Web3エンジニアとは?年収や将来性、仕事内容、スキルなどWeb3エンジニアになるために必要なことを解説
次世代のインターネットとして世界的に注目を集める「Web3」。しかし国内のWeb3関連情報はまだ少なく、特にこれからWeb3エンジニアを目指そうとする人の中には、何から手を着けるべきか分からない状態の方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、世界のWeb3開発の状況や求人情報をもとに、Web3エンジニアの年収や将来性、今後の需要や仕事内容について解説します。
さらに、Web3エンジニアになるために触れておくべき本やサイト、コンテンツも紹介しますので、Web3エンジニアを目指す方はぜひ参考にしてください。
Web3エンジニアとは
Web3エンジニアとは、ブロックチェーンやスマートコントラクト、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)といったWeb3関連技術を用いて開発を行うエンジニアの総称です。
主にSolidity(ソリディティ)やVyper(バイパー)、Rust(ラスト)、JavaScriptといったプログラミング言語を使い、分散型アプリケーション「dApps」の開発などを行います。
「dApps」はDecentralized Applicationsの略であり、日本語では「ダップス」と呼ばれます。
※「Web3エンジニア」について、現時点において明確に定義をすることが難しいことから、上記はあくまでも本記事における暫定的な定義であるということについてご了承ください。(今後、この定義は変更される可能性があります)
Web3とは
Web3とは、主にブロックチェーン技術の活用により実現されようとしている新しいインターネットの概念です。代表的なブロックチェーンプラットフォームのひとつである、Ethereum(イーサリアム)の共同創設者であるGavin Woodによって提唱されました。
※同様に、上記はあくまでも本記事における暫定的な定義となります。(今後、この定義は変更される可能性があります)
ethereum.orgによれば、Web3には、軸となる4つの原則があるとされています。
- Web3は分散型(非中央集権型)である:インターネットの大部分を中央集権的な組織が管理・所有する代わりに、その所有権は開発者とユーザーの間で分散されます。
- Web3はパーミッションレスである:誰もが平等にWeb3に参加することができ、誰も除外されることはありません。
- Web3はネイティブペイメントをもつ:銀行やクレジットカード決済といった古いインフラに頼らず、暗号通貨を利用してオンラインで送金できます。
- Web3はトラストレスである:信頼できる第三者に頼るのではなく、インセンティブと経済的なメカニズムで運営されます。
引用:Ethereum:What is Web3 and why is it important?
Web3の中で主に注目されているのが、NFT、DAO、dAppsといった技術やシステムです。
NFTとは
NFTとはNon-Fungible Token(非代替性トークン)の略語であり、デジタル資産の一意性(唯一無二性)を証明できる技術で、鑑定書や所有証明書などとして機能します。
2021年には、NFTによって一意性を証明されたデジタルイメージのNFTアートが、世界的オークションハウス「クリスティーズ」にて約6,900万ドルで落札されました。また、インターネット上の仮想空間であるメタバースの経済システムを支える技術としても期待されています。
DAOとは
DAOとはDecentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の略語であり、従来の株式会社に代わるWeb3時代の新しい組織の形態です。DAOには組織を統率する代表者が存在せず、トークンをもった参加者同士で意思決定をします。トークンとは、ブロックチェーンを利用して発行される暗号資産(仮想通貨)です。
DAOの一例として、ウクライナでの人道的活動を支援するために設立されたUkraine DAOでは、ウクライナ国旗のNFTを販売して約700万ドル集めることに成功しました。
dAppsとは
dAppsとはDecentralized application(分散型アプリケーション)の略語であり、ブロックチェーン技術を利用したアプリケーションの総称です。dAppsの具体的なサービスには、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)、SocialFi、GameFiなどがあります。
SocialFiはソーシャルネットワークとファイナンス(金融)を組み合わせたものであり、日本語では「ソーシャルファイ」と呼ばれます。
またGameFiは同様にゲームとファイナンス(金融)を組み合わせたもので、日本語では「ゲームファイ」と呼ばれます。
いずれも「ファイナンス(金融)」という言葉が使われていることからわかるように、暗号資産(仮想通貨)などの金銭的な報酬と関連しており、新しい金融の形として大きな注目を集めています。
Web3エンジニアの需要や年収、将来性
続いて、Web3エンジニアの需要や年収、将来性について解説します。
Web3エンジニアの求人需要
国外におけるWeb3エンジニアの求人需要は、2021年から急速に高まっています。
クリプトに特化したVCであるElectric Capitalが2022年1月に更新したレポートによれば、65%のWeb3エンジニアが2021年に新たに参加し、そのうち45%がフルタイムのWeb3エンジニアでした。
このことから、急激にWeb3エンジニアの数が増えているということがわかります。
この需要の伸びが一過性となる可能性ももちろんあるものの、近年の世界的なWeb3への関心の高まりからすれば、今後もWeb3エンジニアの求人需要はますます伸びていく可能性が高いと言えるでしょう。
Electric Capitalの同レポートによれば、2021年12月時点で、全体では18,000人以上のWeb3エンジニアがWeb3アプリケーションやオープンソースプロジェクトに携わっており、そのうち2,500人以上がDeFiに取り組んでいます。
参照:Electric Capital Developer Report (2021)
Web3エンジニアの年収
Web3エンジニアの年収は、他の技術やプログラミング言語を扱う職種と比較して高い傾向にあります。
求人プラットフォームを提供するZipRecruiterによると、ブロックチェーン開発者の平均年収は127,145ドル(約1700万円)、スマートコントラクト開発者の平均年収は173,459ドル(約2300万円)、ノード開発者の平均年収は126,520ドル(約1700万円)です。これは、一般的なWebエンジニアの平均年収である98,326ドル(約1300万円)の、およそ1.3~1.7倍に上ります。
また、Web3エンジニアの年収は扱うプログラミング言語によっても幅があり、Solidity開発者の平均年収は127,500ドル(約1700万円)、Rust開発者の平均年収は133,371ドル(約1800万円)、Vyper開発者の平均年収は110,406ドル(約1500万円)です。
※2022年6月のおおよその平均ドル円レートとして1ドル=134円で計算
さらに、Web3開発を行う組織では新たなトークンの発行により追加報酬が支払われる場合もあります。ただし、すべての案件でトークンの支払いが約束されるわけではない点に注意しましょう。
参照:
ZipRecruiter:Blockchain Developer Salary
ZipRecruiter:WEB Engineer Salary
ZipRecruiter:Solidity Developer Salary
ZipRecruiter:Rust Developer Salary
ZipRecruiter:Vyper Developer Salary
ZipRecruiter:Cofounder and CEO, Web3 and Society
Cryptocurrency Jobs:Web3/API Full-Stack Developer
CryptoJobs:Senior Blockchain (nodeJS / Solidity) Engineer at CRASTONIC Ltd.
Web3エンジニアの将来性
海外求人プラットフォームにおけるWeb3エンジニアの需要の高まりや年収の水準を見る限り、Web3エンジニアの将来性は十分にあると言えるでしょう。
Electric Capitalのレポートの中でも、2021年のWeb3エンジニアの成長率は過去最高であったものの、それでもソフトウェアエンジニア全体から見ればわずかなものであり、現在はまだWeb3の初期段階にある、という見解が示されています。
また、Web3開発にかかる取引手数料の面からも、ブロックチェーン開発やdApps開発がより身近になることが予想されます。
Web3開発の主要プラットフォームであるEthereumの取引手数料(ガス代)は、2022年5月1日に196.638ドルの最高値を記録しており、Web3関連の開発に新しく参入する人にとってネックとなっていました。しかし、2022年7月2日には1.673ドルまで急激に下がっています。
さらに、Rinkeby(リンクビー)、Kovan(コヴァン)、Ropsten(ロップステン)、Goerli(ゴレリ)といったテストネット(開発のためのテスト環境)が増えている点も見逃せません。開発者にとってスマートコントラクトを開発しやすい環境が整ってきたことで、Web3に取り組むハードルは着実に下がってきていると言えるでしょう。
参照:
Medium:Electric Capital Developer Report (2021)
BitInfoCharts:Ethereum Avg. Transaction Fee historical chart
Web3エンジニアの仕事内容
Web3エンジニアの主な仕事内容は、dAppsの開発や、Web3関連技術のインフラ開発、オープンソースシステムの開発などです。
Web3エンジニアはスマートコントラクトの設計・実装を行いますが、その際に扱う言語はEthereumならSolidityやVyper、SolanaならRust、といったように、どのブロックチェーンプラットフォームで開発を行うかによって異なります。
またWeb3開発業務では、常にスマートコントラクトを記述するわけではありません。そのため、Web3エンジニアの求人では、スマートコントラクト言語やWeb3関連ツールの扱いに関して尚可条件として挙げる程度に留める案件もあります。
とくにフロントエンドエンジニアの求人の場合、スマートコントラクト言語の経験年数を問わない一方で、JavaScriptの複数年以上の経験を必須条件として挙げる案件も散見されます。
Web3エンジニアが使用する技術やツール
Web3エンジニアが使用する主な技術やツールについて、その一例をご紹介します。
・スマートコントラクト
スマートコントラクトは、スマートコントラクト言語によって記述され、ブロックチェーン上で動作するプログラムです。ブロックチェーンに保存された契約は条件が満たされたときに自動で実行されるため、人為的なエラーや判断を排除できます。
・仮想通貨(暗号資産)ウォレット
仮想通貨をはじめとする暗号資産を保存するものです。Web3のシステムやアプリケーションを利用する際、取引をスムーズにする上で必要になります。
仮想通貨ウォレットプラットフォームとして、MetaMask(メタマスク)が代表的です。
・Web3 ライブラリ
dAppsを構築するために必要な機能をまとめたものです。web3.js、web3.py、ethers.jsなどがあります。
・OpenZeppelin(オープンツェッペリン)
OpenZeppelinはセキュアなdAppsを構築するためのオープンソースプラットフォームです。スマートコントラクトの運用を安全かつ自動化するためのプラットフォーム「Defender」も提供しています。
・Truffle(Truffle Suite)(トリフ)
TruffleはdApps開発などに使用される、Ethereumブロックチェーンをベースとした開発環境です。スマートコントラクトのデプロイ、アプリケーションの開発およびテストの実行に使用できるローカル開発用ツールのGanache(ガネーシャ)、dAppsフロントエンドライブラリのコレクションであるDrizzle(ドリズル)とあわせて、Truffle Suite(トリフスイート)と呼びます。
・Hardhat(ハードハット)
HardhatはSolidity開発者の間で人気の高い、EthereumベースのSolidity開発環境です。制約が少なく、柔軟なカスタマイズが可能な一方で、初学者には扱いが難しい部分もあります。
参照:Solidity Blog:Solidity Developer Survey 2021 Results
・Remix IDE
Remix IDEはSolidityを使ってスマートコントラクトのコーディング、テスト、デプロイが可能なブラウザ統合型開発環境(IDE)です。IDEのため開発環境のセットアップが不要で、手軽にテストしたい状況に適しています。
・Alchemy(アルケミー)
AlchemyはEthereumAPIや分析ダッシュボードなどを備えたdAppsの開発環境です。
0X PROTOCOLやPOLYGONやAUGUR、DAPPERのCryptoKittiesなど、数多くのプロジェクトで利用されています。
・Moralis(モラリス)
Moralisはバックエンド機能の実装が可能なdApps構築プラットフォームです。デフォルトでクロスチェーン(異なるブロックチェーン同士をまたぐこと)に対応しています。
Web3の開発に使用する言語
Web3の開発で使用する主要な言語についてご紹介します。
・Solidity
Solidityは、スマートコントラクトの記述に用いられるオブジェクト指向の高級言語です。Ethereum、Avalanche(アバランチ)、Moonbeam(ムーンビーム)、Polygon(ポリゴン)、BSC(バイナンススマートチェーン)などの、EVM(Ethereum Virtual Machine:イーサリアム仮想マシン)を採用しているスマートコントラクトプラットフォームで機能します。
JavaScript、Python、C++の影響を受けており、投票、クラウドファンディング、ブラインドオークション、マルチ・シグネチャウォレットなどのスマートコントラクト作成が可能です。
・Rust
Rustは、ハードウェアやメモリに直接アクセスできる、組み込みやベアメタル開発に適した汎用の低級言語です。Solana(ソラナ)、Polkadot(ポルカドット)、Terra(テラ)などのブロックチェーンプラットフォームで利用されています。
・Vyper
Vyperは、Solidityと同じくEVM互換性をもっており、Pythonをベースとしたスマートコントラクト言語です。Solidityほど多く利用されていませんが、Pythonの扱いに慣れている場合は有力な選択肢のひとつになります。
・JavaScript
JavaScriptは動的なWebページを作成するために広く使用されているプログラミング言語です。Ethereumネットワーク上のデータを扱えるようにするJavaScriptライブラリ「web3.js」をはじめとして幅広いライブラリとフレームワークがあるため、Web3開発においても活躍します。
JavaScriptとWeb3開発の相性はよく、JavaScriptエンジニアからWeb3エンジニアを目指すというキャリアステップもあります。
詳しくは以下の記事で紹介していますので、JavaScriptの経験がありWeb3エンジニアに興味があるという方はぜひチェックしてみてください。
JavaScriptエンジニアがWeb3エンジニアになるには?JavaScriptがWeb3に向いている理由や、Web3エンジニアになるためのステップを解説
・Python
汎用的なオブジェクト指向言語であるPythonも、Web3アプリケーションの開発に使用できます。ブロックチェーンにアクセスするためのライブラリとして、web3.pyが用意されています。
・C++
C++は高度なマルチスレッド機能をもったオブジェクト指向の汎用高級言語です。Ripple(リップル)、Litecoin(ライトコイン)、Monero(モネロ)、EOS(イオス)、Stellar(ステラ)、QTUM(クアンタム)などのブロックチェーンプラットフォームで利用されています。
・Haskell(ハスケル)
Haskellは一般的に学界、研究、および産業の実装で使用される汎用の関数型プログラミング言語です。Cardano(カルダノ)で利用されています。
Web3エンジニアが読むべき本/見るべきサイトやコンテンツ
Web3エンジニアが読むべき本や見るべきサイト、コンテンツとして、おすすめのものをいくつかご紹介します。
・Web3University
Web3Universityは複数のWeb3関連企業の協賛によって運営されているオンライン教育プラットフォームです。初心者から上級者までを対象としており、無料で利用することができます。
・CryptoZombies(クリプトゾンビ)
CryptoZombiesは暗号からゾンビを生み出すゲームの開発を通じて、Solidityのスマートコントラクト構築を学習できる無料のオンラインチュートリアルです。日本語にも対応しています。
・Decrypt
DecryptはWeb3に関するニュースを取り上げる海外メディアです。ニュース記事や学習記事のほか、Web3関連のアプリやサービスのレビュー記事も掲載されています。
・マスタリングイーサリアム
マスタリングイーサリアムはEthereum共同設立者であり、スマートコントラクト開発言語Solidityの開発者であるGavin Woodが執筆に関わったEthereumの技術解説書です。スマートコントラクトについての理解が深められます。
・暗号資産のホワイトペーパー
暗号資産のホワイトペーパーを読むと、各暗号資産が生まれた背景や思想に触れられます。
一例として、下記はBitcoinとEthereumのホワイトペーパーです。
Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(PDF)
・HashHub Research
HashHub Researchはブロックチェーンに特化した国内最大級のリサーチメディアです。基本有料のメディアですが、一部のレポートを無料で閲覧できます。
・Vitalik Buterin's website
Vitalik Buterin's websiteはEthereum創設者であるVitalik Buterinのブログです。Ethereumの今後の開発について知ることができます。
・web3 weekly
web3 weeklyはWeb3領域で累計76億ドル以上を調達しており、大きな影響力をもつVCのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)の暗号通貨ユニット「a16zクリプト」が運営するウィークリーマガジンです。
有力VCによる有益なWeb3関連の情報を無料で得ることが可能です。
・JOI ITO.com(伊藤穣一)
JOI ITO.comは日本人として初めてMITメディアラボ所長に就任し、米国Business Week誌にて「ネット上で最も影響力のある世界の25人」に選出されたこともあるJOI ITOこと伊藤穣一さんのブログです。動画や音声による配信も精力的に行われており、Web3の概観が把握できます。
・週刊 Life is beautiful(中島聡)
週刊 Life is beautifulは起業家であり自身も世界的なプログラマーである、中島聡さんのゼミ形式のメールマガジンです。「中学生にも分かるWeb3」という連載では、初心者にも分かりやすいようにWeb3の技術を解説しています。
・メタバース相談室
メタバース相談室はmonoAI technology株式会社が運営するメタバースに関するお役立ち情報を提供している国内メディアです。メタバースを活用したビジネス・コミュニケーションに関する事例やノウハウ、XR、AI、NFTなどの最新テクノロジーに関する情報など様々な記事が掲載されています。
Web3やメタバースについては、こちらのサイトもぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回は、主に海外のWeb3情報を扱うメディアや求人情報を参考にWeb3エンジニアの年収や将来性について解説するとともに、Web3エンジニアが扱う技術や目を通すべき情報などについて紹介しました。
Web3のトレンドは目まぐるしく変わるため、関連情報のキャッチアップは容易ではありません。しかし、だからこそ差別化や価値につながると考えることもできます。
最近ではWeb3開発についてオンラインで学べるサービスも充実してきており、これからWeb3エンジニアを目指す方にとってとても良い状況となっています。Web3に興味のある方は、まずは無料のオンラインレッスンから始めてみてはいかがでしょうか。
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