近年IT業界の人気は高まっており、フリーランス・会社員を問わずエンジニアを目指そうとする人も増える傾向にあります。

エンジニアと一言でいっても様々な種類があり、SIerエンジニアとSESエンジニアはその例です。

曖昧な理解のまま「とりあえずエンジニアになろう」と方向性を決めてしまうと、後で後悔してしまう恐れもあるでしょう。

この記事ではSIerとSESの違い・特徴や、どちらを選択すべきなのか等について解説していきます。


SIerとSESの定義について



SIerの定義

SIerという言葉は、システムインテグレーション(System Integration)が基となっています。

この頭文字に「〜する人」という意味の「er」を付けた単語です。

システムインテグレーションは単にシステムを開発・構築するだけではありません。

顧客が何を望んでいるかの要件定義、そしてシステム提供後の保守運用サポートも含まれます。

システムに関わる業務全体を一括りにしたのがシステムインテグレーション、ということになります。

日本国内には数多くのSIer企業が存在し、メーカー系・ユーザー系・独立系という3つの分類が成されることが多いです。


SESの定義

SESは、「System Engineering Service」の略称です。SE(システムエンジニア)と表記が似ていますが、全く異なる言葉なので気をつけて下さい。

SESはエンジニアとしての雇用形態の1つで、クライアントに技術者を派遣することを意味します。

システム開発や保守運用を行う際には専門技術を持ったエンジニアが必要となるため、そのニーズに応じてSESで技術者を調達することになります。


SIerとSESの仕事内容



SIerの仕事内容

SIerの仕事内容は多岐にわたりますが、最大の特徴は「コンサル系の業務が多い」という点が挙げられます。

SE(システムエンジニア)やPG(プログラマー)は専門技術を活用した作業が多いため、SIerとは対照的です。

しかしSIerの業務にプログラミングなど専門スキルが必要ないというわけではありません。

顧客とのコミュニケーションで「システムに求めるニーズ」を把握していくには、やはりITのことを知っておく必要があります。


SESの仕事内容

SESの大きな特徴は、「成果物に対しての責任が発生しない」という点です。

SESは「ITエンジニアとしてのスキル・労働力を提供する」サービスであり、提供した作業時間に対してのみ報酬が発生します。

そのため、求められるスキルの内容や作業量が明確に指定されていることが多いです。

見込報酬を計算しやすい一方で、大きく報酬を伸ばしていくのは難しい傾向にあります。


SIerとSESの違い



SIerもSESも「ITのシステムを扱うエンジニア」という点では一致しているものの、細かい箇所では違いがあるので注意して下さい。

まずSIerエンジニアは、どちらかというと「人との折衝」が求められる傾向があるといえるでしょう。

チームマネジメントや、上司や外部関係者との意思疎通なども欠かせません。

そのため、コミュニケーション力を備えたエンジニアがより評価される傾向にあります。

一方でSESエンジニアは、「ITスキル自体」に重点が置かれることが多いです。

自分の専門スキルに沿って、正確にプログラム等を作成していくことが求められます。

SIerエンジニアほどのコミュニケーション力は要しませんが、社会人として最低限のやり取りはできるようにしなければいけません。


SIerエンジニアに必要なスキル




チームをまとめる力

SIerで開発されるシステムは大規模であることが多いので、プロジェクトに参画するエンジニアもたくさんいます。

チームメンバーは年代やエンジニアとしての経歴も異なっていることがほとんどだと考えられます。

そういった場合でもチームをうまくまとめていく力がSIerエンジニアには欠かせません。端的に表現すれば、「コミュケーション力」が必要だということです。

ITエンジニアだからといって、ただPCの前に座って作業してさえすれば良いというわけではありません。


調整力



上述した「チームをまとめる力」とも関係してくる項目ですが、調整力もSIerエンジニアにとって大切になってきます。

この場合の調整とは、チーム内の調整だけでなく「チーム外の人々との調整」も含んでいることに注意してください。


スケジュール管理の徹底

ITシステム開発では、スケジュール管理も重要です。

SIer企業がクライアントから案件を受注する際は、「納期」を定めた上で請け負っています。

実際の開発現場でもこの納期に沿って開発工程が組まれ、チームごとの作業へと移っていくでしょう。

自分たちのチームで大きな遅れが生じてしまうと、プロジェクト全体にネガティブな影響をもたらすことが予想されます。

そのため、SIerエンジニアとしてチームをまとめる立場の人はプロジェクトを俯瞰してのスケジューリングスキルが求められるといえます。


SIerエンジニアの働き方



SIerエンジニアは「常駐」で働くことが多いのが特徴です。

クライアント企業やその関連会社、あるいは大手SIer会社に常駐してシステム開発のプロジェクトに携わることになります。

またSIer企業の社員はスーツを着て仕事をすることが多いのも特徴です。

フリーランスとしてSIer案件に参画する場合もスーツ着用が義務付けられているのがほとんど。

Web系エンジニアだと「私服で出社」「フレックスタイム制」などの新たな働き方を導入している企業も多いです。

しかし、SIer系の場合は他の会社と同様のスタイルが求められてきます。


SESエンジニアの働き方



SESエンジニアの場合は案件によって環境が大きく変わってきます。

Web系のシステム開発なら私服OKということもありますし、SIer系の案件なら対照的にスーツ着用であることが多いでしょう。

SESは自分の持つITスキルに沿って案件を吟味することが重要です。

しかし「スーツのほうが好きだからSIer案件がいい」という理由でSIer案件を選択するのも手です。

案件選びの際は、「自分がこれを受けてどんなメリットがあるか?」を考えてみるのがオススメです。


SESエンジニアに必要なスキル



得意分野がある

SESエンジニアが現場入りする際には、どのスキルが要求されているのかを案件説明で確かめた上で携わることがほとんどです。

特定の分野で強みを持っていれば、それをアピールすることで案件に参画しやすくなるでしょう。

逆に「色んなことができるけど、どれも平均的」だと採用される見込みは薄くなってしまいます。

まずは突出した強みを作り、継続的に案件受注していくべきです。


交渉力



フリーランスエンジニアにとって交渉力はとても大切です。

フリーランスは会社員と異なり、月給が明確に定まっているわけではありません。

もちろん交渉結果次第ではありますが、報酬をコントロールすることができます。

安い報酬で使われ続けると精神的な満足も得にくいため、適切な代価を得るための交渉力は必要になってきます。


実績を適切にアピールする力

自分の実績をきちんとアピールできなければ、交渉を成功に導くのは難しいといえます。

新しい案件で初めて案件説明に臨む際には、成果物などを通じて自分の実力をクライアントに知ってもらうことが大切です。

ただ未経験からエンジニアで活動する場合は当然実績を持っていないので、資格や独学の成果等を提示できると良いでしょう。


SESエンジニアとして働く際に気をつけること



単純作業だけだと稼ぎにくい

ただコードを打つだけの業務や、テストのみの作業は簡単に他のエンジニアで代用ができてしまいます。

フリーランスエンジニアの場合、会社員よりも「簡単に切られてしまう」リスクがあることに注意してください。

高度なスキルを武器に成果を出していかなければ、継続的に収入を得るのは難しくなってきます。


学んでいくことが大切

SIerエンジニアの場合も同じですが、ITスキルを日々磨いていくことが何よりも需要です。

時代遅れのスキルは市場で求められにくいため、常にスキルのアップデートを図っていく必要があります。

学びの手段としては、書籍やWebを通じての学習以外に「エンジニアが集まるコミュニティへ参加する」という手もあります。

フリーランスで活動していく場合だとエンジニア同士の繋がりで案件を獲得できることもあるので、人脈を広げておくことは無駄ではありません。


SIer・SESエンジニアの将来性



SIerエンジニアは無くならない

SIer企業が受注している案件は「大規模なシステム開発」であることが多いです。

非IT系の大企業(例:金融)や官公庁の基盤システム開発は、大手SIerがメインとなって行われてきました。

Web系エンジニアも近年増えてきていますが、これらの大規模な開発案件にはSIerの存在が欠かせません。

今後もSIerエンジニアが必要とされ、高度なスキルを持っているエンジニアならばなおさら需要は大きくなっていくでしょう。


SESエンジニアはスキルのレベルが重要になる

フリーランスという働き方自体に注目が集まっていることもあり、フリーランスエンジニアの人気は高まりつつあります。

それに伴ってSESエンジニアも増えていくことが予想され、その中で平凡なスキルしか持っていない場合は埋没してしまう恐れがあります。

フリーランスのSESエンジニアとして継続的に案件受注し生計を立てていくならば、自分が持つ専門スキルを更に尖らせることが大切です。

大多数のエンジニアと差別化を図り、求人市場の中で優位なポジションを得ることで案件獲得もしやすくなります。


SIer・SESエンジニアのキャリアプラン



SIerエンジニアの場合

SIerエンジニアの場合、より高待遇なSIer開発案件に移るという進路もあります。

「Aというプロジェクトで◯人のチームをまとめた」というように実績アピールできれば、次の案件にも生かしやすいでしょう。

今後も大規模なシステム開発のプロジェクトは継続的に生まれるため、現場の経験があるSIerエンジニアは貴重な存在です。

現時点で会社員なら独立してもいいですし、逆に高報酬を出してくれる企業に移る(転職)するのも手です。


SESエンジニアの場合

SESエンジニアの場合は、自分の持つ開発スキル(プログラム言語など)を高めていくことでより好条件の案件に繋がる可能性が生まれます。

勉強の余裕があるなら、「需要が高く・競争相手の少ないスキル」を磨くのがおすすめです。エンジニアとしての希少性上昇にも繋がります。


SIerとSESで向いているのはどちらか?



SIerエンジニアに向いている人の特徴

SIer・SESどちらのエンジニアになったとしても「ITスキル」は当然求められますが、SIerエンジニアの場合は「折衝力」の重要性が大きい傾向にあります。

そのため、人と話すのが好き・チームをまとめるのが得意という人が重宝されます。

ITシステムの開発だけでなく、多くの人と一緒に働く喜びを感じたいと感じる場合はまさにSIerエンジニア向きといえるでしょう。

逆に「在宅で黙々と働き、コミュニケーションはあまり取りたくない」タイプの人はSIerエンジニアに不向きかもしれません。


SESエンジニアに向いている人の特徴

SESエンジニアでは「求められるITスキル・作業内容・作業量」があらかじめ定まっていることが多く、着実に業務を遂行していく力が必要とされます。

特定の分野に関してプロフェショナルになりたい・自分のスキルを追求したいという方に、SESエンジニアが向いています。

マネジャーのような仕事が与えられることはあまり無いため、開発自体に没頭したい場合はSESエンジニアを選びましょう。


終わりに



IT業界は変化のスピードが非常に激しい業界なので、SIerとSESのどちらに進むにしても、情報のアップデートは求められます。

ITエンジニアとしてのキャリアを始める前に、自分がどの道を進みたいのかをしっかり調べておくことが肝要です。

学習ツールが広がっているおかげで、未経験でもエンジニアデビューしやすい時代となりました。

エンジニアの需要はこれからも広がっていく傾向にあるので、スキルを積んでエンジニアデビューして行きましょう。