AIXの概要と特徴を徹底解説!推奨ソフトウェアとツールは?
はじめに
今回の記事では、IBMが開発したAIXについて紹介したいと思います。
AIXの概要や特徴はもちろんのこと、AIXを理解するために必要なOSやUNIXなども触れていきます。
すでに他OSを使用したことがある方も、AIXで初めてOSに触れるという方も理解しやすい記事にしていきますので是非ご覧ください。
事前知識の習得
AIXの理解を深めるため、AIXを説明する前にOSについて解説します。
解説には、AIXを紹介する際に使用する関連用語も含まれます。
そのためOSについての知識が曖昧であったり、AIXについての内容が難しいということであれば一度これを読み基本的な内容を理解しておきましょう。
OSとは
OSとは「オペレーティングシステム(Operating Syste)」の略称です。
基本ソフトウェアとも呼ばれ、ハードウェアやソフトウェアとの間で以下を代表とした処理をおこないます。
- OSが実施する機能(例)
- ファイル管理
- 画面・マウス操作を代表としたユーザーインターフェイスの提供
- ネットワークやカレンダー、ユーザーヘルプなどシステムサービスの提供
また、OSの中心部分はカーネル(Kernel)と呼ばれ、以下の様な機能をおこないます。
- カーネルが実施する機能(例)
- メモリ管理
- CPUの割り当て
- 入出力管理
代表的なOSは以下が挙げられます。
- 代表的なOS
- Microsoft Windows
- MacOS
- UNIX
- Linux
- Android
- iOS
ハードウェアとソフトウェアとは
OSの説明をおこなう際に「ハードウェア」「ソフトウェア」という言葉を使いました。
どちらもコンピュータを構成する要素ですが、混同されることが多い言葉です。
この機会に、これから間違えることのないように覚えておきましょう。
実は、ハードウェアとソフトウェアは触れるか触れないかで区別することが出来ます。
「ハードウェア(hardware)」は、物理的に触れることができます。
「ソフトウェア(software)」は、物理的に触れることができません。
このことを覚えておけば、今後ハードウェアとソフトウェアを混同することは無いでしょう。
ハードウェアとソフトウェアは、以下のようなものが挙げられます。
- ハードウェア(例)
- ハードディスク
- メモリ
- 入出力装置
- ソフトウェア(例)
- 表計算ソフト(Microsoft EXCELなど)
- プレゼンテーションソフト(Microsoft PowerPointなど)
- Webブラウザ(Internet Explorerなど)
OSのおこなう役割
OSはコンピュータにとっても、ユーザーにとっても大事な役割を果たします。
OSが無い場合は、ユーザー自身がアプリケーション一つ一つの管理や処理をおこなわなければならず開発が大変です。
また、アプリケーションごとに環境や操作方法が異なるため操作が困難になってしまいます。
コンピュータから見たOSの役割は、以下のような機能が挙げられます。
- コンピュータから見たOSの役割例
- ハードウェアやソフトウェア資源(プログラムやデータなど)の管理
- 複数のプログラムごとにCPUを使用する時間の割り振りや、メモリ領域に割り当て
ユーザーから見たOSの役割は、以下の通りです。
- ユーザーから見たOSの役割例
- 利便性を向上させる、ユーザーインターフェースの提供
- マウスを使用したアプリケーションの起動終了や、ドラッグドロップ総裁によるファイルの編集
AIXについての基本理解
OSについて理解した上で、ここからはAIXについて紹介していきます。
まずAIXを一言で表すと、IBM社が提供している自社コンピューター向けのUNIXOSです。
POWERマイクロプロセッサーベースのハードウェアで実行するように設計されています。
LPARなどの仮想化機能や、数百に及ぶプロセッサによる並列処理を得意とします。
拡張性や柔軟性に富んだOSであるといえるでしょう。
AIXは、他にはない独自メニューの管理ツール「SMIT(System Management Interface Tool)」を持っています。
SMITでは主要な設定項目の管理がおこなえるため、UNIXコマンドに馴染みがない人や設定ファイルの記述が苦手な利用者でも管理が容易です。
UNIXとは
AIXの紹介で「IBM社が提供している自社コンピューター向けのUNIXOS」と説明しました。
UNIXはOSの種類の一つで、大きく「System V系」と「UC Berkeley系(BSD)」の2種類に分けられます。
- System V系のUNIX(例)
- Solaris
- HP-UX
- SGI IRIX
- BSD系のUNIX(例)
- FreeBSD
- NetBSD
- Mac OS X
UNIXが2種類に分けられるのには理由があります。
「UNIX」という名称は商標であるため権利を有している「The Open Group」が認めたもの以外はUNIXを名乗ることが出来ません。
そのため「Solaris」や「HP-UX」などを有する「System V系」はUNIXの名称を使えました。
しかしながら「BSD系」はUNIXという名称を使用出来ませんでした。
現在は、BSD系の「Mac OS X」なども「UNIX」を名乗る権利が与えられています。
LPARとは
LPAR(Logical Partitioning)は仮想化技術の一つで、日本語では「論理区画」を表します。
コンピュータの持つ資源を論理的な単位に分割できるため、OSやアプリケーションの動作を独立させておこなうことが可能です。
このことから、サーバ上の仮想マシンに対してリソースの柔軟な割り当てができます。
LPARと比較されやすいものとして、PPAR(Physical PARtitioning)も紹介しておきましょう。
PPARは日本語で「物理区画」を表し、コンピュータ資源をあらかじめブロック単位に分割しておきます。
そして分割したブロックに対して、特定のサーバーを動かす際にリソースの割り当てをおこないます。
このような構成をビルディングブロック構成と呼び、この構成は仮にブロックで障害が発生しても他のブロックに影響を与えづらいです。
LPARとPPARの差分をまとめると、以下の通りです。
- LPARとPPARの差分
- PPARはブロック単位のリソース割り当てをおこなうが、LPARはより柔軟なリソース割り当てをおこなうことが出来る
- LPARはPPARと比べると物理パーツと仮想マシンの関係性が分かりづらく、設計が難しい
POWERアーキテクチャとは
AIXのように、POWERマイクロプロセッサーを搭載する機器は「PowerSystems」と呼ばれます。
「PowerSystems」はUNIX市場でシェアを持っているため、以下のUNIXOSで稼働しています。
- PowerSystemsの稼働するUNIXOS
- AIX
- IBMi
- Linux(Linux on POWER)
上記のようなUNIXOSでも、AIXは特にPOWERアーキテクチャに特化しています。
そのためAIXは、停止してはいけないなど信頼性が求められるシステムで採用されることが多いです。
AIXではPOWERアーキテクチャが使用されるように、OSとアーキテクチャがペアとなる例は他にもあります。
例えばSPARCアーキテクチャではSolaris、PA-RISCアーキテクチャではHP-UXが対応しています。
viモードについて学ぶ
AIXには、コマンド入力が便利になる「viモード」が存在します。
途中まで入力したコマンドの入力を補完してくれたり、一度入力したコマンドを履歴から検索してくれます。
viモードをマスターすると作業効率が向上するため、この記事で学んでいきましょう。
編集モードの切り替え
viモードでは、「コマンドモード」と「入力モード」の2種類が存在します。
起動直後はコマンドモードで、入力モードへの切り替えコマンドを入力すると文字の入力が可能です。
入力モードへの切り替えは、「i・a・A・O・R」など文字入力に用いるキーを利用します。
コマンドモードへの切り替えは、「ESCキー」を押すことで可能です。
viモードの起動終了
viモードを起動する際は、編集したいファイル名を指定してあげましょう。
例えば、「sample」というファイルを編集する場合は以下のように入力します。
「vi sample」
viモードを終了する際は、「:q」と入力することでviモードが終了します。
「:q」にはバリエーションがあるため、同時に覚えておくと便利です。
- 「:q」のバリエーション
- 「:q」:viを終了する(何も書き込まずに終了)
- 「:wq」:書き込み内容を上書き保存してviを終了
- 「:q!」:編集した内容を書き込まずに終了する
- 「:wq!」:読み込み専用のファイルに強制的に上書き保存して終了する
カーソルの移動
viモードではカーソルキーは使用しないため、以下のキーを使用する必要があります。
- カーソル移動に使用するキー
- 「h」:カーソルを1文字左へ移動
- 「l」:カーソルを1文字右へ移動
- 「k」:カーソルを1行上へ移動
- 「j」:カーソルを1行下へ移動
- 「0」:行頭にカーソルを移動する
- 「$」:行末にカーソルを移動する
文字を挿入する
コマンドモードで下記のキーを入力すると、入力したキーに応じて入力モードに切り替わります。
- 入力モードへ遷移するキー
- 「i」:カーソル位置の前に文字を挿入
- 「a」:カーソル位置の後に文字を挿入
- 「A」:行の終わりに文字を追加する
- 「O」:現在の行の前に文字を挿入
- 「R」:カーソル位置の文字を上書きする
文字を削除する
コマンドモードで「x」を入力するとカーソル位置の文字を消去できます。
viモードの終了と同様に、文字の削除にも以下のようなバリエーションが存在します。
- 文字の削除に使用するキー
- 「x」:カーソル位置の文字を削除
- 「dd」:1行削除
- 「xdd」:x行削除(5ddなら5行削除)
- 「J」:次の行を現在カーソルのある行の末尾に追加する
行のコピーとペースト
コマンドモードで「Y」または「yy」を入力すると、行のコピーが可能です。
また「p」と入力すると「Y」でコピーした1行をペーストすることができます。
- 行のコピーとペーストで使用するキー
- 「Y」:カーソルのある行をコピー
- 「yy」:カーソルのある行をコピー(Yと同様)
- 「P」:コピーした行をペースト
- 「Yp」:カーソルのある行をコピーしたあと、その行の下にペースト
- 「yyP」:カーソルのある行をコピーしたあと、その行の下にペースト(Ypと同様)
検索
「/」を入力した後に検索したい文字列を入力し「ENTER」キーを押すと、文末に向かって検索が実施され見つかった文字列にカーソルが移動します。
- 検索のキーバリエーション
- 「/sample」:入力した文字列をファイルの末尾に向かって検索
- 「?sample」:入力した文字列をファイルの先頭に向かって検索
- 「n」:次の候補を検索する
操作のキャンセル
「u」を入力すると、直前におこなった操作をキャンセルすることができます。
- キャンセル時のバリエーション
- 「u」:直前の操作をキャンセルする
- 「U」:行全体で操作をキャンセルする
コマンド履歴の入力を補完
例えば「abcdefgh.log」というコマンドを入力します。
この場合、ファイル名の途中まで入力をおこないキーボードの「ESC」、「\」を順番に押すことで補完されます。
- 「abcd」
- 「ESC」
- 「\」
これで最後まで入力をおこなわずとも「abcdefgh.log」を入力することが可能です。
ただし入力補完は、実在するファイル名に限ります。
存在しないファイル名を補完することはできないので注意が必要です。
コマンド履歴の検索
コマンドの実行履歴をさかのぼる場合は「ESC」の後に「K」を押しましょう。
すると、直前に実行したコマンドが再表示されます。
さらに「k」を押すと、2つ前に実行したコマンドが表示されます。
このように「k」を押すたびに、実行したコマンドをさかのぼることが可能です。
すべてのコマンドを一度に覚えるのは大変なので、最初はこの記事を見返しながら覚えていきましょう。
AIXを使用する利点
コマンド入力に便利なviモードについて紹介しましたが、AIXを使用する利点は他にも多くあります。
まずAIXには基幹系の業務アプリケーションが多いことや、Linuxや他UNIXと操作感が似ているため移行しやすい点が挙げられます。
また専用のハードウェアで構成されているため、OSとハードウェアが一体となり信頼性の高いシステムを構築することが可能です。
OS自体のサポート期間も約5年あり、バージョンアップをしてもバイナリの互換性があります。
近年需要の高い仮想化への対応も、開発元IBMがハードと連携した仮想化(IBM PowerVM)によりリソースの配分や管理機能が優秀です。
このようにAIXには様々な特徴や利点があり、多くの企業で重宝されています。
AIXの将来性
既存のシステムをクラウド環境へ移行する企業が増えてきているなどクラウドの重要性が高まっています。
AIXは停止してはいけないなど信頼性が求められるシステムで採用されることが多く、需要とマッチしているといえるでしょう。
また、IBMが発表したロードマップには、2030年に向けたビジョンが記載されています。
興味がある方は、下記のページも参考にしてください。
https://www.ibm.com/downloads/cas/K06DAJLV
AIXの購入について
AIXの価格に関してはIBMの公式ホームページにも公開されておらず、担当員に問い合わせとなっています。
中古販売店やオークションなどでAIXが出回っているので公式サイト以外でも購入自体は可能です。
ただしIBMのルールとして、「AIXの使用権が譲渡されていること」が使用条件となっているため公式サイト以外で購入する際は注意が必要です。
まとめ
今回の記事はいかがだったでしょうか。
これからAIXに触れるという方には必見の内容を盛り込みました。
AIXをすぐに利用する機会がない方も、viコマンドは他UNIXでも利用されることが多いため、定期的に読み返し活かしてもらえれば幸いです。
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