GCPとは

IT業界で働いている方であれば、どこかでGCPという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

GCPとはGoogle Cloud Platformの略で、その名の通りGoogleが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。

普段私たちが利用しているGoogleのサービスにもこのGCPが利用されています。Google検索やYouTubeはその代表例です。


クラウドコンピューティングとは

そもそもクラウドコンピューティングとは何でしょうか。

クラウドコンピューティングとはインターネットを通じてコンピュータリソースを提供する利用形態のことです。

コンピュータリソースにはストレージ・ソフトウェア・ネットワーク・データベース等が含まれます。

ユーザーはインターネットを通じて、デバイスや場所等に制限されることなくサービスを利用可能です。


運用者目線のクラウドコンピューティング

ではクラウドコンピューティングを利用することで得られるメリットはなんでしょうか。

まずは運用者の目線になって考えていきます。

従来では、何か追加でサービスを構築したい場合はその都度新しく機器を購入する必要がありました。

例えば、企業においてストレージの容量が足りなくなった場合を考えてみます。

最適な機器を選定後に購入して終わり、ではありません。

今度はその機器に問題がないのか検査をして、データセンターへ搬送します。

搬送後は構築作業としてラックマウント、ケーブル接続などをしなければいけません。

そのためには作業員の準備や手順書の作成など必要なタスクは多岐にわたり、とても1日2日で出来るものではないでしょう。

一方でクラウドコンピューティングを使った場合、面倒なインフラ構築作業は一切必要ありません

運用者はデスクに座ったまま、必要なサービスを選択するだけで即座に利用することが可能です。


ユーザ視点のクラウドコンピューティング

ユーザ視点でクラウドコンピューティングを使用した場合はどうでしょう。

Googleが提供しているメールサービスであるGmailを例として考えてみます。

GmailはPCやスマートフォン、タブレット等様々なデバイスからどこにいても、いつでも利用出来ます。

さらに、自分のアカウントでログインさえ出来れば、他人のデバイスからでも利用することが可能です。

なぜそんなことが可能なのでしょうか。

それはインターネットを通して、Googleが提供するメールサービスにアクセスしているからにほかなりません。

これこそがクラウドコンピューティングです。

我々ユーザは意識せずとも、クラウドコンピューティングによって大きな恩恵を受けています。


GCPの概要

そんなGoogleが提供するクラウドコンピューティングであるGCP。

先に述べたように、Googleが提供しているサービスにはこのGCPが利用されています。

Google MAPやGoogle Drive、YouTubeなどの途方もないアクセス数を処理出来ているという事実が、GCPの信頼性の高さを物語っています。

Google検索へのアクセスは1秒間に数兆回~20兆回ほどではないかといわれているようです。

そんなGoogleが利用しているものと同様の安心で堅牢なサービスを企業においても使用出来るということは、何よりのメリットでしょう。


GCPのロケーション

YouTubeやGoogle MAPはあれだけのアクセスがあるにも関わらず、何故ここまで安定した稼働が出来ているのでしょうか。

GCPは世界中にプロダクトを配置したロケーションを持っています。

これにより何か問題や災害があった場合でも別のロケーションに切り替えることによって、安定稼働を保つことが可能です。

2020年2月の時点で21のリージョン及び、64のゾーンに配置されており、日本でも東京と大阪の2か所にロケーションがあります。

現状のロケーション配置状況は以下から確認することが出来ます。

GCPのロケーションは日々拡大されており、追加予定エリアもクラウドのロケーションより確認することが可能です。


GCPの提供サービス

GCPには多種多様なサービスが提供されておりますが、大きく以下のようにカテゴライズすることが出来ます。

ここで全てのサービスを詳細に解説することは出来ませんが、中でも主要なサービスを抜粋して見てみましょう。

  • コンピュートサービス
  • ストレージサービス
  • ネットワークサービス
  • ビッグデータサービス
  • アイデンティティ&セキュリティ
  • マシンラーニング


コンピュートサービス

Compute Engine

GCPの中でのIaaSサービスです。Googleのインフラを使ったIaaSベースの仮想マシン(VM)を提供しています。

LinuxやWindowsといったOSタイプや、CPU・メモリ等を任意の値に変更して利用することが可能です。


App Engine

GCPの中でのPaaSサービス。webアプリケーションやモバイルバックエンド等の用途で利用されます。

Compute Engineと比較してインフラ構築が不要です。そのためアプリ開発者などに多く利用されています。


Kubernetes Engine

コンテナ向けのクラスタマネジメントや、オーケストレーションや管理、スケジューリングを適用するものです。


ストレージサービス

Cloud Storage

オブジェクト型のストレージサービス。シンプルかつ、高耐久性、高可用性なサービスを提供。

データの保存の他、ファイルの静的配信にも利用されています。


Cloud SQL

完全マネージド型のMySQLサービス。Googleのインフラ上のMySQLデータベースを利用しています。

格納したいデータがリレーショナル型のみの場合は、Google CloudよりもCloud SQLの利用が推奨されています。


Cloud Bigtable

完全マネージド型のNoSQLサービス。Hadoopなどのビッグデータアプリケーションに対して利用されています。


ネットワークサービス

VPN

名前の通り、VPNサービス

インスタンス間をVPN接続やIP Sec VPNを介してオンプレミス環境からGCPネットワークへ接続する際にも利用可能です。

SLAにて99.9%の可用性を提供しています。


Cloud Load Balancing

ソフトウェアで定義された完全マネージド型のロードバランスサービス

オートスケールが可能なため、各種サービスと併用して利用することで高可用なネットワーク構築が可能になります。

またYouTubeなどで利用されているQUICプロトコルのサポートが可能。

そのため同じGoogleが提供しているYouTubeトラフィックなどのサービスとは相性がいいです。


Cloud CDN

キャッシュサービス。動画配信などの場合に利用することでユーザへの遅延を減少することが可能です。


ビッグデータサービス

Big Query

完全マネージド型のビッグデータ向け、データ分析サービス。

高速処理を売りにしており、TB(テラバイト)やPB(ペタバイト)といった大容量データであっても数秒~数十秒で処理を返すことが可能です。


Cloud Dataflow

完全マネージド型のストリーミングデータ向け、データ分析サービス。

バッチデータ処理とストリーミングデータ処理を統合することで遅延や処理、コストの削減を実現しています。


Dataproc

マネージド型のSpark・Hadoopサービス。

Big Queryと併用して利用することで、Big Queryのデータを読み込みや、計算結果をテーブルに書き込みすることが可能です。


アイデンティティ&セキュリティ

Cloud IAM

IAM(Identity and Access Management) サービスを提供。

管理者は「誰が」「どのリソースに」「どのよう操作ができるか」を定義。

Cloud IAMを利用することでユーザ毎、リソース毎の細かいアクセス制御が可能です。


Cloud Resource Manager

GCP のリソースやアカウント一元管理サービス

リソースをグループ化し、階層的にまとめることでアクセス制御や構成設定などの一元管理を実現できます。


Cloud Security Scanner

App Engine、Compute Engine、Google Kubernetes Engine内のwebアプリケーションの一般的な脆弱性をスキャン。

GCPを利用している場合は追加料金なしで利用できるのも特徴です。


マシンラーニング

Cloud Machine Learning

Tensor Flowフレームワークを使用したマネージド型の機械学習モデルを提供。

Google Cloud Storage、Big Query などを学習データとして利用することも可能です。


Cloud Vision API

画像認識の様々な学習済みモデルを提供。

Googleの膨大な画像認識モデルを利用することで、ユーザが指定した任意の画像から様々な情報を得ることが出来ます。

Google Vision AIからデモが可能です。


Cloud Speech API

80以上の言語をサポートした、音声からテキストへの変換サービスを提供。

会議などの議事録を取る際に利用することで、テキストへと自動変換してくれます。


GGC以外のクラウドコンピューティング

ここまでGCPについてご紹介してきましたが、このようなクラウドコンピューティングサービスは他にもたくさんあります。

AWSやAzureなどはその代表例です。

AWSとはAmazonが提供するAmazon Web Serviceの略で、AzureはMicrosoftが提供しているクラウドコンピューティングサービスです。

どちらも業界の中ではGCPよりもシェア数は多いです。

調査会社Synergy Research Groupの2019年Q3のデータではAWSが約40%、Azureが約20%のシェア率に対し、GCPは約10%となっています。


AWSとは

先ほどのシェアデータを見ると分かる通り、クラウドコンピューティング業界でAWSは2位以下を大きく引き離し、抜きに出た存在です。

実際に先ほど紹介したGCPのサービスはサービス名称こそ異なりますが全てAWSでも提供されています。

以下はGCPとAWSの各種サービスの対応表例です。


提供サービス
GCP
AWS
IaaS
Compute Engine
EC2
ストレージ
Cloud Storage
S3
ロードバランサー
Cloud Load Balancing
ELB
RDBMS
Cloud SQL
RDS/Aurora
NoSQL
Cloud Bigtable
DynamoDB
DWH
Big Query
RedShift
Machine Learning
Cloud Machine Learning
Amazon Machine Learning等 


ここまで圧倒的なシェアが獲得出来ている理由のひとつとして、AWSのサービス開始が他社と比べても格段に早かったという点が挙げられます。

GCPは2011年、Azureは2010年に本格サービス開始したのに対し、AWSは2006年にはサービスを開始。

クラウドコンピューティング業界においてAWSはパイオニア的な存在です。

その圧倒的な使いやすさと可用性の高さで登場すると瞬く間にシェアを拡大していきました。

一度AWSに乗り換えた場合。

そこから他社のクラウドコンピューティングサービスに切り替えるのは企業としても手間がかかり望ましくありません。

また、AWSはサービス数や提供ロケーションも非常に多いです。

業界が成熟する前の早い段階から切り込んでいったことでシェアを獲得。

そのサービスの高さでシェアを拡大し続けているという見方が出来ます。

シェア数が大きい=ユーザ数が多いということです。

その分ナレッジ情報なども多いことが企業としての利用するにあたって追い風になったこともあります。


GCPとAWS

ではシェア数も多いAWSの方がGCPよりも優れているのでしょうか。

確かにGCPはサービス開始という面では、AWSの後追いになったことは事実です。

ただ、だからといってGCPはAWSより劣っているかというと決してそうではありません

しかしクラウドコンピューティングは通常の製品と違い、それぞれのユーザの利用用途にあったサービスのみを利用します。

そのためどちらが一概に優れている、ということは出来ませんがそれぞれに特徴があります。

ここではGCPとAWSを比較してそれぞれの特徴を紹介していきましょう。


AWSの特徴

AWSの特徴はなんといってもサービス数とロケーションの多さといえます。

サービス数が多いということは、それだけ詳細なニーズに対応することが可能です。

またロケーションの多さはそれだけユーザ側と近い位置で通信出来るということにもなります。

東京の企業なのにアメリカにしかロケーションが配置されていない場合、遅延が増えてしまうでしょう。

ですが、今のAWSならそういったリスクを心配することもありません。

またAWSではこれまでに1,000を超えるバージョンアップを実施しています。

それらの90%以上は、顧客からの要望をもとに実装されたものです。

こういったユーザフレンドリーな対応の高さもAWSの特徴といっていいでしょう。

一方でサービスの多様化したことで最適な構築を実施するには多少の知識が必要です。

またバージョンアップが多いことで、料金の改定が行われることも多いのでそのあたりも管理者はしっかりと把握する必要があります。


GCPの特徴

GCPの特徴はGoogleが提供しているサービスと同等のインフラを利用出来る点です。

その中でもGoogleは特に機械学習やビッグデータ解析に強いといわれています。

例えば、Google翻訳はGoogle検索などで得た知見をビッグデータ解析及び、機械学習に活かすことで格段にサービスが向上しました。

機械学習において、現在では各社が取り組んでおりますがその中でもGoogleは先端をいっています。

このようにビッグデータ解析や機械学習関連で利用したい場合、GCPはクラウドコンピューティングにおいて最適解といえるでしょう。

また以前は日本国内にロケーションを持っていないことがデメリットとして挙げられていました。

しかし、2016年に東京、2019年に大阪にGCPロケーションが配置されたことで解決されました。

一方でAWSと比較すると日本語情報が少ないともいわれています。

然しながら、Google翻訳があれだけの精度を誇っていることを考えると今後改善の余地は高いのではないかと思われます。


まとめ

GoogleのクラウドコンピューティングサービスであるGCPについて紹介いたしました。

Googleが提供するサービスと同様のインフラを利用出来ることで、今後Googleサービスが向上するたびにGCPの利便性を上がってくるといえます。

また機械学習やビッグデータ解析といった今後さらに需要が見込まれる分野においてGCPは非常に親和性が高いサービスを提供しています。

自身のニーズにあった最適なクラウドコンピューティングを選択しましょう。

そうすれば、より快適なネットワーク構築の助けになるでしょう。