IT業界の働き方改革の実態を解説!フリーランスエンジニアへの影響とは?先客常駐はどう変わっていく?事例を元に実態に迫る
過酷な働き方といわれているIT業界にも働き方改革の波が押し寄せています。
そこで今回は、IT業界の働き方改革についてご紹介します。
働き方改革によるフリーランスエンジニアへの影響も解説していきましょう。
働き方改革の必要性
IT業界は常に労災件数の多い業種としてランクインしています。特に多いのが精神障害と脳・心臓疾患です。
これらはIT業界の過重な業務負荷や心理的負荷によるものが原因といわれています。
IT業界の需要は増える一方でエンジニアの数が増えていかないのも、働く環境が問題になっていることが多いためです。
そこで政府は本格的な働き方改革に乗り出しました。
年々深刻化していくIT業界も、政府が本格的な働き方改革へ乗り出したことでIT業界の働き方改革が進んでいるのです。
長時間労働の原因
IT業界に労災件数が多い理由に長時間労働が問題視されています。
IT業界の長時間労働の原因にはどのような原因が考えられるのでしょうか。
個人のスキルに頼ってしまうこと
IT業界にて業務を担当するときには、予算の関係などもありプロジェクトに関わる人数で割り振られることが多いのです。
しかし、専門技術職ともいわれているシステムエンジニアは個人個人のスキルにばらつきがあります。
予算の関係で人数を増やすことや高いスキルの人を担当させることができないので必然的に労働時間が増えてしまうのです。
そのため、プロジェクトリーダーやマネージャー・仕事ができる責任感の強い人などに業務の負荷が重くのしかかっていきます。
客先常駐があること
IT業界の仕事の特徴に客先常駐という働き方があります。
客先常駐というのは客先のオフィスに常駐して業務するため労務管理の目が行き届かない働き方なのです。
自分の会社の事業だけではなく客先常駐案件も受け持つことから労働時間の管理がしきれなくなっています。
多重下請構造になっていること
IT業界で長時間労働が多い理由には多重下請構造も大きな原因といわれています。
多重下請構造は、元請けから一次請け、二次請けとゼネコンのように仕事を業務委託していくことです。
元請けなどが決めた期限に対して下請け企業は納期を厳守を余儀なくされたり、急な変更にも対応しなければいけません。
そのため、労働時間が増える傾向にあります。下流の工程であればあるほど働く環境は厳しいものがあるのです。
この多重下請構造も深刻に問題視されているので、今後大きな転換期を迎えると考えられています。
深刻な人手不足と需要の増加
深刻な人手不足はIT業界の課題です。
現在は人手不足に加えてシステムエンジニアの需要が急増しているのも長時間労働の原因となっています。
近年ではIT業界以外でもIT化が進みシステムエンジニアの需要は伸び続けているのです。
しかし、この深刻な人手不足も労働環境を改善することで高収入のシステムエンジニアを目指す人が増えていくでしょう。
また、これからの世代はプログラミングが一般常識となり、基本的なプログラミングは必須科目とされています。
基本的な操作もシステムエンジニアに頼りっきりでしたが、これから簡単な業務は一般職にも割り振られると考えられているのです。
その分、システムエンジニアにはさらに深い知識と技術力が求められることになるでしょう。
働き方のトレンド
働き方改革が行われた背景には、働き方のトレンドが変わってきたこともあるかもしれません。
一昔前までは長時間労働が正義とされ、長く働いている人ほど良しとされる傾向にありました。
しかし、ここ最近ではコストパフォーマンス重視に変化してきているのです。
新卒が会社を選ぶ基準にはワークライフバランスが重視され、長時間労働する環境は避けられる傾向になったことも要因の一つでしょう。
また、日本は後進国といわれ始めています。むしろ後進国になってしまっているのです。
日本が先進国といわれたのは高度経済成長の時期なので、現在は時代に追い付いていけていないのが本当のところでしょう。
まずは企業の生産性を効率よくアップさせることこそ先進国家を取り戻すことが可能になります。
国家と大手企業で働き方改革を本格化させているのは背景にこういった日本の現状があるからなのです。
長時間労働の罰則規定で本格化
国家が働き方改革に本腰を入れると長時間労働の罰則規定が本格化されました。
本格化されるまでに至ったのが過労死が増加し社会問題に発展しとことも理由にあります。
注意喚起したとしても企業の裁量に任せてしまっていたのを、国が本格的に動き罰則規定を設けることにしたのです。
時間外労働の上限規制とは
こんなにも長時間労働が蔓延してしまった背景には36協定の特別条項付きの存在があるためでしょう。
ここからは時間外労働の規定について詳しくご紹介していきます。
36協定の特別条項付きの改正
36協定は会社員なら1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
労働基準法の法定労働時間では原則1日8時間・1週40時間が設けられていますが多くの場合これ以上働いています。
36協定を締結し届出をすることで月45時間・年360時間の残業が認められるのです。
しかし、36協定には特別条項付きが存在し、その条項に同意すれば年間6カ月は上限を超えての残業が可能になります。
つまり、1年のうち半分は上限なしで残業させることが可能だったのです。
現在はこの36協定特別条項付きにも上限が設けられるようになりました。
違反企業に罰則
国家の本気は違反企業に罰則を与える決断にあります。
36協定の特別条項付きを締結していても、時間外労働が年720時間以内であること。
時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満。時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6カ月が限度。
時間外労働と休日労働の合計が、2カ月平均・3カ月平均・4カ月平均・5カ月平均・6カ月平均の全てが80時間以内であること。
これらを違反した企業には、罰則として「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
また、違反が悪質だと判断された場合には厚生労働省によって企業名を公開されるのです。
中小企業は2020年4月から施行
これらの法案は2019年4月1日から施行されます。
しかし中小企業は2020年4月1日から適用とされ、1年間の猶予が設けられているのです。
大企業のように人材確保やシステムの改善がすぐに行えないなど、労働環境改善に時間がかかることを見越しての期限となりました。
それだけ労働環境の改善は早急に改善すべき問題だったということです。
規制の適用が猶予・除外の場合
ここまで労働環境が改善されていることに安堵を覚えますが、規制適用が猶予・除外される場合もあります。
自動車運転業務や建築事業、医師、鹿児島県・沖縄県における砂糖製造業に従事者には5年間猶予が設けられています。
2024年3月31日からの適用となり、いまだに長時間労働を強いられる場合もあるのです。
また、新技術・新商品等の研究開発業務者は上限規制の適用が除外されます。
ただし条件付きで、守られていない場合には罰則と医師の診断と指導が行われるのです。
働き方改革の事例
ここからは企業の働き方改革の実際の事例をご紹介していきます。
トップが本気で変える
企業も今まで通りの管理では、残業時間改ざんなどの恐れがあります。
働き方改革に成功した企業の多くは、経営トップが加わっていることで大きな改善に成功したのです。
ある企業は経営トップが労働管理の責任者となり、本気で変える姿勢を見せたことが大きな転機となりました。
各部門で管理
経営トップが責任者となり、各部門で週単位での労働時間の管理が行われます。
とくに労働時間の長い社員には時間外管理勤務シートを用いて、各部門の担当者によって細かく管理される仕組みです。
労働時間の基準を超えた社員がいた場合には、その部署の部門長への報告書の提出が義務付けられます。
内容としては、直接的原因及び根本的原因とどのように誰が解決していくのかという具体的なものです。
それに加えて長時間労働者には5日間の特別休暇付与、部門長には次の月の計画報告と週ごとの計画報告の提出が義務付けられます。
次の月に計画報告が守られなかった場合には、労働管理者である経営トップとの面談が行われるのです。
業務集中を回避
システムエンジニアに多い業務集中の回避にも力を入れていました。
具体的には、まず管理の徹底で部門長の意識を改革することから開始。
個人のスキルや能力をアップから全体のパフォーマンスを向上させることに時間や労力を投資することも開始しました。
それによって、スキルの高い従業員に業務が集中することを回避することに成功したのです。
取り組みの成果
経営トップが本気で改革することによって、職場の労働環境が驚くほど変化していきました。
日ごろから長時間労働が心配される従業員には声掛けが行われるなど、徹底した労働時間抑制の意識を根付かせることに成功した例でしょう。
フリーランスや個人事業主のエンジニアにとっては関係のない話に聞こえるかもしれません。
しかし、今後仕事を依頼することや人を雇い一緒に仕事を行うことになったときに役立つのではないでしょうか。
フリーランスエンジニアへの影響
IT業界の働き方改革が行われることは、フリーランスエンジニアに大きく影響します。
まずはフリーランスエンジニアの案件に増加傾向が見られました。
やはり従業員の業務を減らすには早急なスキルを持っている人手が必要になります。
そこでフリーランスエンジニアが重宝されるというわけです。
フリーランスエンジニアは高いスキルを持ち合わせているため、新たに人を雇うよりも効率的に人材確保が可能になります。
客先常駐の変化
フリーランスエンジニアの客先常駐では、以前は従業員と同じように長時間労働が強いられることがありました。
しかし、働き方改革により従業員と同じような労働時間で働くことができています。
フリーランスエンジニアでも従業員と同等の労働時間意識を持つことができるので、劣悪な環境に置かれることもなくなりました。
フリーランスエンジニアのメリット
ここまではIT業界の働き方改革についてご紹介してきました。
そこで見えてくるのがフリーランスエンジニアの大きなメリットです。
フリーランスエンジニアのメリットについてご紹介していきましょう。
自分で働き方をコントロールできる
フリーランスエンジニアの最大のメリットには、自分で働き方をコントロールできることが挙げられます。
労働時間はもちろん、仕事の内容など案件ごとに選ぶことが可能です。
また収入もコントロールできるというのも大きなメリットになるでしょう。
会社員よりも働き方をコントロールできているという実感は、よりストレスフリーな働き方に繋がっています。
長期休みも可能
フリーランスエンジニアは、会社員時代では難しかった長期休みも取得することが可能です。
プロジェクトの最中の取得は難しいですが、案件が終われば次の案件を契約するまで自分の裁量で長期の休暇を得ることができます。
家族がいる場合には、子どもと一緒に夏休みの間は休暇にすることも可能です。
平日にも長期休暇を取得することができるので、空いている時期にお得に旅行を楽しむことができるでしょう。
フリーランスエンジニアで働くことは自分だけのメリットもありますが、家族ができた時により大きなメリットを得られるはずです。
これからの働き方改革
これからも働き方改革は続いていくでしょう。
むしろこれからは、1人1人に合った働き方改革が求められていくことになります。
それはつまり個人単位で働き方改革が行われ、会社に属さないフリーランスが増加していくのです。
個人の幸せを追求していくことによってフリーランスという働き方の選択が当たり前になっていきます。
その傾向はアメリカに大きく表れてきているようです。
アメリカの10年後に日本が同じ状況をたどっているといわれているので、その将来は近いとこを表しています。
今のうちにフリーランスエンジニアとしての働き方を身に付けていくことは、フリーランス時代を生き抜く術にもなるでしょう。
フリーランスに限らず、これからの時代を生き抜いていくためには個人のスキルアップを目指し続けることが大切です。