く予定とのことです。
ちなみに、この周波数は衛星通信事業者や公共業務用システムとの調整をおこなっている周波数となります。
総務省の狙い
総務省の思惑を読み解くと、5Gの特徴を利用してICTインフラ(IoTや重機遠隔操作、スマートファクトリーなど)として使用したいということです。
様々な業種に5Gの特徴を活かしたいという期待がこもっています。
ローカル5Gを企業や自治体がうまく活用すれば様々な業種がめざましく発展していくでしょう。
それを総務省は見据え、ローカル5Gの整備を進めています。
ローカル5Gと5Gの違い
ローカル5Gと5Gの違いを簡単に言うと「スポット的に使える5G」か「全国向けに展開される5G」かということです。
どういうシーンで使えるかが相違点
ローカル5Gは企業や自治体の建物や敷地でのみ5Gを使えるというものです。
利用シーンが両者では異なります。
周波数帯が違う
「ローカル5Gとは」の中でローカル5Gの周波数について説明したとおり、ローカル5Gは他の5Gとは周波数帯が違います。
ローカル5GとWi-Fi 6の違い
この項目では、ローカル5GとWi-Fi 6の違いについて見ていきましょう。
周波数帯
ローカル5Gの周波数は「28GHz帯」と「4.5GHz帯」。
Wi-Fi 6の周波数は「2.4FHz帯」と「5GHz帯」です。
免許の必要性
「ローカル5Gの申請・免許について」で詳しく述べますが、ローカル5Gを扱うは免許が必要となります。
一方、Wi-Fi 6は免許がなくても扱えます。
速度
ローカル5Gの最大速度は10~20Gbps。
Wi-Fi 6の最大速度は9.6Gbpsとなっています。
電波の範囲
ローカル5Gは1つの基地局で広い範囲をカバーできますが、Wi-Fi 6は長距離通信はできません。
通信の遅延
ローカル5GのほうがWi-Fi 6よりも、通信の遅延が少ないです。
費用
費用面で見ると、Wi-Fi 6のほうが低コストで済むでしょう。
ローカル5Gは基地局1台に数十万~数百万円の費用がかかる可能性が高いです。設備などの費用も考えると、Wi-Fi 6のほうが低コストで導入できます。
このように、ローカル5GとWi-Fi 6には明確な違いがあります。
ローカル5Gのメリット
ローカル5Gを扱うメリットとは何があるでしょうか。
この項目では、ローカル5Gを使うメリットについてお伝えします。
他の場所の通信トラブルの影響を受けにくい
決まった場所でしか使えない電波なので、他の場所で起こった通信トラブルの影響を受けにくいという利点があります。
直線型の周波数
ローカル5Gが割り当てられた「28.2GHz~28.3GHz帯」はミリ波と呼ばれる周波数です。
この周波数は大容量のデータを送ることができますが、直線型の周波数のため遠くに電波が飛びにくいという特性があります。
壁などの周波数を阻むものがあると電波が遮られてしまうのです。
ですが、セキュリティを重視する企業の場合はこの難点はメリットとなります。
たとえば、利用する範囲以外に電波を飛ばしたくない企業などは、ミリ波のメリットを活かしたローカル5Gの使い方をおこなうでしょう。
セキュリティが守られる
ローカル5Gはその名のとおり、「ローカル」なネットワークです。
そのため、通常の5Gなどを使用する時と違って、外部から不正アクセスをされたり情報が漏洩してしまうなどの恐れが非常に低くなります。
遅延が少ない
「ローカル5Gとは」で紹介しましたが、5Gは遅延が少ないという特徴があります。
速度遅延がないのは、特筆すべきメリットと言えるでしょう。
自営の5G通信環境を構築可能
ローカル5Gなら、自分たちの敷地内に5G通信環境を構築することができます。
ローカル5Gの注意点
セキュリティの確保が必要
外部からの不正アクセスの可能性が低いからといって、セキュリティ対策をしなくても良いというわけではありません。
ローカル5Gを使うなら、サプライチェーンリスク対応などのサイバーセキュリティ対策をおこなう必要があります。
周波数が直線的
「ローカル5Gのメリット」で解説しましたが、ローカル5Gの周波数の1つである「28.2GHz~28.3GHz帯」は直線的な周波数です。
それが強みとなる場合もありますが、遮蔽物を越えた先に電波を届けたい場合はデメリットとなるでしょう。
ローカル5Gをおすすめしたい人
ローカル5Gの導入を検討してほしいのは下記の考えに当てはまる人です。
- 自分(自社)だけの大容量専用ネットワークがほしい
- スピードが速いネットワークを保有したい
- 必要なところにネットワークを構築したい
- セキュリティが強固な安心して使える通信環境がほしい
これらの考えを持っている人(企業)は、ローカル5Gの導入を検討してみることをおすすめします。
ローカル5Gの提供エリア
ローカル5Gは提供できるエリアが決まっています。
この項目では、ローカル5Gの提供エリアについて解説します。
自分の所有する土地もしくは建物内
自分(企業)の持っている敷地や建物内でなら、ローカル5Gを利用することができます。
他人の持っている敷地・建物だとしても委託を受けた場合はその限りではありません。
大手通信業者が扱う5Gは、全国的にサービスエリアがあります。
それに対してローカル5Gは自分の所有する土地・建物内のみがサービスエリアとなります。
他者の土地・建物内にも設置できる?
先に「自分の所有する土地や建物内に設置できる」と書きましたが、ある制約を呑むことで他者の土地や建物内にもローカル5Gを設置することができます。
その制約とは、「固定端末」。
固定端末という縛りを守れば、自分以外が所有権を持つ土地や建物にもローカル5Gの設置をすることも可能です。
ローカル5Gの料金
この項目では、ローカル5Gを導入するためには、一体どれほどの費用がかかるのかについてご紹介します。
電波利用料
ローカル5G基地局(28.2~28.3GHz)の利用料は年額で2600円/局。
ローカル5G基地局(28.2~28.3GHz)の利用料は年額370年/局。
電波利用料金以外は不明
電波利用料金については上記で述べたとおりですが、設備費用などに関しては、まだ不明瞭な状態です。
始まったばかりのサービスなので、設備費用がどれくらいかかるかは今後わかってくるでしょう。
ローカル5Gがビジネスに与える影響
ローカル5Gは当分の間、既に全国向けの5G帯域割り当てを受けている大手通信業者は扱えません(子会社など関連企業は除く)。
そのため、様々な企業や自治体がローカル5Gを使って新たなビジネスに参入できる余地があります。
ローカル5G事業に参入する有名企業
NECや東芝、Panasonicなどはローカル5Gを利用した「スマート工場」に参入することを正式に発表しています。
2023年度までには100以上の企業・自治体などの団体にサービスを提供することを総務省は目標にしています。
ローカル5Gの活用方法①スマート工場
ここからは、ローカル5Gはどのようなことに活用できるかについて解説していきます。
前項目で名前が出た「スマート工場」は、ローカル5Gの活用するものとして注目を浴びている方法です。
どういうものかというと、工場施設の中に5Gによる無線通信網を張り巡らせ、生産設備を自動にしたりトラブルなどを素早く察知したり。
生産効率を上げるために活用するというものです。
ローカル5Gの活用方法②遠隔操作で機械を動かす
建設現場など、事故など危険性が高いところにローカル5Gを導入し、遠隔操作で機械を動かすのも活用方法の1つです。
災害時の二次被害を防ぐための手段としても活用できます。
また、農場に導入して水や肥料を自動管理するシステムを作るのも良い活用方法と言えるでしょう。
ローカル5Gの活用方法③スポーツイベントの映像配信
臨場感があるスポーツイベントの映像を配信するのに必要なのは
- 「遅延が少ない」
- 「多数のユーザーが同時に視聴しても大丈夫」
といった条件を満たすネットワークです。
ローカル5Gなら、そんな条件を満たすネットワークを構築することができます。
ローカル5Gの申請・免許について
ローカル5Gを扱うためには国が指定する「無線局免許」を申請することが必要です。
免許申請に必要なもの
定められた様式の「無線局事項書」「工事設計書」などの提出。
そして自分の土地を利用する時はエリアを示す図や登記事項証明書などが必要です。
取得までにかかる時間
大体1ヶ月半ほど時間がかかります。
自営等BMAの無線局開設手続きなども必要
導入はNSA構成でおこなうので無線局開設手続きだけでなく、自営等BWAの無線局開設手続きなども必要です。
まとめ
ローカル5Gは様々な企業や自治体から注目を浴びています。
今回の記事では、ローカル5Gを色んな角度から見つめてみました。
ローカル5Gに関する知識は少しでも深まったでしょうか。
自前の5G通信環境を整えることができるローカル5G。今後の企業・組織のインフラを劇的に変化させていくことでしょう。
新しいテクノロジーをチェックするのはエンジニアにとって大切なことです。
Wi-Fiの代わりにプライベートネットワーク構築のための選択肢としてローカル5Gの導入を検討しているSIerも多くいます。
新しいモバイル通信の在り方として、今後のローカル5Gの動向は注視しておきましょう。