はじめに

近年、フリーランスという働き方を選択する社会人が増えています。

働く場所や時間を自由に決めることができたり、自分の好きな仕事をすることができたりするフリーランスは魅力的である反面、フリーランスならではの不安や悩みの声もあるようです。

中小企業庁がフリーランスの実態を調査した小規模企業白書にはフリーランスとしての不安や悩みを持つ人がおよそ7割にものぼるとのリサーチ結果も出ています。

フリーランスエンジニアとして働くにあたり、このような悩みをどう対処していけばいいのでしょうか。

今回はフリーランスエンジニアの悩みと解決策をフリーランスエンジニアの実態も含めて解説していきます。


フリーランスエンジニアの悩み

フリーランスエンジニアは多くの悩みや不安を抱えています。

  • 収入面の不安
  • クライアントを確保するにはどうすればいいか
  • どのような資格を取得すればいいか
  • 社会保障が心配
  • 健康や気力を持続させていけるか

十分な収入を得ることができるかという不安にはじまり継続して仕事を獲得していけるか、知識やスキルが足りない場合はどんな資格をとるべきなのかという仕事面の悩みにとどまらず、社会保障制度や健康面にも不安要素を持っていることがわかります。

それぞれの悩みの内容と解決策を具体的にみていきましょう。


収入面の不安

安定して収入を得られるか

フリーランスの中で最も多かった悩みは収入の不安定さです。

独立して会社員時代より多くの収入を得るフリーランスエンジニアも少なくありませんが、特に年収400万円未満のフリーランスが収入の不安や悩みを持っている傾向が顕著にみられます。


仕事をとることが難しい現状

フリーランスエンジニアがフリーランスになるにあたり最初に突き当たった問題で最も多いのがクライアントを確保することでした。

会社に所属していれば自動的に仕事を与えられますが当然フリーランスはそういうわけにはいきません。

上述の収入の不安定さはこれに起因する問題といえるでしょう。


クライアントを確保するためには

ではクライアントを確保するために重要なポイントはなんでしょうか。

クライアントからすれば、まずお互いの条件が合うことが前提として大事なのはフリーランスエンジニアが安心して仕事を任せられるかどうかです。

相手から信用を得るには誠実さはもちろんのこと、実績や知識、スキルをアピールする必要があります。


実績を提示する

最も重視するのが実績だと考えるクライアントが一般的でしょう。

契約を検討しているフリーランスエンジニアを評価する際、実績はそのフリーランスエンジニアが実際に成果を出したことを一目で確認できるものだからです。

一方でフリーランスで活動する場合には実績を証明したり詳細を伝えたりすることが難しい場合もあります。

実績の他にもクライアントにIT知識やスキルを伝える方法を用意することも大切といえるでしょう。


製作物をみせる

スキルに自信があれば実際に作った制作物を提示して評価してもらうことも可能です。

GitHubなどに作品を公開しておけばクライアントもそのスキルを直接評価することができ、契約につながりやすくなります。

ただクライアントも十人十色のため先方にITの知識が十分でない場合も珍しくありません。

担当者に当該コードなどの知識が不足していて評価対象になりにくいという可能性もあります。


専門的な知識をもつ

高い専門性を持っておくことがクライアントから求められる鍵となるでしょう。

仕事量の変動が多いのもフリーランスエンジニアの特徴でもあります。

時間に余裕のある時期には勉強時間を割り当てて業界のトレンドや最新の知識を身につけたり、資格を取るならより高難度の資格を取得したりするなどの努力も必要です。


営業活動をする

現役フリーランスエンジニアがクライアントを獲得している方法として多いのが既存の顧客からの紹介です。

それに次いで自ら営業や売り込みをして案件を得るという方法が主流となっています。

営業で案件を受注する場合、こちらが提示した金額で契約することもできるため比較的好条件の仕事を獲得できるというメリットもあるのです。


仲介業者を利用する

営業活動が得意ではないフリーランスエンジニアでもクラウドソーシングやエージェントを使って案件を得ることも可能です。

この場合も競争相手が多くなるため自分の強みやアピールポイント、社会的常識とある程度のコミュニケーション能力が最低限求められます。


はじめて仕事を受注する場合

はじめてフリーランスエンジニアとして活動する場合は当然実績がないことになります。

会社に所属していた時のツテで仕事をもらえないとアピールできる実績がない状態でクライアントを得なければなりません。

フリーランスとして活動をはじめても実績がないためクライアントの確保が困難となり悩みの原因となっているのが現状です。

フリーランスエンジニアとして最初の仕事を受注する際は、まず実績づくりとして小さな案件や多少条件の合わない案件も視野に入れて考えるといいでしょう。

単価を低めに抑えて、在宅勤務を希望する場合でも活動日のうち何割かは相手先の常駐案件に割り当てるなどある程度柔軟に対応することで仕事をとりやすくなります。

徐々に実績を積み重ねていくことで好条件の案件獲得につながっていくでしょう。


どのような資格を取得すればいいか

資格は自分の知識やスキルを証明するものです。

クライアントがフリーランスエンジニアを評価する際にもわかりやすい目安になります。

しかし資格を持っていることが実際のプロジェクト参画に足る実力を証明する根拠ではないため、必ずしも資格があれば案件につながるわけでもありません。

資格を重視するかしないかはクライアントによっても違います。

資格を重視するクライアントなら契約につながり、資格を持っていることで資格取得のために勉強をする努力や姿勢も証明できるでしょう。

IT業界においては最新の技術やトレンドが必要不可欠であるプロジェクトも少なくありません。

そのため常に勉強をする意欲を持っている人材であることをアピールできれば契約につながりやすくなる側面も持ち合わせています。

以前IT系の職務についてブランクがある場合にも、最新の資格を取得しておけば現在のIT環境についての知識があることをアピールできるでしょう。

ここではいくつかフリーランスエンジニアにおすすめの資格をご紹介していきます。


情報処理技術者試験

フリーランスエンジニアにおすすめなのは「情報処理技術者試験」です。

「情報処理技術者試験」はITの基礎的な知識が広範にわたり問われる国家資格のため、信頼度も高く評価につながりやすい資格といえるでしょう。

情報処理技術者試験は3種類あり難易度が低いものから順に「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」「高度情報処理技術者試験」と分別され、基礎的な「基本情報技術者試験」から取得していくことになります。

2019年の基本情報技術者試験の合格率は24.1%ほどで例年4、5人に1人程度の合格率になっており、決して難易度が低い資格とはいえません。

合格率のデータをより細かく分析してみると意外にもIT系企業の勤務者より非IT系企業の勤務者の合格率の方が高い傾向があるようです。

単純に一般的なIT系の知識があるだけでは受かりにくい資格ともいえます。

IT業界は知識の更新やトレンドへの対応が求められるので「情報処理技術者試験」もそれにあわせて出題傾向や配点なども変更されている点にも注目です。

最新の参考書を用いて勉強し、資格取得にのぞむと心強い証明となってくれるでしょう。


ベンダー資格や国家資格

フリーランスエンジニアの中でもデータベースエンジニアとして働くならデータベースの知識が問われるオラクル社ベンダー資格の「オラクルマスター」がおすすめです。

またITインフラ系エンジニアの場合は国家資格の「ネットワークスペシャリスト」やCisco社のベンダー資格である「CCNA」「CCNP」などのネットワーク系の資格に加え「マイクロソフト認定資格」や「Linux技術者認定資格」などのOS系の資格が評価につながります。

自分の分野の強みとなるベンダー資格や国家資格に的を絞って資格取得を検討していくといいでしょう。


社会保障が心配

フリーランスエンジニアはサラリーマンのような手厚い社会保障を受けることは難しくなります。

サラリーマンは社会保障の負担金を会社が折半してくれるので個人の負担も軽くなりますが、フリーランスは保障もなく雇用保険にいたっては加入すること自体できません。

しかしフリーランスでも社会保障制度を全く受けられないというわけではないのです。

フリーランスエンジニアが受けられる社会保障制度や内容をしっかり把握して加入しておくとよいでしょう。


医療保険

サラリーマンが加入している「健康保険」はフリーランスには該当しません。

フリーランスエンジニアは会社員以外が加入できる「国民健康保険」に忘れずに加入しておきましょう。

「国民健康保険」に加入しておけば支払った医療費を3割負担に抑えることができ、医療費が高額な治療を受けることになった場合にも高額医療費支給制度で負担を軽くすることも可能なので安心です。

国民健康保険を含め、フリーランスが加入できる健康保険については以下の記事で詳しくご紹介しています。
フリーランスの健康保険について興味がある方は、ぜひ併せてご参照ください。

フリーランスが加入できる健康保険とは?健康保険の種類と保険料の節約方法について詳しく紹介


年金保険

会社員は厚生年金に加入する義務があります。

フリーランスの場合は国民年金に加入することになりますが、国民年金は支給額が一月6万円ほど低くなってしまうため年金だけで生活していくのは困難となるでしょう。

そこで付加年金や国民年金基金への加入も検討するのがおすすめです。

月々の負担額は増えますが国民年金のみに比べ支給額を大幅に増やし、さらに負担額を所得控除として申請することで節税効果もできます。

また民間の保険を利用するのもいいでしょう。

長期療養が必要になった万が一の場合に備えて医療保険や就業不能保険など、最低限の保証がある保険に入っておくと安心です。


自分の健康や気力の持続

フリーランスエンジニアは給料制の会社員と違って働けない状態になると収入が途切れてしまうという不安と常に隣り合わせです。

もちろん誰しもが体調を崩すことはあるためそのような事態でもクライアントとしっかり報連相をとることが大切です。

そうなることをなるべく避けるためには体調管理など自分自身の健康についての心構えも重要になっていきます。


体調を崩してしまったら

体調が悪いときは思うように仕事が捗らず、最悪の場合は仕事をすることができる状態でなくなってしまうでしょう。

なんとか仕事を進めても成果物のクオリティは低く、無理がたたってさらに体調が悪化してしまう最悪の事態を招きかねません。

体調を崩してしまった場合は速やかに病院で診断を受けてしっかり休みをとりましょう。

その場合クライアントにもその旨を連絡し、いつ頃仕事を再開できるかも伝えておくことをおすすめします。

フリーランスは信頼が資本です。

フリーランスエンジニアにとってもクライアントとの信頼関係は大きな意味を持つため自己判断に任せるだけでなくクライアントに状況を説明して相談することも念頭に置いておきましょう。


運動不足

一時の体調不良ならともかく普段から体調を崩しがちではクライアントとの信頼関係も崩れてしまうでしょう。

フリーランスならば日々体調管理にも気を配っておきたいところです。

在宅で仕事をする場合、運動量が極端に低くなってしまうことも珍しくありません。

現役フリーランスエンジニアの多くが運動不足を悩みとしてあげている現状もあります。

会社員なら通勤時、必然的にしていた徒歩程度の運動でも健康に役立っていたと思い返すこともあるようです。

運動不足とあいまって自宅にこもりきりで体が弱くなり、体調を崩しがちになっては元も子もなくなります。

趣味で身体を動かさない場合、日々20分程度でも毎朝の散歩などの軽い運動を取り入れるといいでしょう。

軽い運動量でも体力面だけでなく脳機能の向上やメンタル安定にも効果的との研究結果も出ています。

体調管理はもちろんのこと、精神的なケアも意識して行っていくことをおすすめします。


フリーランスエンジニアの実態と今後の見通し

現役のフリーランスエンジニアからはポジティブな声も多く聞かれます。

冒頭でご紹介した白書では7割以上のフリーランスが「今後もフリーランスとしての活動を継続・拡大していくことを望む」と回答しているのです。

現在、日本では副業などを含めると約6人に1人がフリーランスという働き方で仕事をしているといわれており、アメリカにおいては既に約3人に1人がフリーランスで働くことを選択しています。

IT業界ではより一層その傾向が強く、フリーランス全体の中でも最も多いのがフリーランスエンジニアなのです。

今後日本でもIT系エンジニアのフリーランス人口は増加していく予測がたてられています。

自分にはフリーランスという働き方が合っていると感じる方は現実的な選択肢としておすすめできる時代になっているのです。


総括

フリーランスエンジニアの悩みから解決策を具体的に確認してきました。

フリーランスはもはや新しい働き方ではなくひとつの選択肢となっています。

フリーランスならではの悩みも付き物ですが、高い需要が見込まれるフリーランスエンジニアはとても将来性のある仕事です。

フリーランスエンジニアのメリット・デメリットを熟慮して独立への第一歩を踏み出しましょう。