フリーランスエンジニアに年齢の限界はある?

以前は「フリーランスエンジニアは35歳が限界」という説がよく囁かれていました。

一方で、直近のフリーランス協会による調査結果では、フリーランスエンジニアの半数以上を40代〜50代が占めています。

実際のところ、フリーランスエンジニアには年齢の限界があるのでしょうか。


案件によっては年齢制限がある

特に大きなIT企業に多いのですが、プロジェクトによっては募集するエンジニアの年齢に制限を設けていることがあります。

これは多人数からなるチームで進める案件において、ある程度の年齢レンジに揃えてコミュニケーションの円滑化を図る意図からです。

他にも、正社員の育成を目的に20代から30代の若年層を中核メンバーとしているケースもあります。

この場合には、年齢の高いエンジニアがいると指示出しがしづらい、チームの統率が取りづらくなる等の問題があるため、募集の際に年齢制限をかけるのが一般的です。


体力・気力の限界

悲しいことですが、人は誰しも老います。エンジニアは特に体力勝負の職業といわれており、身体・精神の老化の影響を受けやすいです。

まず納期の厳しい案件では、残業や場合により徹夜等、多少の無理をすることが要求されます。

また、エンジニアの業務内容は目や指を酷使しますし座ったままの作業が多く、老眼・腱鞘炎・肩こり・腰痛といった症状にも悩まされるでしょう。

体力や気力が低下してくるのはフリーランスに限った話ではありませんが、会社員と比べれば身体に支障をきたしたときの保障の手厚さが違います。

フリーランスは独立している以上、業務につけない間は収入がなく、場合によっては通院費等の保障もないため、不安に思うことでしょう。


技術トレンドに追いつけない

体力・気力の低下から、若いころは最新技術に飛びついていた方も慣れた手法ばかりで案件をこなすようになり、技術トレンドを取り込む意欲がなくなってきます。

企業に属していれば、若手との交流や定期的に開催される社内での情報交換会等、新しい技術に触れる機会は多少持てるでしょう。

しかしフリーランスエンジニアの場合、どうしても周囲との情報共有が少なくなるため、自分から積極的に知識を吸収しにいかなければなりません。

案件を抱えていればただでさえやることが多いのに、時間を捻出して新しいことを覚えるのにも一苦労です。


システムエンジニアの場合

ここからはエンジニアの職種別年齢の実態を見ていきましょう。

まずシステムエンジニアの場合ですが、40代以降PMディレクター職となることが多く、それ以上の年齢では案件がぐっと減ります。

マネジメントのしやすさから、案件の募集年齢も20代から30代が中心です。

またクライアントの要望をヒアリングし、提案から設計・実装・テストまで一連の流れに関与するため、高いコミュニケーション能力が求められます。

顧客や若手とのコミュニケーションが苦にならなければ十分活躍できるともいえます。


プログラマーの場合

プログラマーは、設計書に基づきコーディングを行う職種で、年齢制限は特に設けられていないことが多いです。

しかし、長時間のタイピングバグ取りが求められるため体力的・精神的に消耗しやすく、どちらかといえば若者の方が適しているといえます。

また、他の職種より若干年収が低めであることから、何かと入用の高年齢層にとっては条件が合わないことも多いでしょう。


ネットワークエンジニアの場合

ネットワークエンジニアはスペシャリティを生かしやすい職種で、年齢制限も緩めです。

ルータースイッチ、ネットワークセキュリティに関する専門知識や経験があれば50代以降でも十分活躍できるでしょう。

システムエンジニアの業務内容とも相性が良く、過去に企業でシステムエンジニアとして勤務していた経験があればなお重宝されます。


Webエンジニアの場合

Webエンジニアについては、明確な年齢制限を設けている案件はあまりないものの、20代から30代の若手がメインで活躍する風潮があります。

Webの分野自体が比較的新しいことが理由なので、今後は時の流れとともにメイン世代も40代へと移行していくと考えられますが、現状高齢のエンジニアは活躍しにくいでしょう。

また、エンジニアの職種の中でも新技術が生まれやすい分野であり、覚えることが次から次へと出てくることも頭を悩ませます。

Webエンジニアを求める多くの企業は新興Webサービス企業であり、平均年齢が若いのでコミュニケーションにも工夫が必要です。


データベースエンジニアの場合

データベースエンジニアの場合もネットワークエンジニアと同様、ある程度データベースの設計・開発保守・運用をした経験があれば40代・50代でも活躍できます。

近年はビッグデータ活用技術も注目されているので、古くからあるデータベース技術と新しい技術を組み合わせて新たな価値創造に携われる機会もあるかもしれません。

経験に加えて、データベーススペシャリストOracle Masterの資格があれば資質をアピールしやすいでしょう。


セールスエンジニアの場合

セールスエンジニアの場合は、クライアントに対しての「顔」の役割があるので、若手が重宝されやすく、またフリーランス案件自体が多くありません。

技術的な専門知識と営業スキルの両方が求められますが、前者は満たしていても、体力や経験の問題で後者がなかなか満たせないことも多いです。

少なくとも、40代以降で未経験からセールスエンジニアへ転職するのは厳しいと見た方が良いでしょう。


組み込みエンジニアの場合

組み込み開発の業界はハードウェアが絡む案件に限られます。その上で動くソフトウェアも限られるのでトレンドを追いかけやすく、経験も活かしやすいです。

そのため案件の年齢制限も比較的少なく、40代以降の組み込みエンジニアも多く活躍しています。

家電や産業機器を操作するためのファームウェアや、携帯電話上のAndroidソフトウェア開発等の経験があるとなお良いでしょう。


サーバーエンジニアの場合

サーバーエンジニアは高齢でも活躍しやすい業種で、40代がメイン、50代以降の方も多くなっています。

障害対策負荷分散の設計、環境設定保守対応といった一通りの業務の流れがパッケージ化されており経験が活かしやすいことが主な理由です。

またレガシーなシステムは若手にとっては経験のないものであり、現場に一人でも経験済のエンジニアがいると安心という風潮があります。

ただ、サーバー機器を実際にラックに設置したりする肉体労働も若干あるのが注意点です。


40代でも活躍するエンジニアの特徴

エンジニア業の各職種について、一通り年齢の制約を見てきました。

35歳が限界」というのは一昔前の話で、職種によってはそれ以降の年齢でも活躍の場が多くありそうですね。

しかし「40歳」という年齢が一つの区切りとなっているのは確かです。

決して40歳以上のエンジニアの需要がないということではなく、20代・30代とは違った価値が求められていると解釈しましょう。

40代以降でも活躍しているエンジニアにはどのような特徴があるのでしょうか。


顧客との信頼関係が強固

結局のところ「誰にこの案件を頼みたいか」については、技術力よりも何よりも信頼関係がキーとなってきます。

長期間にわたり質が高いものを納品する・報告を怠らない、・納期を遵守する。

最低限のことではありますが最も重要で、かつ難しいことです。また実績の積み重ねという意味で若手には成し得ません。

クライアントが困ったとき等に、パッと顔を思い浮かべて「あの人にお願いすれば、必ず素晴らしい結果を出してくれる」と思われるようなエンジニアを目指しましょう。


マネジメント経験がある

フリーランスになる前に企業や組織でマネジメントを経験していれば、リーダーシップがあると評価され、チームの統率力が必要な案件にアサインされやすくなります。

若手側としても自分と同じくらいの年齢の人よりはある程度年齢の高い、落ち着いた経験豊富なエンジニアについていきたくなるものです。

うまく部下を引っ張りプロジェクトを円滑に進められればさらに高評価がつきます。


豊富な案件実績

フリーランスエンジニア募集案件の多くは必須条件として「〇〇の開発経験」「〇〇の導入経験」といったように、特定分野における経験を掲げています。

クライアント側の主な動機としては、社内に経験者が少ないので経験のある人をチームに入れてキャッチアップを早めたいというものです。

数多くの案件実績や経験があれば、応募できる案件数も多くなり活躍しやすくなります。


コミュニケーション力が高い

ここでのコミュニケーション力が高いというのは「人当たりが良い」という意味ではなく、業務上の意思疎通がスムーズにできるということです。

プロジェクトを円滑に進めるための最低限の報連相が確実にできる人はどこへ行っても重宝されます。

また、熟練したエンジニアほど周りにも気を配り、何か問題が起きていないか、手助けできることがないかに配慮する力が期待されます。

自分のことで手一杯になるのではなく、常にチーム全体のことを考える余裕があれば周りの評価も高くなるでしょう。


特定スキルにずば抜けている

人よりも頭一つ突き抜けたスキルがあると頼りにされる機会が多くなります。

スクリプトを書いて便利ツールを手早く作れる、ファイルシステムに詳しい等、なんでもいいのです。

「これはどういう意味だろう?」「こうするにはどうすればいいのかな?」といった疑問が浮かんだ時、真っ先に相談したいと思われる人は貴重な人材となります。


現役で活躍するには

それでは、現役フリーランスエンジニアとして長く活躍するにはどうすればいいのでしょうか。その秘訣をまとめました。


新技術のキャッチアップ

慣れた技術にあぐらをかいて新しい技術を取り込まないのは、フリーランスエンジニアに限らず技術者として致命的です。

無理やりにでも新技術と触れ合う機会を持ち、技術の進化に置いていかれないよう注意しましょう。

技術コラムを定期的にチェックしたり、セミナー等に参加したりするのがおすすめです。


資格の取得

技術的に優れたエンジニアほど「資格には何の意味もない、実力が重要だ」という考えを持っていることがあります。

実力が重要というのは正しいのですが、いくら実力があっても一緒に働いてみないとなかなか伝わりません。

絶えず案件をもらえるようにするには、自己ブランディング力が必要です。資格は自分にどんな資質があるのかアピールする助けになります。

案件に合わせて資格をなるべく取得するように心がけると良いでしょう。


様々な業界の案件に参画

同じ技術やスキルを使う業務でも、様々な業界の案件があります。

業界により多少勝手が異なるので、キャッチアップが面倒で同じ業界の案件ばかり受けることがあるかもしれません。

ただ、案件の募集においては必須条件としてスキルを挙げる他に、歓迎条件として「〇〇業界案件の経験」というように、業界経験を挙げていることが多いです。

様々な業界の経験を積んでおくことで、多くの案件で歓迎される人材となるでしょう。


体力をつける

エンジニアにとっては特に体力が重要です。長く安定したパフォーマンスを出すためにも、健康な身体づくりを意識しましょう。

業務では座っている時間が長いので、身体がこわばったり血流が悪くなって不健康に陥りやすいです。

毎日の業務時間中に散歩や軽い運動をすることを習慣化しましょう。体調を崩さないよう、日々乳酸菌飲料を飲むなどして抵抗力をつけるのもおすすめです。


若手教育に携わる

組織にとって若手の教育はとても重要です。

自分の知識を若手に与えてしまっては自分の需要がなくなってしまうのでは、と危惧する方もいますが実際は逆のことがいえます。

毎年入ってくる若手に対し、培った知識を活用して丁寧に指導してくれるような人材は組織にとってかなり重要です。

そのようなポジションがあれば積極的に携わるようにしたり、自分から提案して講座を開いたりするのも良いでしょう。


まとめ

フリーランスエンジニアの年齢限界についてまとめました。

「35歳が寿命」といわれていたのは一昔前の話で、近年は年齢が高いフリーランスエンジニアにも活躍のチャンスが多くありますね。

長年活躍しているエンジニアの特徴や秘訣を参考に、働き方や健康に十分気を使って楽しいエンジニアライフを送りましょう。

また、これからフリーランスのエンジニアを目指すという方は、ぜひこちらの記事についてもチェックしてみてください。
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これらの記事が、フリーランスエンジニアとして活躍されるうえで少しでも参考になれば幸いです。