競争が激化している現代社会においては、終身雇用や年功序列といった人事制度が崩壊しつつあります。

企業全体としての集団以上に個人の能力が重視されるようになってきていることは周知の事実でしょう。

それに伴って仕事への取り組み方も変化を見せており、ただ漫然と業務をこなすだけでは済まない世の中になってきました。

本記事ではその重要性が認識されつつあるキャリアデザインについて、具体例を交えて紹介していきます。

しっかりと自分と向き合うことでこれからの成長につなげましょう。


多様なキャリアパス

近年では職業の分化が続いており、様々な職種が存在しています。

それはIT業界、エンジニアについても同じことです。

転職や再就職をはじめとするキャリアパスの途中変更なども比較的容易であるため、仕事への向き合い方も多様化しています。

例えばシステムエンジニアからサーバーエンジニアへ転属するようなケースがあるでしょう。

専門性を高めることでそれに特化した職種へ移行することが考えられますし、逆もまたしかりです。

ただし選択肢が多いからといってむやみにあれこれ試すわけにもいきません。

どのようなキャリアパスが自分にとって、また社会にとってよりよいものであるかを的確に見定める必要があります。


キャリアデザインの設計

キャリアデザインを考えるにあたって、まずは現在・過去の自分を見つめ直すことから始めましょう。

今までの自分を分析したうえで未来像を明確なものにしていき、今後の身の振り方を考えるという順序が最適です。

キャリアデザインを行うことでモチベーションアップにつながり、仕事の選択肢の幅も広がります。


最も重要なのは自己分析

キャリアデザインに際して自分自身を顧みることとなりますが、そこでは主に自己分析を用います。

自己分析とは、自身の特徴や価値観・経験等を整理・分析して理解し、それを今後に生かすことを目的とした手段です。

自己分析を行うことで

  • 自分の価値観を再確認する
  • 長所・短所を理解する
  • 将来の目標やキャリアプランを明確化する

といったことが可能となります。

自己分析はキャリアデザインにおいて根幹をなす部分といえるでしょう。


自己分析のポイント

自己分析では自分を見つめ直すプロセスが重要となります。

具体的な方法として3つの手法を紹介しますが、いずれも頭の中で考えているだけでは不十分です。

紙とペンを用意して手を動かしながら作業を進めていきましょう。

分析内容を視覚化することで傾向を正確に把握できるだけでなく、予想もしなかった結果を導き出せる可能性もあります。

またこれらの手法は単体で使用しても十分に意味のあるものですが、複数を組み合わせることでよりよい結果が期待できるものです。


ジョハリの窓

ジョハリの窓とは、自分をどのように公開ないし隠蔽するかという、コミュニケーションにおける自己の公開とコミュニケーションの円滑な進め方を考えるために提案された考え方。

出典:ジョハリの窓 - 一般社団法人日本経営心理士協会

ジョハリの窓は自身の特徴を4つの窓に分類することで自己理解のズレを確認する手法です。

現時点における自分を分析することに長けています。

4つの窓とは

  • 「開放の窓」:自分も他人も知っている自分
  • 「盲点の窓」:自分は知らない、他人だけが知っている自分
  • 「秘密の窓」:他人は知らない、自分だけが知っている自分
  • 「未知の窓」:自分と他人の誰も知らない自分

といったものです。

自分と他者のうち誰が認知しているかという点から自分の特徴を分類していきます。

ここでは自分だけでなく第三者からの客観的な評価も非常に重要です。

この場合の第三者とは、自分の身近な人を指します。

家族や恋人、友人、同僚のようにある程度の付き合いがある人が望ましいです。

それぞれが記入シートを用意し、お互いに相手に対して思っていることを書き出していきましょう。

その後それらの要素を照らし合わせながら4つの窓それぞれに分類していきます。

どの窓にどんな自分が描かれるのかに注目することで、新たな自分を発見したり自身の特徴を再確認したりすることができます。


モチベーショングラフ

モチベーショングラフはジョハリの窓と並んで自己分析において頻繁に用いられる手法です。

ジョハリの窓が現段階での自分を表現するものであるのに対して、モチベーショングラフはそれまでの自分を見つめ直す助けとなります。

モチベーショングラフは過去のある時点における感情に着目したメソッドです。

縦軸に心の充実度、横軸には誕生から現在に至る時間軸を取り、過去の出来事とその時の感情・思いをグラフ化していきます。

モチベーショングラフの作成にあたって肝要なのは、より多くの出来事を書き出すこと。

その後、それらひとつひとつがなぜ印象深かったのか、なぜ記憶に残っているのかを丁寧に紐解いていきましょう。

このときの理由はできる限り具体的に書き出す方がより効果的です。


マインドマップ

マインドマップはアイデア力や理解力の向上を目的としたもので、自己分析に限らず様々な目的で用いられています。

主題を中心としてそこから派生する要素や連想される事柄を樹状に広げていくことで主題に対する理解を深めましょう。

文章だけでなくキーワード単体を相互につなげていくことも可能であるため、作成が比較的容易であることもポイントです。

マインドマップの作成方法としては以下のような手順になります。

  1. 用紙の中心に主題を書く
  2. メインブランチをテーマにつなげる
  3. メインブランチからサブブランチを派生させる
  4. 要素どうしに関連がある場合はそれらを紐づける

要素を書き込んでいくうちに、それをきっかけとして思い出す事柄もあることでしょう。

そこがマインドマップの利点の一つでもあります。

またそれぞれの要素のつながりを意識することによって、思わぬ発見も。

一人で分析するにはうってつけの手法といえます。


これまでを振り返る

上記の作業が完了したら、次はそれらの情報を更に深掘りする段階に移行します。

前述したとおり、自己分析は「過去の経験から自分の能力・価値観・特徴を客観的に分析する」ものです。

まずは作成した資料から自身の過去に関する情報をピックアップ・整理していきましょう。


性格や特徴

好き嫌いや得意不得意に始まる自分自身の性格・特徴を考えます。

【例】他人の気持ちに敏感・我慢強い・分からないことは自分で解決・手先が器用 etc

一つの項目のみでは計り知れないことでも、2つ3つとが組み合わさることで見えてくる自分があるはずです。

これらを総合的に考えたうえで、「自分がどのような人物であるのか」を分析していきましょう。


出来事

モチベーショングラフでは過去の出来事を書き出しました。

それらの出来事に付随する感情が果たしてどういった理由からくるものであったのか、さらに考察を深めます。

例えば大学受験に失敗して落ち込んだとして、なぜ落ち込んだのかを考えましょう。

その理由についてさらに「なぜ?」と当時の思いを掘り起こしていきます。

一つ一つの出来事・感情について深く考えることで、自分の本質・根幹が見えてくるはずです。


スキル・経験

仕事における経験やスキルも、自己分析では重要なキーワードです。

どのような仕事をどのようなスキルでもってこなしてきたのか、改めて思い起こしてください。

印象深かったエピソードが思い出せるでしょうか。それにはきっとそれなりの理由があるはず。

過去の出来事について考えたときと同様に、それらを噛み砕いて自分なりに理解するよう心掛けましょう。

特にエンジニアの方が自身の経験やスキルといった観点で自己分析を行う上では、スキルシートの作成がおすすめです。

スキルシートは、対外的に自分のスキルをアピールするために使うことができるのはもちろんですが、スキルシートを作成する過程で自身の過去の経験などの棚卸をすることができます。それによって、より深く具体的に自己分析を行うことが可能となります。

スキルシートの書き方については以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ併せてご参照ください。

エンジニアのスキルシートの書き方を徹底解説!案件を獲得するための書き方のポイントと注意点【ダウンロード可能なExcelテンプレート付き】


将来を形成する3要素

ここまでは現在・過去の自分に関する分析に主眼をおいてきました。

それらをもとにして今度は未来の自分について考えていきましょう

将来を考えるにあたっては、特に重要なファクターが3つあります。

後述する3要素が上手く絡み合うポイントを見つけることで、よりよいキャリアデザインを設計できるはずです。

これらを意識しつつ整理・分析を進めていきましょう。


やりたいこと

自分がやりたいことを改めて考えてみてください。

簡単なことに思われがちですが、自分が何をしたいのかわからないという人は案外いるものです。

もしも上手く言語化できないときはまず「好きなこと」「興味のあること」「やりがいを感じること」を考えるのが良いでしょう。

それらが自身の「やりたいこと」に近いものであるといえます。

そのうえで現在の職業がどの程度自分の「やりたいこと」であるのかをよく理解しましょう。

もしもそこに大きな乖離がある場合は、どうすればその溝を埋められるのかといったところまで踏み込んでください。

そうすることで現在の自分を見つめ直すことにもつながります。


できること

自分の能力や適正を踏まえて考えましょう。

前項の「やりたいこと」とは異なり、純粋な能力として「できること」を挙げてください。

「TOEIC 750点」「統計検定2級」といった明確な指標が伴うものがあれば非常に良いです。

逆に「人付き合いが上手い」「単純作業を正確にこなす」のような数値化できないものでも問題ありません。

仕事に直接活用できるかどうかは関係なく、ただ自分ができる・得意なことであることが重要です。

できることを複数組み合わせるだけでも職業選択の幅は一気に広がります。

自分自身の可能性を広げるためにも、「できること」は多く挙げておきましょう。


やるべきこと

「やりたいこと」「できること」は自身の内面に関する事柄ですが、「やるべきこと」はむしろ自分の外側に存在します。

例えば自分の勤める企業が必要としていることや社会全体の需要が考えられるでしょう。

自分に求められているものがなにであるかに着目してください。

それらを加味して、今現在自分がやるべきことが何なのかを明確にしていく必要があります。

極端な話ですが、時代遅れの業界に固執した結果時代の流れに追いつくことができずに手詰まりとなるということも考えられるでしょう。

そうならないためにも周りが欲しているものが何であるかを把握しておくことが重要です。


これからを考える

さて、3要素が整理できたら次はそれらをもとにしてこれからの自分を考えていきます。

自己分析において本当に大事なのはここからです。

自分が理想とする将来像から逆算して今できることを分析しましょう。

このとき前述した「やりたいこと」「できること」「やるべきこと」を踏まえて考えるように意識してください。


なりたい自分を想像する

まずは自分のなりたい姿を思い浮かべます。

詳細で明確な自分を想像することができればそれに越したことはありませんが、こちらはまだ漠然としたものでも構いません。

「SEに転身して成果を上げたい」「今持っているスキルを更に高めてプロフェッショナルになりたい」といったものです。


目標を設定する

将来像が見えてきたら、今度はそれに向かう目標を設定しましょう。

先ほどの「SEに転身する」を例にとると、「システム開発に関する知識を得る」「折衝力を向上させる」などが考えられます。

達成するべき期限が異なる複数の目標を掲げてください。

段階的な目標を設定することでモチベーションの維持にも寄与してくれます。


現状の課題と行動を考える

設定した目標の達成を目指して、現状の課題を見つけていきます。

こちらは出来る限り詳細でなおかつ今すぐ始められるようなものを考えるのがコツです。

例えば「新たな言語に挑戦する」「IT業界の動向を知るために毎日ネットニュースを読む」など。

ただしこの内容はあくまで自分の理想とする将来像に結び付くものでなければなりません。

「とりあえずできそうなことから」と安易に考えないようにだけ注意が必要です。


分析サービスの利用

自己分析のひとつの手段として、ブラウザ上やスマホアプリで行える分析サービスがあります。

これらは一問一答形式となっていることが多く、より手軽に自己分析を行うことができる点が特徴です。

ただしこちらは既存の型に当てはめて行う診断であるため、あまり正確な結果は期待できません。

また前述の手法と比べて自身のことを深く考えることなく回答できてしまう傾向にあります。

単体で利用するのではなく、一通り自身で分析を行ったうえでそれらと組み合わせる形で複合的に利用するのがベストです。


キャリアデザインの活用方法

キャリアデザインは自分自身を理解して初めて作成できるものです。

裏を返せば、キャリアデザインができあがっている人は自分の強みを十分に理解できているともいえるでしょう。

キャリアデザインを行うことで仕事選びの基準を明確化できるだけでなく、実際に仕事に就いてからも役立ちます。


就職・転職を有利に進める

面接においては企業の理念を確認するのはもちろん、こちらの思いや考えをいかに企業側に伝えられるかが重要になります。

自己PRなどはその最たるものでしょう。

ただし自分自身のことを深く理解していなければ上っ面だけのものとなってしまうのが現実です。

面接官に掘り下げられたときにまごついたりボロが出たりといったことにつながりかねません。

キャリアデザインと同時に自己分析を行うことで自分のことがよく分かるため、アウトプットも容易になります。


現在の業務に役立てる

キャリアデザインはなにも大幅な路線変更のためだけのものではありません。

むしろこのままであることこそが自分にとって最適な状況であると気づかされることもあるでしょう。

結果的に現状を維持することとなったとしても、よりよい方向性を見つけられることがあるのです。

自分のこれからが明確になったことで「ただなんとなく仕事をこなす」という状態から脱することにつながるでしょう。

それまでと同じ業務であったとしても明確な理由・動機を伴って行動するだけでも十分に意義のあることといえます。


まとめ

近年では多くの企業が人材育成に力を入れており、研修のような形で社員のキャリアデザインを支援しているケースも見られるようになりました。

そういった事実からわかるように、キャリアデザインは社会全体として必要なものという認識になってきています。

キャリアデザインは単に就職・転職に有利になるだけではなく、今後の人生・生き方をも左右する有効な手段です。

自分の価値を十二分に発揮して自己実現へつなげるためにも、キャリアデザインを行ってみてください。

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