はじめに

「IT業界でもっと上を目指したいが、上が詰まっていて昇進が難しい…」

「フリーランスとして独立したいが、他と差別化できるスキルがない…」

IT業界でこのような悩みを抱える方には応用情報技術者試験の受験がおすすめです。

高度IT人材として必要な応用的知識・技能が身に付き、技術から経営に至るまで幅広いステージで活躍できるでしょう。

今回はITエンジニアとしてワンランク上を目指すために必須といえる応用技術者試験について解説していきます。

よく比較される基本技術者試験との違いや資格取得のメリット、おすすめの勉強法なども確認していきましょう。


応用情報技術者試験とは

まず応用情報技術者試験について簡単に説明していきます。

応用情報技術試験とは独立行政法人IRAが主催している国家試験及び情報処理技術者試験です。

APとも呼ばれています。

2008年まで行われていたソフトウェア開発技術者試験に代わるもので、受験者がコンピューターおよびITに対する応用レベルの知識・技術を有しているか確認するために行われる試験です。

資格を取得すれば情報技術を利用した戦略立案やシステムの設計に携われる高度IT人材として認められるためメリットは大きいといえます。

フリーランスとして活動する際にも自分の実力をアピールできる心強い武器となるでしょう。


応用情報技術者試験と基本情報技術者試験との違い

受験者層

基本情報技術者試験は学生やIT業界に入ったばかりの新卒社会人も数多く受験していますが、応用情報技術者試験は受験者のほとんどが経験豊富なITエンジニアとなっています。

応用技術者試験は難易度が高く、実務経験のない人には回答できない問題が大半を占めているからです。

ある程度経験を積んで自信のある方なら応用技術者試験のみ受験することをおすすめします。


試験内容

基本情報技術者試験は全ての問題がマークシート形式で行われますが、応用技術者試験ではマークシート+記述式となっています。

基本情報技術者試験の問題は机上の勉強だけでも合格可能です。

しかし応用技術者試験では記述式問題で専門用語を100%理解して解説する必要があるため一筋縄ではいきません。

記述式問題は鬼門といわれており念入りな対策が必要となります。


得られるメリット

どちらの試験も合格すれば一定の評価を得られますが、応用技術者試験の方がスペシャリストを認定する高度試験の一部試験免除、企業による資格手当や報奨金などより高い評価となります。

30~40代でフリーランスとして独立するなら応用技術者試験の方が受注できる仕事の幅や報酬の選択肢が増えるのでおすすめです。

専門家及びマネージャーとしてより多くの権限を与えられます。


応用情報技術者試験の日程と申し込み方法

試験は春期と秋期に行われる

応用技術者試験を受験できるのは春期と秋期の年2回です。

例年春期は4月、秋期は10月のいずれも第3日曜日に実施予定となっています。

申込期間は春期は1~2月、秋期は7~8月となっているので遅れないように注意しましょう。

試験内容は春秋ともに共通です。

試験会場は札幌から那覇にいたるまで日本全国で開催されます。

合格発表は春期が6月、秋期が12月に行われその後合格証書が発送される流れです。

ITストラテジスト試験やシステムアーキテクト試験など他の試験と併願する場合はスケジュールをしっかり確認しておきましょう。

応用技術者試験と違って年1回で春期か秋期のみの試験が多くタイミングを逃すと1年のタイムロスが生じてしまいます。


申し込みはWebと願書郵送の2種類

応用技術者試験の申し込みはWebから直接申し込む方法と願書を郵送する方法の2種類です。

願書郵送の場合、願書の入手や郵便局窓口での支払いなど手間のかかる手順が多いのでWebでの申し込みをおすすめします。

ホームページで必要事項を入力しクレジットカードやペイジー(pay-easy)で支払いを行えば申し込み完了です。

申し込み後に試験をキャンセルしたい、内容を変更したいとなった場合は期限が定められているので注意しましょう。

期限が過ぎると一切の変更が不可能となります。


問題は午前と午後に分けて出題される

応用技術者試験の試験は午前と午後の2回に分けて行われます。午前と午後合計で300分にも及ぶハードな試験です。

体力と集中力を切らさないよう事前の体調管理が重要となります。

午前中はマークシート形式なので、しっかり勉強していれば早めに終わらせることが可能です。

一瞬で解答できる問題と解答するのに長時間かかる問題が混在しているためどの問題から解いていくか取捨選択が重要となります。

解答が終われば教室を退室することができるので早めに終わったら休憩してリラックスしましょう。

試験終了後は12時から12時40分までが休憩時間です。

午後は記述式問題となり難易度の高さも相まって時間的余裕はほとんどなくなります。

回答を見直しする時間も必要なので事前にタイムスケジュールを決めておくとよいでしょう。

合格ラインさえ超えればいいためまったく自信のない問題の見直しは行わず、自信のある問題を見直して正解を増やすのがポイントです。


応用情報技術者試験の受験者数

受験者数は統計が残っている平成21年から現在に至るまで約50,000人規模で推移しています。

ただし近年は減少傾向にあり、平成31年春期に48,804人と50,000人を割り込みました。

受験者の年齢層は10代〜70代と幅広く、合格者の平均年齢は平成31年春期で28.2歳です。

IT業界での経験をある程度積んだ20代後半〜30代前半の受験がベストといえます。


応用情報技術者試験で出題される問題

午前に出てくる問題は3ジャンル


応用情報技術者試験で午前中に出題される問題は全てマークシート形式です。

午後の問題に比べると比較的難易度は低くなります。

問題のジャンルは以下の3つです。

1.テクノロジ系

プログラミングやアルゴリズムなどITに関する幅広い知識が問われます。

2.マネジメント

システム監査やプロジェクトマネジメントなどIT業界でマネージャーとして活動するために必要な知識が問われます。

3.ストラテジ系

システム戦略、法務、企画に関する知識が問われます。

公式のシラバスもチェックして出題される問題の傾向を掴みましょう。


午後の問題は記述式

午後試験の問題は記述式となります。

全部で11問出題される問題の中から5問選び回答する形式です。

ジャンルは情報セキュリティ、テクノロジ、マネジメント、ストラテジの4つです。

一部のジャンルに対応できれば突破できるのでいかに得意分野を作るかが攻略のカギとなります。

情報セキュリティのジャンルのみ回答が必須となっていますが一般常識+αで対応できる問題が多いので対策は容易です。


応用情報技術者試験の難易度と合格率

IT系の国家資格の中では難易度が高い


応用情報技術者試験はITに関する資格の中では難関のひとつといわれる難易度の高い試験です。

勉強時間は基礎的な知識があれば200時間、なければ500時間かかると想定され実務経験者でも一筋縄では合格できません。

基礎知識がある場合は後半の記述式問題から対策していくのが効果的です。

確実に合格したい方は独学ではなくスクールに通うことも検討してもいいかもしれません。

独学でも参考書や手軽に学べるアプリが豊富に存在するので毎日少しずつ学習を重ねていくことができます。


合格率は20%と狭き門

平成30年秋期の合格率は23.4%となっており、約20%で推移しています。

優秀なエンジニアが多数受験してこの数値ということはかなり狭き門であることが窺えます。

20%という数字も実際に試験を受験した人数で割り出した数値です。

平成30年秋期では応募した人数が52,219人なのに対し、実際に受験した人間は33,932人、合格者が7,948人と多くの応募者が試験を受けることなく不合格となっています。

よって応募者全体で計算した場合、合格率はさらに低くなるのです。


応用情報技術者資格取得で得られるメリット

高度IT人材として認定される


応用情報技術者試験の資格を取得した場合、ITプロジェクトの中核で活躍できる応用的知識・スキルがあると認定されます。

昇進が行き詰ってきた30~40代の中堅ITエンジニアがワンランク上に行くための手段にする、フリーランスが独立する際クライアントにアピールするための武器にするなど高度IT人材としての第一歩となるでしょう。

会社の業務だけでは得られない知識も増えるのため取得して損はない資格といえます。


資格手当てや報奨金が支給される

IT関連事業を運営する企業の場合、応用情報技術者の資格を取得すると資格手当や報奨金が発生することもあります。

プロジェクトマネージャーとして活躍が見込まれる有能な人材として新たなポジションへの抜擢や昇格が発生することもあるでしょう。

大企業の場合は取得に掛かった費用を一部負担してくれるケースもあります。

企業での価値を高めればフリーランスとして独立する際も箔がつくため積極的に狙っていきましょう。


高度資格の試験が免除される

応用情報技術者試験を合格した場合、2年以内なら情報系高度資格の1次試験が免除されるのでおすすめです。

システムアーキテクト試験、プロジェクトマネージャ試験、情報セキュリティスペシャリスト試験などが該当します。

また中小企業診断の「経営情報システム」や弁理士の「理工V(情報)」といった国家資格一部科目も免除の対象です。

応用情報技術者にとどまらず、さらなる難関資格に挑戦してキャリアの幅を広げていきましょう。


応用情報技術者試験に合格するための勉強法

まずは過去問を丸暗記


応用情報技術者試験の午前試験に合格するには過去問の攻略が欠かせません。

令和元年秋期の試験では前半の問題80問中46問が過去問からの流用と発表されており、言い回しを微妙に変化させるだけでそのまま出題されています。

つまり過去問演習を繰り返し行えば試験前半の合格率はグッと高まるのです。

本、アプリ、WEBサイトと応用情報技術試験の過去問を取り扱う媒体は数多いので複数比較して自分に合ったものを選択しましょう。


午前と午後それぞれの対策を考える

応答情報技術試験は午前・午後で出題される問題ががらりと変わるためそれぞれに対策が必要です。

午前試験は半分が過去問からの使い回しとなっているため過去問を中心に対策を行いましょう。

ただし直近2年分の問題はあまり流用されないため注意が必要です。

午後試験は11問中5問回答すればいいのでまずは回答できるジャンルを増やしていきましょう。

午前試験ほどでありませんが過去問の演習も有効です。


午後試験で圧倒的に得意ジャンルを1つ作る

午後試験は100%正解できる圧倒的得意ジャンルを1つ作るのが効果的です。

合格ラインは5問中3問正解の60点なので、回答が必須な情報セキュリティのジャンル+圧倒的得意ジャンル+残り3問中どれか1つが正解すれば合格となります。

得意ジャンルに近いジャンルの知識も底上げされ正解しやすくなるのでおすすめです。

午前試験とは違い幅広く知識を得ようとするのではなく、集中的に学ぶのが攻略のカギとなります。


応用情報技術者試験に合格するための参考書、学習サイト、講座

おすすめの参考書

応用技術者試験に必要な参考書は教科書の役割を担う「テキスト」と過去問対策のための「過去問題集」です。

テキストとしておすすめなのが図を用いた感覚的な解説が分かりやすい「キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者」。

そして情報がよく整理されている「応用情報技術者試験 合格教本」です。

過去問題集は直近4回分の過去問が収録され、問題の難易度や頻出度がよくわかる「徹底攻略 応用情報技術者 過去問題集」を購入するといいでしょう。


おすすめの学習アプリ

スマートフォンで学習できるアプリも多数発表されており、スキマ時間や通勤中に学習することができます。

中でもおすすめは暗記カードと過去問が一体になった「応用情報技術者暗記カード+過去問徹底対策」と、390問にわたる多数の問題が収録された「応用情報技術者 午前 一問一答問題集」です。

無料アプリも多いので複数ダウンロードして使いやすいものを選びましょう。


おすすめの講座

応用情報技術者試験はIT1系の資格として人気が高いため資格スクールによる講座も豊富に存在します。

授業料は3万円~14万円と独学より多額の費用が掛かりますが勉強時間の短縮や合格率の向上というメリットがあるため、確実に合格したい場合は検討しましょう。


応用情報技術者試験に合格してフリーランスとして独立しよう

IT業界で一段上の段階へ行きたい方、特にフリーランスとして独立したいと考えている方は、応用情報技術者試験の受験がおすすめです。

難易度は高いですが経験豊富なITエンジニアなら合格することは十分可能となります。

他とは一味違う知識・スキルがあることを資格でアピールすれば仕事の受注に繋げられるでしょう。

午前・午後試験の対策をそれぞれを行って万全の状態で試験に臨みましょう。