ITのスキルを示す資格は様々ありますが、世界に共通する資格はあまりありません。

しかし昨今は外国の企業と一緒にプロジェクトを立ち上げることも多く、客観的に実力を証明できるものがないのは不便なものです。

そこで世界に共通した認定資格として、CompTIA認定資格というものがあります。

この資格は世界においてどのような価値を持つものなのでしょうか。

資格制度や難易度、キャリアパスについて解説します。


CompTIA認定資格が世界のIT業界で通用する理由

CompTIA(コンプティア)は1982年にシカゴで設立されたIT業界団体です。

1982年はDOS-V時代を代表するパソコン用プロセッサーである「インテル82086」が開発されました。

日本でもNECの「PC-9801」シリーズや、富士通のFMシリーズの最初のマシンがリリースされています。

この頃は、いわばIT業界のターニングポイントとなった年です。

パソコン黎明期に様々なITの規格が登場する中、乱立する規格の標準化を提言することがCompTIAの大きな目的の一つでした。

1990年に名称を現在のCompTIA(The Computing Technology Industry Association)に変更。

インターネットの普及が進み、日本でもITバブルが起こった2001年にはCompTIA日本支局が設立されています。


グローバルに通用するスキルを評価

CompTIA認定資格の特徴は、特定のIT企業に囚われないベンダーニュートラルであることです。

その背景にはITのハード類を提供するITベンダーと、ソフトなどを開発するパートナー企業とのオープンな対話

これがCompTIA設立の際の理念です。

しかも欧米を中心にアジアなど10以上の拠点、メンバーシップは118か国以上に及びます。

CompTIAはまさにIT業界のグローバルスタンダードといえるでしょう。

CompTIA認定資格は国やベンダーを超えて、実務に直結したスキルを評価することができるのです。


今必要とされている知識、ITスキルがわかる

CompTIでは認定資格や、その資格取得のためのトレーニングをパートナー企業と共に提供しています。

2018年段階で2000社を超えるIT企業、3000団体以上の教育機関、各種トレーニング企業が所属しているのです。


IT業界の最新事情とCompTIA認定資格が実務に役立つ理由

CompTIAは「IT業界のパスポート」

評価がグローバル基準であるCompTIA認定資格は、国内のみならず海外でも同じように通用します。

そのため、CompTIA認定資格「IT業界のパスポート」的な存在とも呼べるでしょう。

常に変化するIT業界の最新事情に合わせて、その試験内容をアップデートしていることも大きな特徴です。

常に最新の情報に対応していることで、実務に役に立つのです。


海外のパートナーとの知識やスキルの共有

海外のパートナー企業と提携してプロジェクトを立ち上げることもあるでしょう。

その時日本国内のみで通用する資格だけでは、自分たちのSEのスキルレベルを客観的にパートナー企業に伝えることは難しくなります。

CompTIA認定資格なら共通の基準でエンジニアのスキルレベルや、カバーできるスキルセットを双方で明確に説明できます。

CompTIA認定資格の取得は、グローバル人材として就職や転職を目指す際の大きな武器となるのです。


重要度を増すサイバーセキュリティ対策にも対応

特に近年、重要度が増しているのがサイバーセキュリティ対策の分野です。

マルウェアと呼ばれる不正なコンピュータウィルスは、秒単位で進化を続けているともいわれています。

世界中の企業や団体はファイヤーウォールをすり抜けて、脆弱な個人の端末経由でネットワークに侵入される危険に常に晒されているのです。


オリンピックはサイバー攻撃の標的になりやすい

日本でも東京オリンピック・パラリンピックにより、サイバーセキュリティ対策が急務といわれています。

2012年のロンドン大会では、開催期間に2億回を超えるサイバー攻撃があったことが認められました。

電力インフラへの攻撃では、開会式の照明が落ちる危険に晒されていたことが明らかになっています。

大規模サイバー攻撃の背景には、ハッカー集団の質の変化があるようです。

自分のハッキング技術を誇示するための個人のハッカーももちろんいます。

しかしながら、最近では国家レベルのサイバー攻撃も少なくありません。

優秀なハッカー集団を高額のギャラで雇い、対立する国家などに集中してサイバー攻撃を行っているのです。

オリンピック・パラリンピックのような世界的に注目されるイベントは、サイバー攻撃の格好のターゲットとなります。

開会式や個々の競技はもちろんですが、より深刻な事態を引き起こすのがインフラへの攻撃です。

電力、鉄道や地下鉄などの交通など、システムによって維持されているインフラがハッキングされた時の被害は想像を絶するものがあります。

戦争を起こさなくても、大量の人命を危険に晒してしまうのがサイバー攻撃の最大の脅威です。


企業にとっても大きな脅威

サイバー攻撃の脅威は企業にとっても同じといえます。

オウンドメディアへの攻撃や会社の重要なデータの流出などは、以前からの大きな問題です。

特に顧客データの流出は、その復旧と顧客への対策に数百億円、時には兆を超える費用を要した実例もあります。

そういった流れを受けてCompTIA認定資格の試験では、全体の30〜40%がサイバーセキュリティに関する設問です。

IT業界全体において、セキュリティに関する知識が不可欠になっているという共通認識の高まりの現れでしょう。

時代のニーズによって常にスキルをアップデートしていることが、CompTIA認定資格の強みとなっています。


スキルチェンジやキャリアチェンジにも速やかに対応

新しい技術が次々と登場するのがIT業界です。

常に自身のスキルを最先端の技術にアップデートしていかなければ、現場で活躍することができません。

また、現場からマネジャーへステップアップした場合には、新たにスタッフを管理する能力が求められます。

そういったスキルチェンジやキャリアチェンジにも、CompTIA認定資格はスピーディに対応しているのです。


クラウドやIoTにも速やかに対応

新しい技術に対応した認定資格を常に提供しているのもCompTIA認定資格。

クラウドの普及が進んだ近年では、CompTIA Cloud+の提供が2013年に開始されています。

IoTにおいては専門の認定資格はまだ提供されていません。

ただし2019年に「2019 Trends in internet of Things」という、IoTの商用展開に関する調査を発表しています。


定期的な継続教育で資格取得者のスキルレベルを担保

常に進化を続ける現代のIT環境においては、常に自身のスキルを最新にアップデートしていくことが重要です。

CompTIA認定資格は特に更新が必要な資格においてはCEという継続教育を義務付けています。

CompTIA認定資格は、IT技術の急速な変化に対応できる人材であることの証明になるのです。


CompTIA認定資格の歴史と種類を解説

ここで少しCompTIA認定資格の歴史について確認しておきましょう。

CompTIA認定資格はIT業界の歴史と深くリンクしています。

最初のCompTIA認定資格である、初代のCompTIA A+の提供が開始されたのは1993年でした。

Windous3.1がリリースされ、日本でもパソコンの出荷台数が急激に増加した年です。

コンピューターを管理・運用する人材の不足が、企業で問題となってきたという事情が、その背景にありました。

CompTIA A+は、ネットワークやセキュリティなどの重要なスキルが生まれるたびに改訂されています。

2019年に提供が開始された最新版は8代目です。

その後も新たな技術が誕生するたびに新たなCompTIA認定資格の提供が開始されていきました。

CompTIA Network+は1999年に、2001年にはCompTIA Server+とCompTIA Project+。

2002年にはCompTIA Security+の提供が開始されました。


CompTIA認定資格のそれぞれの難易度を比較

CompTIA認定資格の難易度を見てみましょう。


試験は自習で取得可能?

まず基本となるCompTIA A+について見てみましょう。

ここで求められるのはパソコンのハードウェア、OSやソフトウェア、プリンターやHDDといった周辺機器などの知識とスキルです。

IT運用業務でいうと1年程度の実務スキルを評価するとされています。

一般的には自作パソコンが作れるレベルであれば、合格可能な水準といえるレベルです。

試験はパソコンのハードの構造に関する内容と、WindowsやMac、LinuxといったOSに関する内容です。

これらは1年以内に両方合格することで、CompTIA A+が取得できます。

基本的な知識がある受験者であれば、テキストで30~50時間程度の学習時間でクリアできるレベルです。

実際の試験では細かい内容まで問われる問題が多く、テキストをしっかり読み込んでおくことが合格のキーとなります。


取得しやすい資格の順番

CompTIA認定資格の難易度は、一般的に次の順であるといわれています。

右にいくにつれて難易度が高い資格です。

CompTIA A+<CompTIA Network+<CompTIA Server+<CompTIA Security+

CompTIA認定資格においては、CompTIA A+がすべての資格の基礎知識となっています。

初学者の方ならまずCompTIA A+を取得して、徐々にステップアップしていくことがベストな選択です。


CompTIA認定資格受験のための対応コースは?

CompTIA認定資格の学習は、実際に教育を提供するパートナー企業各社と共にCompTIAがプログラムを作成しています。


CompTIAが提供する教育プログラム

現在、パートナー企業を通してCompTIAが提供している認定資格トレーニングは以下の12種類です。


資格トレーニングの種類一覧

  • CompTIA A+

前述した通り、CompTIA認定資格の最も基本となる資格です。

  • CompTIA Network+

ネットワークに関わる職種におすすめ。

実務上必要な知識であるネットワークの運用やトラブル処理、構成、セキュリティ、仮想化といった知識を評価する認定資格となります。

  • CompTIA Security+

世界中で対策が重要になっている、サイバーセキュリティに特化したグローバルな認定資格です。

サイバー攻撃の脅威やネットワークの他端末などの脆弱性の分析や、ネットワーク設計におけるセキュリティの担保などが出題されます。

加えてサイバー攻撃にさらされた時のリスクマネジメントや、アカウント管理などのスキルを評価する認定資格です。

  • CompTIA Server+

サーバを構築したり、管理・運用するためのサーバの仕様や役割、トラブルへの対応などのスキルを評価する認定資格となります。

  • CompTIA CySA+

ITセキュリティを分析し、全体の改善を進めるために必要なスキルを評価する認定資格です。

  • CompTIA Project+

プロジェクトを進めていく上でのマネジメントコミュニケーションについて評価します。

将来的により大規模なプロジェクト遂行へのステップとなるスキル育成に活用できる認定資格です。

  • CompTIA Cloud+

近年、急速に利用が広がっているクラウドに関する資格です。

その運用やサービスの提供、管理、仮想化などのスキルを評価する認定資格となります。

  • CompTIA IT Fundamentals

PCやスマートフォン、タブレットなどのハードウェアとネットワークやセキュリティ、互換性などの基礎的なITスキルを評価する資格。

学生や内定者など、IT業界にこれから就業する人に適した認定資格です。

  • CompTIA Cloud Essentials

クラウド導入の意義や、そのメリット・デメリットなどを判断・運用できる知識を評価する認定資格。

クラウド初心者や、クラウドを提案する営業マンなどにも適しています。

  • CASP+

CompTIA Advanced Security Practitionerの略です。

5年以上の実務を経験したサイバーセキュリティのプロフェッショナルなどに必要とされるスキルを評価する認定資格。

  • CompTIA PenTest+

ネットワークの脆弱性の評価や、サイバー攻撃の際のネットワークの回復に関するスキルを評価する認定資格です。

  • CompTIA CTT+

受講者とのやり取りや学習意欲の喚起など、受講者の効率的な学習を実現するために必要な、インストラクターのスキルを評価する認定資格。


給与アップも期待できる?

CompTIA認定資格を取得することによって、給与アップは可能なのでしょうか。

CompTIA米国本部が2014年に発表したCompTIA認定資格に関するデータで調査されました。

「認定資格は有益である」と回答した雇用マネジャーは93%

CompTIA認定資格は取得の価値があると回答したITプロフェッショナルは70%でした。

CompTIA A+を保有するITプロフェッショナルの平均年収は73000USドル(約850万円)となっています。

日本においてもグローバルでの採用基準や、資格手当ての対象としてCompTIA認定資格を採用している企業も増加傾向です。

グローバルな資格であり、実務に結びついていることが分かります。

就職の機会の拡大や、給与のアップに直接結びついているのがCompTIA認定資格といえるでしょう。


注目のキャリアパスについて

キャリアパスとは

キャリアパスとは、キャリアを積むための道筋のことです。

企業に中でどのような職務や立場に就くか、そのためにどのようなスキルを身につけるかといったことが含まれています。

複数のCompTIA認定資格を取得することで、自分の望む立場や地位へのキャリアパスとすることができるのです。


目的別にCompTIA認定資格最強の組み合わせを考える

CompTIAでは、特にニーズの高い「サイバーセキュリティ」「インフラ」に関して、以下のようなキャリアパスを推奨しています。

数年かけて取得することで、I Tプロフェッショナルとしてのキャリアパスが出来上がります。

【サイバーセキュリティ】

  • CompTIA A+
  • CompTIA Network+
  • CompTIA Security+
  • CompTIA IT Fundamentals+
  • CompTIA PenTest+
  • CySA+
  • CASP

【インフラ】

  • CompTIA A+
  • CompTIA Network+
  • CompTIA Security+
  • CompTIA IT Fundamentals
  • CompTIA Cloud Essentials
  • CompTIA Cloud+
  • CompTIA Server+
  • CompTIA Linux+


まとめ

今の日本のビジネス界の最大のテーマは「IT化」「グローバル化」の2つといっても過言ではありません。

海外との人材の交流が活発になり、英語での業務の遂行やグローバル人材とのプロジェクトは、今や多くの企業で当たり前になっています。

一方でインターネットなどのIT環境は、すでに社会インフラです。

今やネットやパソコン、スマートフォンなしでは仕事は何一つできません。

事実、ソフトバンクの回線がトラブルでストップした時には、多くの会社やビジネスパーソンが業務遂行不能の事態に陥りました。

全てのものがネットに繋がっていくIoTが進んでいく中で必要とされるのは、グローバルなITのスキルです。

世界で通用するCompTIA認定資格の価値は今後も高まっていくことは確かでしょう。

CompTIA A+から始めるCompTIA認定資格を自身のキャリア戦略に組み込んで、今後のキャリアアップを図りたいものです。